23話 ナギの過去
ナギには両親の記憶がほとんど残っていない。自身の両親は優秀な忍であり自分が5歳の時に共に病死したと村の人達からは伝え聞いていた。ナギに残されたのは家と父の形見である「風丸」という片手剣1本である。
―――忍村 ―――
「遂に明日から学校だね」
ナギ「そうだな」
2人の少女は丘に座り湖を眺めて話している。彼女らの後ろには練習用の刀と2人の剣が置いてある。
ナギと語り合うその少女の名はマハナという。両親が亡くなり孤独を感じていたナギの初めての友人であり、マハナの提案で2人で村の子供の面倒を見る仕事の手伝いをしていた。
マハナ「お父さんから聞いたんだけど、忍学校の先生すごい人みたいだよ」
ナギ「ウチも聞いた!分身できるって噂聞いたぞ」
マハナ「そうなの!?私も花分身とか出来るようになりたいな」
ナギ「楽しそうだな」
ナギ「なぁ学校入ったら、話し方変えた方がいいかな。ウチももっと優しい口調にしないとかなって」
マハナは笑いながらナギにチョップする。
マハナ「ナギはナギのままでいいんだよ。その方がナギも疲れないしきっと友達も増えるよ。村の子供達も懐いてくれてるじゃん」
ナギ「んー、そっか。確かに似合わないかもな。良い事言ってくれてもバレてるぞ~」
マハナ「このタイミングで読まないでよ~」
2人はひとしきり笑った後帰路へと着く。
ナギ「じゃあ、また明日な」
マハナ「うん。朝迎えに行くから準備しといてね」
ナギ「おう」
タケル「ナギ。学校始まってもマハナをよろしくな」
マハナは自分の家である武具屋に入って行く。
―――忍学校 授業初日廊下―――
シノブ「実践の授業のリベンジ絶対晴らしてやるんだから!」
シノブはマハナとナギに堂々と宣言していた。
ナギ「?おう」
マハナ「シノブちゃん。だったっけ?良かったら、私たちと友達になろうよ」
シノブ「(2人に勝ってからお願いしようと思ってたのに。)そ、そこまで言うならなってあげてもいいよ」
マハナ「(この子思ったよりかわいいかも。でも全然そこまで言ってなかったと思うけど)」
ナギ「……」
マハナ「私はマハナ。こっちの緊張しまくってるのがナギだよ。よろしくね」
ナギ「よ、よらしく」
マハナ「(あちゃー噛んじゃった)」
シノブ「よろすく」
マハナ「2人共噛んでるじゃん」
マハナはシノブとナギの手を引っ張り重ねさせる。
マハナ「明日から3人で授業受けよ!」
元々口数の少ないナギは緊張でほとんど話せなくなっており、シノブも威勢はいいものの少し照れ屋で近づかれるとたじろぐタイプなのでこの2人には間を取り持ってくれるマハナの存在が大きかった。
ワカ「(今年は10人か。全員無事に卒業させる)」
忍学校は3年しかない。3年間授業を受けながら簡単な任務をこなし、卒業試験へと準備を進める。そこで卒業をできれば新人忍と認められ徐々に難易度の高い任務にあたる事になる。
それから三人は毎日横並びに座って授業を受け、休み時間は共に飯を囲み、休日は集まって遊んだり修行をし続け幸せの時間のまま年月が過ぎた。
―――2年後―――
マハナ「今日学校終わったら何する?」
シノブ「からくり屋敷!」
ナギ「もう行き過ぎて隠れ仕掛けも全て見つけたぞ」
シノブ「いいの!ブランコだって何回乗っても楽しいでしょ」
マハナ「ねぇシノブ。ナギがブランコは酔うしなーって顔してるよ」
シノブ「あ!おにぎりは何回食べても美味しい!」
ナギがピンと来た顔をする。
ナギ「納得した」
マハナ「じゃあ今日もからくり屋敷行こっか」
シノブ「うん!というかあと1年で私達も卒業だね」
ナギ「受かればな」
ナギはシノブを見つめる。
シノブ「絶対受かる!」
マハナ「皆は卒業した後何かしたいことあるの?」
シノブ「私は忍長になる!」
マハナ「シノブはずっと言ってるもんね。ナギは?」
ナギ「ウチは魔物の謎を解明したい」
シノブ「魔物生物学の点数高いし、興味あったのか。マハナは?」
マハナ「私はね、この学校で学んだ事と任務で得た経験を活かして沢山の人を救いたい!」
マハナは、鼻を膨らまし両手を握って立ち上がる。人付き合いも上手く成績も上位である彼女に対して、親友の二人は疑いもせずその夢が叶うと信じていた。
ナギ「マハナならやり遂げれると思うぞ」
マハナ「…そう?えへへ~ありがとう」
マハナ「あのさ…私の真斬と花忍法を2人に教えるって言ったら聞きたい?」
ナギ「いいのか?」
シノブ「教えてほしい!私の雷忍法も教えてあげる!」
マハナ「フフッ。ありがと!」
ナギはマハナの少し悲しげな表情を見逃さなかった。
ある休日マハナとナギは剣の特訓をしていた。
マハナ「私の真斬は速さと相手の弱点をつくことに長けてるの。まぁ今までに何百回も見たでしょ」
ナギ「見たな。そういう技だったのか」
マハナ「見てて」
マハナは木の葉を宙に投げる。ヒラヒラと舞い落ちる葉を捉え斬る事は容易ではない。
マハナ「真斬」
マハナは抜刀と同時に剣を振り葉を真っ二つに斬る。
ナギ「やるな」
マハナ「この技に必要なのは速さと相手の動きを見極める目。どっちもナギの実力なら足りると思ってるよ」
ナギ「なるほど。流石にあの抜刀の速さはまだ再現出来ないと思うぞ」
マハナ「これから毎週末練習していこ」
―――さらに1年後―――
後輩1「遂に先輩達も卒業試験だね」
後輩2「今年の受験生癖強くない?」
後輩3「忍術全然使えないけど実戦ランキング1位のナギ先輩と、どの科目も優秀な成績で特に座学が強いマハナ先輩と、ピンクの忍衣を纏った学年一の努力家シノブ先輩でしょ」
後輩2「そうそう。マハナ先輩はいいけど他の2人はちょっと癖あるよね」
後輩1「あたしナギ先輩と魔物生物研究会一緒だけど良い先輩だよ。初め無口で怖かったけど、慣れていったら優しくアドバイスとかしてくれるし、あたしのボケにツッコミしてくれるし結構会話で笑い起こったり盛り上がるよ」
後輩2「そうだったんだ。卒業する前に仲良くなっとけばよかったなぁ」
―――ワカ道場―――
ワカ「遂に明日は卒業試験ですね」
ワカは、自身の10人の生徒達を誇らしげに見つめながら堂々とその言葉を放った。




