30話 岩マスター ガイラ
ルカ「お父さんは水魔法の防御力は高いとはいえ、能力持ちの魔物に勝てる気しないよ」
ドクターの能力について考察している内に、見落としていた疑問に気づく一同であった。
ナギ「ここで考えても分からないか…とりあえずドクターの能力についてはこんな感じです」
サナス「ありがとう。なぁ、リク君が考える紫の扉の悪用方法教えてくれないかい」
リク「自分ですか!?じゃあ、相手を強制的にワープさせ刃物を敷き詰めた部屋に送ったり、入口に相手が入った瞬間に入口の扉と出口の扉を向かい合わせて無限に閉じ込めますかね、あと可能なら水中とかに送りますかね…」
ゼント「中々えぐい使い方するな」
サナス「頭の反射神経良いですね」
リク「えっありがとうございます」
褒められ照れるリクを見て、保護者面の仲間達がうんうんと誇らしげに頷いている。今日はそこにリリスも混ざる。
ドーア「お、思ったよりもドクターと呼ばれる魔物は厄介かもしれませんね」
サナス「紫の扉は大長の呼びかけに反応して現れていました、それも何か私共の知らない能力が関与しているかもしれません」
ドーア「あ、ありがとうございます。ガイラその事も報告しておいて下さい」
ドーアは先程出発してここには既にいない筈のガイラの名を呼ぶと、いつの間にか開いた窓の隙間から顔を覗かせていた鳥が頷く。
その奇妙な光景に一同は目を丸くする。
ドーア「ぼ、僕とガイラの能力についても説明しないとですね。まず、ガイラの能力が『借身』です」
動物または、獣型の魔物に自分の意識を乗せることができる能力であるという。
その力を使い、地中にモグれる魔物に意識を乗せて地下にいる土柱の居場所を割ったという。
ドーア「ぼ、僕の能力は『現在視』です」
ハル「カーアさんが『未来視』、フーアさんが『過去視』でしたよね。ドーアさんは今を見る能力ですか?」
ドーア「祖母の事を知っているのですか」
ハル「カーアさんには、水柱討伐の前に予言を受けたり、その後忍村と風城がピンチになる予言を受け風国に向かいました。その後も双子玉というアイテムを頂いたりお世話になりまして、カーアさんが土国に行けばドーアさんに会えると聞いておりました」
ドーアは少し驚いた顔をした後に口元を緩める。
ドーア「そ、そうでしたか。ぼ、僕は臆病な性格ですから、いつも祖母には性格を直せと言われて来ました。しかし、僕の事を大切にしてくれた祖母が元気と聞けただけで嬉しいです」
リク「(失礼だけど、まだあの強い性格の方に慣れちゃって本当のドーアさんに違和感あるな)」
ドーア「は、ハル君の言う通り僕の能力は対象相手の今の実力を性格に視ることができる能力です」
ルカ「!?」
ハル「さっきリリス姫に触れて能力をかけようとしたけど、固定の能力で抵抗したということですね」
ドーア「は、はい。おそらく祖母が僕がハル君たちの力になると言ったのは成長を助ける事が出来るからだと思います。僕の代わりにガイラを会議に行かせたの理由の一つでもあります」
サナス「私の能力も特訓にはうってつけですね」
リリス「リク達が努力熱心なのは知っておるが…」
リク「一刻も早くダンジョンを攻略して地震を止めないとだよな」
リリス「それもそうなのじゃが、ゼントもまだ十分に動けぬからなグリル村に滞在する理由もあるのじゃ」
ゼント「いえ、リリス様。私は一刻でも速く城に帰るべきだと考えます」
ハルは折角の成長するために活躍しそうな能力が集まっている機会に特訓する事と、リリスが中心都市ソテイに帰ることができていつでも合流出来る作戦を考える。
ハル「一個、リリス姫に頼りきりの案があります」
リリス「なんじゃ?」
ハル「リクに充電してもらった双子玉をリリス姫に渡し、城に帰って貰う事です」
ドーア「そ、それでしたらゼントさんもここで療養できますし、全て達成できそうですね」
リリス「先程から話に出る双子玉とはなんじゃ?」
リク「使うには雷魔法の充電が必要なんだけど、片方がスイッチを押すともう片方の玉を引き寄せる事ができるアイテムなんだ。呼ばれた方の玉は、まずもう1つの玉の高度まで上昇してそこからは、宙を一直線だ」
