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ノートクエスト  作者: 伊達柴紫
3章 封印とダンジョン
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26話 主要人物の集まる村②

~~~土国 グリル村~~~

 試合開始直後空間内の壁に合わせて岩の壁が作られた為、観客は中の試合を見ることが出来なかった。次にハルの事を確認できた時には既に試合が終わっていた。

 グーは、岩の柱に座る土マスターとリリス、試合舞台の近くで空間に異常がないか見守るサナスを注視していた。そして決勝戦を待つ岩マスターと自身の影武者の様子も確認する。

グー「じゃあ、そろそろ始めようかな。じゆーにさせてもらってる僕だって皆から褒められたいし、1人でこの村制圧してみせちゃお」


土マスター「遂にこの試合で優勝者が決まる!決勝戦はじめ!!」

 フードを被った子供が顔を見せた瞬間、岩マスター含め観客全員が絶句する。その子供はグーではなく、同じ程の背丈の子供の全身に岩の鎧が無理やり纏わせられ操られていたのだった。

岩マスター「え、初めから誰かに操られてたんすか?(いや、試合中はずっとフードを深く被っていたとはいえ、時々黄緑色の髪の毛が見えていたはずっす。この試合だけ成り代わり…)」


 子供は岩の剣を握り、岩マスターに斬りかかる。

グー「(あれは、マスター1人を1秒でも空間に閉じ込めておく時間稼ぎ、本命はこっちだよ!オン)」

 グーは建物の間を通って会場から離れた通りに出ようと走りだす。それと同時に村に不自然に転がっていた岩が集まりだし、グリル村の各地でゴーレムが誕生し動き始める。その大きさは落ちていた岩の大きさに依存し子供のサイズから、最大サイズで15メートル程のゴーレムが約50体現れる。

 

「そこで止まれ、大長の3」

 突如、走るグーの前に屋根から飛び降りて前に降り立つ男が話しかける。

グー「(えっと…見た事あるけど誰だっけ)誰〜?」

「私の名前はゼント、お前は魔物ですね。ここでお止まください」

 土国の王女リリスの側近であるゼントの右手には紋章が現れている。

 

グー「紋章出せるなんて、おじさん凄いね!」

 グーは両手から掌サイズのゴーレムを2体生み出す。そしてゼントに向けて放つが、出したゴーレムとグーの動きが止まる。

グー「(なんで、このゴーレム動かせないし、落ちもしないで止まっているんだろう。操作権奪われたかな?いやこの感じは能力?)」

 グーは首を動かす事ができないので見えていないが、屋根の上に立つリリスがグーの方に人差し指を向けていた。

リリス「妾の国でこれ以上の悪事は働かせぬ。今戦士たちがお主の出したゴーレム達を倒している所じゃが、動けぬお主にはもはやそやつらへの魔法操作も出来ぬ。村全体にいる数十体の土人形を同時に操るとは流石大長3といった所じゃな」

 

 リリスの脳裏に、自身の親と臣下の仇である大長4の姿が浮かぶ。

リリス「あの戦いで、妾らは能力を開花させた。この力でお主を封殺させてもらう。ゼントよ土マスターは放棄してよい、この魔物に能力を使うのじゃ」

ゼント「……分かりました」

 ゼントは両手をグーの両頬に当てる。

ゼント「『服従』を誓え。一、お前の意思は捨てろ。二、私とリリス様の命令には逆らうな。さ…」

 三、とゼントが言い切る前にリリスの『固定』が解除される。屋根の上にいたゴーレムがリリスに攻撃を仕掛けたからであった。


リリス「(既に意思が無い筈、どうやってゴーレムを動かしているのじゃ)」


 

 リク、ハル、ナギの三人で撃破した火の中長フレア・ゴーレムはグーが作り出した魔物である。ゴーレムは指示を出され村を襲っていたが、リク達というイレギュラーが入ってきても戦闘という行動をとった。普通、魔法とは練度の違いがあれど使用者の腕や手の動きに合わせた操作、また視線、更に写真記憶を扱うルカにしかできない座標による魔法操作が基本である。しかしゴーレムは明らかにグーの操作無しで動き続けていた。上位の魔物が下位の魔物に指示を出すのは何もおかしくないが、魔法で出した岩が既に魔物である事はありえないのである。そこにグーの能力が関わってくるが、リリスはまだ能力を見破れていない。ゼント含めグリル村にいる誰も大長3の能力を知らないのだ。

