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第5話 バレンタインは早退したい。

そして件のバレンタインデーがついにやってきてしまった。朝から気が重い。重くても何時も通り教室についてしまう。現実逃避に朝からアプリに精を出す。

都花 「おはよう。紗希ちゃんどうしたん?しんどそうやね。」

流石都花ちゃん。わかりますか、そう絶不調なのですよ。

紗希 「そう。だから早退しようと思って。」

勉強なら家でもできるし問題ないですよね。

瑞希 「おはよ。単なる仮病やから気にせんでええよ。由早ちゃんが何とかしてくれるから。」

瑞希さんそれ死亡フラグのBADENDですから。通称BE。BEと言えば命令文。ほら、いい感じがしない。いや本当に体調悪いですよ。ストレスでお腹痛いし。今朝から瑞希のやる気が鬱陶しいし。忘れていこうとしたチルルをしっかりもってくるし、足取りの重い私の手を引いて学校まで連れてくるしで迷惑です。済みません私が手のかかる子でした。

由早 「おはよ。また帰るとかゆーてたん?ちゃんと持ってきた?」

私への由早の質問になぜか瑞希が答える。

瑞希 「うん。いっぱい持ってきたよ。」

どうしても嫌だと駄々をこねる私に瑞希が一計を案じた。木を隠すなら森の中作戦です。茶園場だけに渡そうとするからおかしな話になる。部員全員に女子全員で配れば問題なくないですか。という提案でした。まぁそれならいいですよ、うっかり後輩が渡してしまえばそれはそれで不可抗力で仕方ないですしね。むしろ渡してください。

由早 「え?そんなにいっぱいどないしたん?」

説明するのも面倒くさいので黙っていると3人で話を進めてくれる。

都花 「すごい量やね。なんかパーティーみたい。」

5種類を8個ずつ用意しました。経費は掛かりましたが一人に渡すよりは精神衛生上はるかにましです。

瑞希 「てへへ。由早ちゃん一緒に配ってあげてね。」

由早が配らないという選択肢は用意していないのですが。

由早 「へ?私も配るの?」

そこは手伝いましょうよ。親友じゃないですか。ね?勝手な時だけ親友って言ってごめんなさい。

由早 「まぁいいけど。」

面倒くさそうに言っていますが、面倒見のいい由早さんが私を見捨てるはずはありません。流石由早さん頼りになりますね。大好きです。あ、勘違いしないでくださいね。

都花 「楽しそう。」

大量のチルルを前に都花の顔がほころぶ。普段からかわいいのに笑うとほんとかわいい。そのかわいさには嫉妬です。都花さんも参加しますか?むしろ私と代わってあげますよ。とか思いつつ時間が流れて昼休みになる。


お弁当を食べ終わり茶室に手提げ袋をもって向かう。中身はもちろんチョコだ。いっせーので交換すると高そうなのパッケージが出そろい心躍る。

都花 「開けてもいい?」

尋ねる都花の声にもうあけそうになっていた瑞希が手を止める。見逃しませんよ、早いですよ、瑞希さん。

瑞希 「いいよ。私も開けるね。」

「私も開けていい?」ではなく「私も開けるね。」に瑞希の前のめり感、早く開けたい感が伝わってくる。ゆっくり開けても大丈夫ですよ。皆定番のトリュフの詰め合わせを選んだようだ。見た目にもかわいいピンクのハートがあしらってある物を口に運ぶ。何が入っているかはわからないが美味しい。幸せの味がする。二つ目を口に運ぶとこれまた美味しい。さっきのより少しビターでスッキリとした味がする。もっと食べたいところを我慢してしまおうとすると瑞希と都花はもうすでに4つ目を口に運んでいた。