リリス「なるほどな!楽しそうじゃ」
マナ「でも、待つ方も最後の方には引っ張られるよ」
ナギ「マナは城の4階から外に引っ張り出されたからな、しかも合流した瞬間浮かなくなって落下したしな」
リク「ナギいなかったら終わってたよな笑」
ルカ「三人ともそんなことになってたんだ」
ルカは苦笑いして一歩間違えたら大事故になっていた三人の話を聞く。
リリス「それを使ってソテイに呼ぶということじゃな。よし、それでいこう。ゼントを頼むぞ」
ゼント「え、もう出発なさるのですか?」
リリス「暗い方が魔物の目にも付きにくいからな、一応3日後に呼ぶ予定じゃそれより早かったら妾に何かあったという事じゃ」
ハル「(なんでも決断が速いな)」
リク「わかった!気をつけていけよ」
リリス「ソテイまでじゃったら、妾の土魔法と固定で空を渡っていけるからのう、心配無用じゃ」
ルカ「これ、水国の国宝。リリスちゃんに貸すね。MP最大値上昇するから」
リリス「うむ、感謝する。では、またな」
リリスは部屋を出ていき、能力を使って夜を駆けて行くのだった。
ドーア「で、では夜の特訓の前に皆さんの戦闘値をお伝えしておきましょう」
窓から顔を覗かせていた鳥は状況を把握するために色んな方向から情報を拾っているように見えた、その後暗く高い空へと羽ばたいていった。
―――フライ村近く―――
男は巨大なサソリの上で寝転がって気絶していた。グリル村で鳥が自我を取り戻すと同時に褐色で髪が空を刺すツンツンの男が目を覚ます。
ガイラ「思ったより色々情報ゲットできたっすね」
この男は鳥へ自分の意識を乗っ取らせると同時に、サソリにも自身の意識を乗せていた。
人間で言うところの音楽を聞いたり話しながら歩いてるのと同じ感覚である。話は鳥側の意識で聞き、サソリの体で歩くことで、自身の体を運ぶ算段である。
しかしこの『借身』という能力は人や上級魔物には乗り込めないためあまり戦闘には向いていない。諜報の面で重宝されるものである。
生まれ故郷とは言うものの村がどこから始まりどこまで続くのかを示す看板や村界線もない、それどころか村を形成する筈の家や人々さえいなかった。そんな村で彼は一匹のカエルとして半年を過ごした。
人間での自身の体は隣の村で姉が保護してくれていた。ガイラは子供ながらに自身の能力を理解せずに使用してしまい意識をカエルへと移してしまっていた為、本体は同じく半年間意識を取り戻す事がなかったのであった。魔物の襲撃にあった村の被害状況を確認するためにやってきた兵をみて、ガイラは自身の体に違和感を覚え人間の姿になりたいと願い、元の体に戻ったのだった。
10歳で紋章と能力を開花と発現させたリリスも人類史の異例であるが、ガイラはその上をゆく6歳での快挙であった。頻繁に周りの大人が岩魔法を扱う環境で育った為かよろけながら二足歩行を習得すると同時に倒れかけた時には岩を出して転ばない様に魔法を扱えていた。
魔物が村に襲撃してきたその日戦士たちに戦闘を任せてガイラも逃げていたが、いつの間にか握っていた筈の姉の手が人の波に流され離れていった。姉は必死で戻ろうと人混みを掻き分けるが、きっと誰かが連れてくる、と近くの大人に無理やり手を引かれガイラを置いていってしまう。
大人達に踏み潰されないように岩の球体に身を包み避難民が通り過ぎるのを待った。その後村で残り戦う戦士の横から援護していると、倒れている友達が視界に入った。襲撃開始早々に怪我を負い、避難の流れに置いていかれてしまった様子だった。それを見たガイラの手の甲に紋章が刻まれ光りだす。
その戦いの最中に能力にも目覚め、人々を脅かした魔獣へと意識を移し隣の魔獣を噛みつき同士討ちをさせ数を減らす。最後に目に映ったカエルへと意識を移し、その間に生き残った戦士の手によって避難先に人間の体を運ばれてしまったのだった。
18年前の出来事ではあるがガイラは土国のどこかにある祠で受けることができる『天の試練』で、この状況を追体験をしており当時の事を鮮明に覚え直している。
この試練を越えた事で天才児はマスターにまで上り詰めた。
あまり遠くない内にハルも挑戦する事となるだろう。