 それが致命的だった。


 ゼントの腹に、グーの拳に纏った岩のドリルが突き刺さる。ゼントは腹から出血し、体勢が崩れ両手をグーから離してしまう。

ゼント「(このままじゃ、能力未達成だ。服従が破棄されちまう)」

 

 意思のないグーが、ゼントを刺した。

 意思のない魔法が、魔物と成った。


グー「危なかったー。能力万々歳だなぁ。また止められる前に行こ!」

 倒れるゼントを飛び越し、再び走り出す。

ゼント「待ちやがれ。泥沼」

 グーの右足が今にも着地する場所の地面を底なし沼へと変える。何気なくやっているがこれは水魔法と土魔法を混ぜた高度な技である。

 

グー「ん!」

 足裏と地面が触れるまでの一瞬の間に泥は固まっていき砂状となり、岩の地面へと変わる。

ゼント「(くそ…頼んだぞ、お前ら)」

 


リリス「ゼントの傷がやばそうじゃのう。杭喰い」

 二本の岩の杭は、ゴーレムの頭と胴体に刺さり両方を砕き再生不可にする。リリスはグーの進行先を確認した後、屋根から降りてゼントに駆け寄る。

 腹を貫かれたゼントの体をグーが生み出した直後リリスに止められていた最初の小さなゴーレム二体で四肢の骨を砕いていた。リリスがそのゴーレム達を倒した時にはゼントは気を失い重症化していた。大量出血での死亡が確定する前にリリスはゼントに指を向ける。


 

 グーが進み路地裏を抜けた先には、大量の戦士達が集まっていた。

「中央広場のゴーレムは決勝出場者半分が止めている!」

「お前にもう逃げ場はねぇ!」

「大会が崩壊した今、お前を倒した者に国宝が与えられるんだ大人しく首を差し出せ」

 

グー「(こんな雑魚たちゴーレム一体で…)!?」

 グーは頭がギリギリ付くぐらいの大きさの立方体の空間に閉じ込められる。

サナス「内から外には攻撃できませんが、自身の体が空間の壁に触れない武器による物理攻撃でしたら逆は可能です。皆さん頼みますよ」

 戦士達は次々とグーの周りに取り囲み、剣や槍をグーに振るい続ける。しかし、どれも尽くグーの岩の鎧に防がれてしまう。


ガイラ「それでも、オミクロンの戦士っすか?」

サナス「ガイラさん。中央は?」

ガイラ「粗方片づいたっす。後は決勝出場者に任せるっすね。あと、ドーアさんの性格が変わったというか、昔の優しく臆病な性格に戻ったんすけど何か知らないっすか?」

サナス「?わからないですね」

 

 土マスターは、ゼントの『服従』によって操られ、意志を失い性格さえも変えられていたのだった。それを先程解除し元に戻ったという仕組みである。

 

「お二人とも後ろ!」

 

 話す二人の後ろから家程のゴーレムの大きな腕を使ったパンチが迫る。

ガイラ「こんぐらい、そっちでやって欲しいっす」

 地面から天頂の先が尖った岩の山が生え、ゴーレムの胴体に刺さり砕く。

サナス「気をつけて!」

 空間に閉じ込められていた筈のグーが、自身の体を傷つける事で空間から出る。と同時に次のシャボンがグーを包み再び空間が展開される。


 同じ事の繰り返しになるが、次に空間を解除させれば、また閉じ込められる前に何とかできるという確信がグーにはあった。そして、自身で出した岩の破片で首を掻っ切る。

 グーの首から血が吹き出す。その周りには空間の壁がない。そしてグーの体の傷は消えていない。

サナス「また、すぐに自身で傷つけると思いましたよ、斬る瞬間こっちで仮想空間を解除させてもらいました。これでダメージは消えません」

ガイラ「サナスさんやるじゃないっすか、自分の能力の扱い方を熟知してるっすね」

サナス「当然です。敵よりまず己を知ろと言いますからね」

 

「すげぇ、大長3を1人で倒しちまった!」


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