由早 「早っ。食べすぎちゃう?」

由早さん意外と私と気が合うかも。気が合わないと一緒にランチなんてしていませんよ。

瑞希 「普通だよね。」

悪びれることもなく都花に同意を求める。次のチョコを物色していた指を止め都花の方に距離を詰め連帯感を強調する。

都花 「うん。」

都花もこれくらい普通だよと言わんばかりに返す。もう距離はすでに詰まっているのに都花の方からも距離を詰める。はいはい。仲良いですね。

紗希 「すぐ食べちゃっても分けてあげませんからね。」

瑞希の都合のいい時だけ発動する「お願いお姉ちゃん一個だけ」攻撃に対する牽制の布石を打つ。布石も囲碁用語ですね。囲碁部に転部しようかな。チョコ渡さなくて済むし。打てないですけど。

瑞希 「大丈夫。紗希ちゃんやさしいもん。」

こういう時の大丈夫はたいていの場合大丈夫じゃないです。布石の意味ないじゃないですか。結局瑞希と都花は3箱のうちの1箱を平らげ満足そうに眠りについた。


嫌だなーと何回か脱走を試みるが失敗に終わり無情にも時は流れ放課後を迎える。

紗希 「はーっ。」

ため息しか出てこないですね。バレンタインデー。チョコを渡す又はもらう側の大半は事前に心当たりがあるのだと思います。この日に突然告白というのも否定しませんがごくごく少数だと思います。本来は告白のためですよね?じゃあ少数のためにこんな日作らなくていいじゃないですか。今度はバレンタインデーに八つ当たりしてしまいました。ドキドキ感があるならまだしもなんでいやいやチョコを渡さないといけないのでしょうか。なぜこうなった?覆水盆に返らずで考えたところで仕方ないですが安請け合いした当時の自分が恨めしい。

由早 「そんな思いつめてどうしたん?」

いやいやあなたにも責任の一端はあるのですよ由早さん。もちろん決めたのは私ですが。

紗希 「チョ・・・チョコォ。」

瑞希 「食べたいの?我慢しないで食べればいいのに。」

分かってるくせに、意地が悪い。

瑞希 「はいどうぞ。」

あざとい笑みを浮かべて大量のチルルが入った紙袋をさしだす。あざとい笑みだがかわいい。しぶしぶ受け取って中身を確認すると違和感に気づく。あれ?ラッピングされていますね。

都花 「さっきね、みぃちゃんとぱぱっと詰めたの。こっちの方がかわいいでしょ?」

流石茶道部おもてなしの部活ですね。気遣いが一周回って余計なことです。余計なことしないでくださいね。

瑞希 「紗希ちゃん絶対そのまま渡すと思ってたからいっちゃんと用意してたんよ。」

そういうことは先ず私に相談してくださいね。

由早 「いいやん。うちの紗希がいつもご迷惑をおかけします。紗希ありがとうゆーときな。」

誰キャラですか?由早の所有物になった覚えもない。それでもキラキラとした瞳を向ける都花のために礼を言う。

紗希 「ありがとう・・・」

由早 「じゃあ行ってくるね。」


無理やり私を立たせた由早はまた部室へと連行する。部室が近づくたびに足がすくむ。部室までの距離と歩幅が反比例している。距離をx歩幅をyとしたときxが0の時解は無いので部室にはたどり着けない。これでどうでしょう。とか思っていると部室の前に立っていた。あれ、おかしいですね。

由早 「ちょっとまっててね。」

私を廊下に置き去りにした由早は一人で部室に入る。エスケープのチャンスですね。いつもの指定席にいる後輩ちゃん達に声をかけこちらをちらりと見る。逃がさないための牽制ですか?私を目で牽制しながら後輩ちゃん達を呼んできた由早はもっともらしい説明を始める。

由早 「うちらもうすぐ引退やし最後のバレンタインやから持ってきてんけど、良かったら一緒に配ってくれへん?みんなで持ってきたことにすればいいから。」

策士再びですね。下手に出て下級生を懐柔しつつ皆からと言う事で「先輩余計なことしないでください」と言う対策もカバーあまつさえ意中の人がいた場合どさくさに紛れて差し替えて渡せる。最後のまでは考えていなかったかもですけど。どうやって後輩ちゃんにお願いしようか悩んでいましたが由早さんが考える間もなく解決してくれました。細工は流々です。

