24話 親友 対 相棒
ハル「咄嗟に次の有効打に繋がる案を出せるのは、リクだけの特権じゃないよ!」
ハルは両手で剣を今一度強く握り、身動きの取れないリクに走りよる。しかし、先程のリクの蹴りが効いており普段の半分程しか機動力が無いように見えた。
リクの右足には岩の重りが付けられており、それが引っかかり岩の壁から足を引き抜く事が出来ない状態にあった。重りを無理やり持ち上げて右足を振り回してみるが壁を壊したり足の重りを破壊する事は叶わなかった。
リク「(華核拳で先に壁を壊して…)」
リクは叫ぶハルの方を見る。
ハル「逃げ場の無い狭い部屋の中の僕に重い蹴りを何発を入れたんだ君にズルいなんて言わせないよ」
リク「言わねぇけど、その部屋お前が自分で作ったやつじゃねぇか!(やべぇ、このままじゃ滅多斬りじゃねぇ
かよ)」
ルカ「今のリクの動体視力とスピードだったらハルの剣を白刃取り?できるんじゃない?」
ナギ 「それはハルも一番警戒している事だから、剣を回転させてリクの掌に刃を当てるんじゃないか?」
マナ 「くるよ!」
ハルが振り下ろした剣はリクの肩から胸にかけて刃を渡らせる。片足が挟まっているとはいえ、多少動く事ができるリクだが一歩も下がらず、むしろ不利な体勢でダメージ覚悟の反撃に転じた。
リク「昇華拳!」
リクの右手はハルの鳩尾を捉え、剣を振り終え少し前屈みの体勢のハルを空中へとアッパーで殴り上げる。
ノーガードで大技を喰らった二人は互いに大きくダメージを受けてしまう。
ハルがアッパーを喰らい宙に浮いてる間に、リクは素早く華核拳を三発程岩壁にぶち込み破壊する。しかし、足に付いた重りを破壊する前にハルが着地し岩の盾の付いた剣で打撃を与えんと振りかぶる。
ハル「打岩斬!」
リク「うぉらよっ!」
リクは右足に付いた重りでハルの重厚感のある剣を受ける。常人であれば大岩で殴られた時点で致命傷であるがリクが足に同じ強度の岩を纏っていた事もあり、何とか耐え切る。
リク「岩纏い悪くねぇな。でもこれでやっと自由だぜ」
同じ硬度の岩がぶつかり合いリクの足の重りが破壊され、リクの機動力が戻る。
ハル「戻ったみたいだね。初めに。いやむしろダメージ分下がったね」
リク「!?」
リクの火雷瞬走が時間経過によって解除されてしまった。ハルの狙いはリクのパワーアップ状態を解除する事にあった。そして受けたダメージはほぼ五分のままで、リクの火雷瞬走を乗り切ったのだった。
リク「あ、やべぇ」
ハルは遅延作戦が上手くいきリクにニヤニヤ顔を見せつける。策に嵌った相手に対してこんな顔をするのはリク相手以外にいない。
ハル「これで、スピードは互角だ。改めて仕切り直そう」
リク「あぁ。ハルとの戦いはやっぱおもしれぇな、第二ラウンド喜んで受けるぜ」
ハル「そうこなくっちゃ」
今の互いの状況としては、ハルがリクの重い蹴りを顔含め6発喰らい、さらに腹に体が持ち上がるほどの重いアッパーを受けており、岩MPがほとんど底をついている。リクはハルの剣を2回もろに喰らっており、MPはまだ余裕があるが火雷瞬走のインターバル中である。互いのHPは共に3割といったところである。
ハルは左足を引き、剣を構える。リクはそれに対面し右手足を下げて、左足を地面につけ動きやすいように少し曲げ、同じく左手を肘から持ち上げ曲げながら前に出して構える。二人はこの構えから数々の強敵を破ってきた。火の中長フレアゴーレムに始まり、遂には大長10であったハクガンすら倒してみせた。まだまだ強くなる可能性を秘めた二人だが、ひとまずこの時点での実力はほぼ互角である。
ハルは絶望の淵に立つ自分を救ってくれたリクの事を親友と思っている。対して、リクは背中を預けることができ互いに成長し合える仲であるハルの事を相棒と思っている。呼び方など何でもいい、ただ2人は心を通わせてこれからもふざけ合って笑い、共に戦う一番の仲間同士なのである。
先に動いたのはリクだ。ハルの剣をよく見て走りよっていく。手足に火を纏い打撃を捌かれても熱でダメージを与える算段である。ハルもそれは分かっており、剣に氷を纏う。まず、リクが跳び上がり横回転して勢いを付けながら蹴りかかる。ダメージで機動力の落ちた分の威力を補う。
ハル「(こんなの、少し身を引いて対抗斬で勝負決まるんじゃ…でも、そんな甘い手は使わないはず)」
