28話 自由姫と風舞姫
屋根を伝いリクとナギは村の端からでもその姿を確認出来るほどの巨大な岩のゴーレム兵へと走りよる。
復興中のグリル村の家の屋根は薄平たい岩を何枚も粘土で繋ぎ合わせて、魔法で作った簡易的なものである。何とか雨風は凌げるが、その巨兵に触れられれば一溜りもないだろう。村人達はゴーレム始動後すぐに半数が村から出たが残り半数は彼らに阻まれ、屋内で戦士と王女、マスター達が勝利するのを祈っていた。
リク「ナギ、連携で行くぞ!」
ナギ「もちろんだ」
ナギの双剣ではこのゴーレムを砕くことはできない。それを自覚しているのであくまでリクの後方支援に回る立ち位置である。
まずはリクが屋根から飛び上がり、ゴーレムの胴体の位置まで上昇する。
リク「(俺の跳躍の限界でも胴体の中心の高度かよ)華核拳!」
踏み込みのできない空中での威力は胴体の巨大な岩に軽くヒビが入る程度に収まる。落下するリクを岩の右腕が上から叩き落としに迫る。
上昇気流がリクの体を一瞬支え落下の勢いを抑えて体勢を取り直させ、その数瞬後リクの体を下降気流が包み岩の腕に追いつかれる前に地面へと運ぶ。
リク「(流石ナギだぜ)華天貫!」
迫る岩塊に右足を当てると亀裂が入り崩壊していく。
ナギ「(流石リクだな)風舞姫」
試合で試して見せた双剣を全く使用せず風魔法に集中する戦法がリクをサポートする役割であるここで活かされる。
右手が破壊されても動じずゴーレムは蹴りをいれようと右足を地面から離す。リクは次の攻撃へと体勢を整えるが岩はいっこうに近づいて来ないどころか置物の様に止まっていた。
リク「(リリスか!)」
動きを止めたゴーレムを見てリリスの能力であると確認しようと後ろを振り返るリクの背後から別の個体が襲ってくる。
ナギ「よそ見すんなー、隙間風」
リクと小さなゴーレムとの間に風の壁を作り飛びかかる岩塊を弾き飛ばす。
リリス「流石じゃな!リクと…ナギ姉よ」
リク「よく来たリリスありがとう!ナギもナイス」
ナギとは別のレーンの屋根に立つリリスが2人に声を掛ける。それに対してナギは不満そうに見つめる。彼女が自身を「姉」と呼ぶことと、自分が言わなかったリクへの好評をいとも簡単に述べたからだった。
リリスは巨大なゴーレムを右手の人差し指で指し、飛び出してきた小さな方のゴーレムを右手の小指で指す。
リリス「ナギ姉も攻撃に転じるのじゃ、2人が攻撃すると同時に能力を解く」
ナギ「いや、リクの破壊力に任せる方が安全だ。ウチはサポートに徹する。このスピードに付いてこいよ」
リリス「ふむ。誰に言ってるか分かっておるのじゃな」
リクにナギからの強風による追い風のアシストと自身の火雷瞬走を掛け合わせ過去最高速度でゴーレムに迫っていく。
リク「(めっちゃ良い感触だ。ナギとの合体技勝手に名前つけちゃお)花鳥風月」
目にも止まらぬスピードで放たれる鮮やかな飛び膝蹴りは技名の華麗さと反して圧倒的な破壊力で巨岩を一撃で砕ききる。
リク「おぉ!!すげぇ威力」
ナギ「乱風」
破裂した岩片が周りの家に被害を出さないように防ぎ、しっかりと砕けた破片を粉微塵にする。
残った小さなゴーレムはリリスが頭だけを固定し動いた自身の体に付いて行けず体は前に倒れ、頭だけ宙に留められ解除された後に落下し砕かれる。
リク「えリリス、グロテスク技じゃん」
リリス「これはこの魔物のように接合部分が脆くないと使えぬぞ。リクの腕だけ固定しても腕を肩から斬り外すことは出来ぬ」
リク「よかった。一生リリスに頭上がらないところだった」
リリス リク「固定だけに! か?」
リクとリリスは笑い合う。
ナギ「(なんか盛り上がってる…、昨日だけでそんなに仲良くなったんだな)ほら、次の倒しにいくぞ」
リク「!はーい」
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グー 「あれ?(もう何回意識が飛んだか分からない、それだけオートモードになるほどのダメージを与えられてるってこと…)」