紗希 「由早ありがとう。」

由早 「ええよ。そういうの苦手なん知ってるから・・・紗希の事なんでも知ってるから。」

二回目の知ってるからはいらないですよね。そんなわけないし、怖いし、重い。私が引いていると満足そうな表情を浮かべてチョコの袋を奪い取る。部室の扉から顔をだし指さしで人数を数える。

由早 「28人おるから一人7個づつお願いね。」

ラッピングされたチルルを紙袋に分けながら声をかける。

後輩1「はーい。」

後輩2「誰に渡したらいいですか?」

由早 「茶園場くん以外やったら誰でもええよ。」

由早の言い回しに後輩ちゃん達が「ああ」という悟りの表情を表す。

後輩1「頑張ってくださいね。」

いや、違いますし。

後輩2「でも、チルルでいいんですか?」

だから違いますって、そして余計なお世話です。協力してもらってて今のは無いですね。すみません。由早が仕切っているので私が内気な女の子キャラで面倒見のいい由早にお願いしたみたいになっていませんか?

紗希 「いや、違うんですよ。罰ゲーム?みたいなもので無理やり渡さないと行けなくなったのですよ。」

下級生相手にたどたどしい敬語で答えると嘘はついていないのにちゃんと伝わったか不安になる。

後輩2「分かってますよ。」

口角が上がった返事が分かってない事を告げている。もういいです。面倒くさいし。流れで忘れていましたが、後輩ちゃんたちが茶園場に配るという不可抗力ルートをよくも潰してくれましたね由早さん。逆恨みの冷ややかな視線を向けているとなんの前置きも無しに由早が部室のドアを開ける。あ、待ってください心の準備が、と思ったが早く済ませたほうが楽ですね。

由早 「はいどうぞ。」

なんの前置きも無しにチルルを配る。今日がバレンタインだと思っていても大半は学校でもらえるとは思ってないのでしょう。手渡された方は「え?」という顔になる。初めに渡された人は勘違いしていたのか次々と渡されると「ああ。」という表情になった。私も早くノルマを済まさなければ。茶園場グループに近づくと由早と後輩ちゃん達のおかげで趣旨は理解しているようだ。渡す順番を考える菜園場は真ん中くらいに渡そう。こんな事意識している自分に腹が立つ。

紗希 「どうぞ。」

モブ男「ありがと。」

紗希 「どうぞ。」

モブ男「あざーっす。」

紗希 「どうぞ。」

モブ男「ちーっす。」

ちーっすって何の略ですか?感謝の気持ちが伝わってこないですね。チルル程度で感謝を催促しないですけどね。

紗希 「どうぞ。」

静臥 「ありがとう。」

意外と普通の反応で良かったです。過剰な反応されたらどうしようとか思ってた私のほうが自意識過剰でした。禊も一通り終わったところで、残ったチルルを後輩ちゃん達に勧める。

紗希 「付き合ってもらってありがとうございました。良かったらどうそ。」

言った後から気付く、この言い方は誤解を招きますね。一番ダメな誤解は茶園場にチョコ渡すために手伝ってもらったという事です。あれ?それは事実なので誤解じゃないですね。言い方が悪かったです。何らかの好意をもってチョコを渡すために手伝ってもらったという解釈は誤解です。

後輩 「あ、ありがとうございます。」

私の言葉をどう解釈したのかは計り知れないがこれでこの件は終わり。でも、今思えば渡す必要あったのですかね?今更ながらそんな疑問が鎌首をもたげてきましたがもう済んだことなので考えないようにしますね。残りのチョコは下校時にほぼ瑞希と都花が美味しく頂きました。

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