ハルが色々と思考を巡らした瞬間を狙い、リクはふくらはぎから火魔法を噴出し回転力と前方への推進力を上げハルに蹴りを当てる。
リク「必殺 陸海空破脚!」
ハル「(これはまず…)」
ハルは咄嗟に剣をリクの足が届く辺りに振り上げて、岩魔法最後のMPを使い切り剣に盾を纏いつけ防御する。
しかし、リクのスピードには追いつけず腹と脚に重い蹴りが入る。更には火属性のダメージも入ってしまう。リクは反撃を避けるために後ろに下がる。ハルはそれを追う。
前のめりになったハルの目の前には、自身が譲ったナイフが宙を直進していた。もう岩の剣を顔の前に構えるには間に合わず、盾を外した剣をもってしても間に合う距離ではない。
試合を見ていた誰もが決着がついたと思った瞬間であった。リクもそう確信していた。
ハルは剣から盾を取り外し、忍村でワカと共に完成させたスキルを使用する。
ハル「対抗斬」
ハルは目の前まで来たナイフを顔を回転させ首で受けながら進む。首には大長落ちトフム戦で不発に終わった氷魔法で作った防具氷層装を纏っている。リクに剣が届かない距離での対抗斬は宣言する事で自身の体に躱すまたは、いなすと意識させる為であった。
リク「まじかよ、岩もこの数日で成長させたのに、氷属性まで…。俺の雷習得時と同じ相乗効果か」
リクはこの戦いを心から楽しみ笑っている。ハルも楽しそうな表情でリクに近づいてくる。
ハル「たのしいね」
リク「最高だな」
ハル「アイスター・プリック」
氷を纏った剣はリクの胸目掛け真っ直ぐ伸びる。リクはそれをバックラーで受けて剣を弾く。ハルの氷が徐々に溶け始める。
ハル「(バックラーに熱を溜めていたのか)」
二人共出会った時から魔法の練度をぐんぐんと成長させていた。それは、短期間に強敵と何度も戦った経験値と身近に3人の魔法の師がいたためである。
ハル「スラッシュ閃!」
リク「先点拳」
リクはバックラーでハルの剣を受け、ハルはリクの突きをピンポイントで纏った氷の鎧で防ぐ。鎧が溶かされる前に少しだけ距離を取り再び剣を右から左へと戻しながらリクを狙う。リクはバク転で回避しつつハルの顎に足を掠める。ハルは守戦律を3音だけ奏で、顎を揺らされ動きを止められるのをキャンセルする。バク転し両手を地面に付けたリクは手で地面を跳ね変則的な飛び蹴りを放つ。
ハル「それは、何度も見た!」
リクの迫る足に一太刀入れて回避し、着地するリクを狙う。
リク「雷強速」
地面に足を付けた瞬間、ハルの剣が届く前に再び飛び上がり回避する。
リク「火速 地落とし」
踵から火を噴出し、数回縦回転しながら足を振り下ろす。ハルは剣を上に構えて右手を刀身の下に当て、蹴りを真正面から受ける。
ハル「なんて威力だ。(機動力落ちててこんなに動けるのか)」
ハルの膝は折れ地面に付く。踵からは未だに火が噴出しておりハルの顔にかかり、相当なダメージを稼がれてしまう。ハルは堪らず右手を使い、剣をずらしてリクの足を避ける。
リクは地面に踵を炸裂させ、膝をつく。
ハル「やっぱり無理してた反動が来たね」
リク「せっかく痛みないんだ。まだまだ無理するさ、火雷瞬走!」
すぐに立ち上がり、ハルの横腹に回転蹴りを当てる。
ハル「(もうどっちも限界だ。こっちもフルパワーでいくぞ!)」
ハルは手から大きさがバラバラの氷塊をいくつか作りだし、地面にばら撒く。
リク「(どういう意図だ?)」
リクは気にせず突っ込むが、ハルの口笛で奏でる輪盗によりスピードが制限される。そして氷の小さな球を先程撒いた氷塊に落とす。氷と氷がぶつかる音は綺麗な音を奏でる。球は反射し次の氷塊へと飛ぶそしてまた1音鳴らして次の氷塊へと飛びまた音が鳴る。その音と音は繋がり旋律となった。その曲をリクは聞いたことがあった。スピードを高める圧散[アッチェレ]と、攻強曲のまざりあった曲、美武音[ヴィーヴォ]だった。
ハルの剣はリクより速く宙に弧を描く。その弧はリクの体の上もその剣の軌道とした。リクの渾身の蹴りはハルに届く1歩前で止まり、空間は縮んでいく。
大の字で空を見上げる二人に、仲間達が駆け寄る。リクの左手をナギが右手とハルの左手をマナが、ハルの右手をルカが握り二人を起き上がらせる。
リク「ハル!良い勝負だった。さすが俺の相棒だぜ。これからもよろしくな」
ハル「こちらこそよろしくね、親友」
リクとハルは固く握手を交わす。決勝トーナメント1回戦最終試合は大きな盛り上がりを見せ幕を閉じる。舞台は歓声と拍手が飛び交っていた。