グーの足元にはありえないほどの量の血が広がっている。先程ガイラがグーに刺した岩の杭から体内で枝分かれする様に棘を生やし、回復された途端に再び致命傷を与え続けているのであった。
ガイラ「(えぐい攻撃方法っすけど、恨まれる筋合いはないっす)」
グー「(ゴーレムを出してももう対処されちゃうし、詰んじゃったなぁ。ノーガードで遊ぶんじゃなかった)ドクターじいちゃぁーん」
紫の扉がグーの後ろに現れる。その中から声が聞こえる。
「まったくどいつもこいつも老人の扱いが酷いのう」
ガイラはとっさに岩の剣を何本も生み出し、グーとその後ろの扉の中へ発射する。紫の扉の中へ消えていく剣先がガイラの背後から迫る。
ガイラの後ろに新たに作られた紫の扉と目の前の扉が繋がったのであった。
ガイラ「魔法の操作権はまだこっちのものっす」
岩の剣達はその刀身を紫の扉に渡らせた状態で推進力を失くし止める。それによってグーが入るはずだった扉がガイラの背後に繋がったままになる。
グー「まぁ、扉の限界数知らないと意味ないよね」
グーは自身の足元から岩の台を生やして体を持ち上げていき、新たに頭上にできた扉に入っていく。
ガイラ、サナスその他の戦士がグーを行かせてしまった原因は彼らの足元に現れた扉から漏れ出た毒ガスを吸ってしまったからであった。しかし、被害も出たが多くの戦士と能力使いの奮闘で大長3を追い返す事に成功する。
土マスターとハルも巨大ゴーレムの撃破を達成していた。戦士達の奮闘により被害を最小限で抑える事が叶った。マナに応急処置してもらったゼントの治療は村に居合わせた治魔法使い達に引き継いで貰って一命を取り留めた。
村を守るため奮闘した戦士達にリリスからの報償金が送られ、土マスターと岩マスターがグリル村の家屋の再建にまわった。ヤルクはリク達にお礼を述べ、柱戦への激励を伝えた後に仲間達と共にフライ村へと帰って行った。夜には戦士達もほとんどがグリル村を後にしていた。
~~~ゼントの病室~~~
そこには、マスター2人とサナス、リリスとハル達5人が居合わせている。ドーアはリリスとゼントに物言いたげだったが沈黙を貫いていた。
ゼント「ん…ここは」
リリス「目覚めたか」
ゼント「お迷惑おかけしました」
ルカ「(そこは、ご迷惑じゃ?)」
ゼントの丁寧語に少し違和感を感じるが言い間違いとしてルカは自分の中で処理した。
リリスの口からグーに逃げられた事と、報償金を支払った事、復興の為にマスターに働いて貰った事を淡々とゼントへ告げる。そして問う。
リリス「なぜ土マスターに金を集めさせようとしたのじゃ、そんな指示はしておらぬ」
ガイラ「いやいや、まずはなぜドーアさんに服従をかけたかを説明してくださいっす」
リリス「それは…」
口を開くリリスの言葉をゼントが遮る。
ゼント「リリス様、ここは私がお話します」
ゼント「5年前我々の城が大長4の襲撃にあい、多くの兵と中心都市の国民、そして先代国王と王妃を亡くしました。今でも脳裏にあの時の光景が浮かびます。紫色の炎に城が包まれ焼けていきました。リリス様をお頼まれた私はまだ幼かった姫を抱え必死に逃げました。ご強かった先代国王とその親衛隊の足止めも突破され、その魔物は城の入口で私達が来るのを待っていました。その者の剣から漏れる熱波と紫炎が私の体を包むと同時に燃え移らないようにリリス様を落としました」
その場の者はゼントの言葉に深く耳を傾けていた。
ゼント「そして、煙を吸い気を失っていたリリス様が目を覚ましその大長4に突っ込んでいきました。もちろん私も水魔法で加勢しましたが、まったく敵わず負けました。そしてその魔物から王は殺した、と聞いた瞬間に私達は怒りと悲しみで我を失い紋章を発現させました。そして間もなく、リリス様は当時10歳にして能力を覚醒させたのです」
土国の悲劇が語られていく。




