第6話 ダメな私の優しい仲間たち
土日を挟み今日からまた学校。先日とは違い足取りは軽い。日常って最高ですね。今日は由早のまとわりつきもかわいく思えるほどメンタルは良好です。良好なのでしょうか?危ない方向に振り切ってないか心配。
由早 「今日は抵抗せんね?」
由早も私の変化に気づいたようだ。
紗希 「些細なことです。いいですよ。」
寛大な私の言葉に一同が驚く。やさしい言葉をかければ驚かれ、きびしい言葉を吐けば引かれ、私をなんだと思っているのですか扱いひどくないですか。
瑞希 「紗希ちゃんが達観している。」
都花 「由早ちゃんチャンス!」
瑞希ちゃんお姉ちゃんはいつも寛大ですよ。都花さん何のチャンスですか?今日は一日楽しく過ごせそうです。そう思っていました。5限目までは。
5限目が終了しHRも終えると教室の人口は半分以下になる。私はスマホを取り出しデコナイを起動する。ポチポチと機嫌よく遊んでいると廊下から見ず知らずの女子に声をかけられる。
女子 「金ケ崎さんいる?」
視線を声のする方に向けて確認をする。リボンタイの色からして同級生のようです。私の知り合いじゃないですね。確認するまでもなく私という可能性は低い。瑞希のお客さんですね。私がスマホに視線を戻すと瑞希が対応をする。
瑞希 「えーと?金ケ崎は私ですが?」
あれ?瑞希の知り合いでもないのですか?
女子 「ちょっといい?」
瑞希 「いいですよ。」
女子 「ここじゃちょっと。」
知らない女の子は瑞希に外に出る様に促す。
瑞希 「え?ここじゃだめ?」
なんか面倒くさそうですね。都花も気になる様子でそわそわしだした。
都花 「大丈夫?わたしも行こっか?」
心配そうに瑞希の手を両手で握る。女子のこういう時の連帯感は強い。私も付いて行こうかと思いましたが、向こうも二人なので由早と待つことにする。
由早 「何なんやろね?」
瑞希 「私に聞かれてもわかりませんよ。」
分からないという事態にイラっとして由早にあたってしまった。
瑞希 「すみません。」
由早 「ええよ。なんか心配やもんね。」
そんな事はお見通しとばかりに許容される。普通なら喧嘩になっても仕方ない言い方なのに。小学校の高学年くらいから自覚しました私は我儘で短気です。知らない人にはあまり関わらないようにしているのはそういう事もあってなのです。近しい人や気のおけない人、家族にはあたってしまいます。一方的に私のことを理解して欲しいとか甘えだってわかっています。それで疎遠になった人もいます。それでも傍にいてくれるだから彼女は私の親友なのかもしれないですね。
数分後二人が帰ってくると瑞希が苦笑いしながら困ったような表情をする。
瑞希 「私じゃなかったみたい。」
瑞希じゃない金ヶ崎って私じゃないですか。
都花 「でも紗希ちゃん行か無くてもいいと思うよ。ちょっとねぇ。」
そう言って瑞希に同意を求める。
瑞希 「ねぇ。」
ねぇねぇ言われても私は全然わからないのですが・・・そうこう話しているとさっきの女の子がドアからゆっくり姿を表しこちらを凝視する。怖い。ホラーかと思いましたよ。
紗希 「なんですか?」
要領を得ない私は少し語尾が冷たくなる。時間のたった教室にはもう私たちしか残っていない。
瑞希 「怒っちゃだめだよ。」
ああ、私が怒る様な内容なのですね。面倒臭い。ホラー女子がもじもじしていると付き添い女子がそれを励ます。レスポンス長いですよ。
紗希 「用がないなら部活行きますけど?」
知らない人といて時間が無駄になるというのは耐え難い。
ホラ女「あんた茶園場君とどういう関係なん?」
どういう関係と聞かれても答えようがない。それに初対面の人に「あんた」とか少しこの方の品格を疑ってしまいます。多分疲れているのでしょう。多分。
紗希 「部活仲間?」
これくらいしか思いつかない。私のリスペクトするラノベで得た知識ではこういう時「同級生」と答えるのが無難みたいですね。
ホラ女「でもチョコ渡したよね?」
こういうのってどこから漏洩するのでしょうかね。あの場に32人も居たから仕方ないですかね。渡したくなかったのですが云々と言い訳をしても聞く耳を持ってくれそうにないですね。
紗希 「部活仲間だとチョコを渡すのはおかしいということですか?」
答えながら面倒臭くなってきている自分に気が付く。
ホラ女「渡すのはいいけど・・・」
紗希 「じゃあ「でも」の指し示す意味を教えてください。」
言葉を遮って意地悪な質問をする。言いたいことはわかっているつもりですが回りくどい言い方をする人にはこちらもそれに応えてあげます。友達が少ない理由が自分でもわかります。
ホラ女「そんな事どうでもええの。好きなんかどうか聞いとんの。」
紗希 「私の質問に答えないあなたに私が答える義務があると思いますか?」
引き続き我ながら意地が悪いと思う。瑞希と由早はあーという表情、都花は心配そうに瑞希の後ろから覗き込む。
ホラ女「何なんこいつ。こんなんのどこがええの?」
情報源は少なくとも茶園場グループですね。そんな喋り方するとお里が知れますよ。イラっとすると面倒臭いという思いが一周回って論破してやりたいに変わってきます。人気があるとは聞いていましたが茶園場さんも凄い人に好かれていますねお察しします。
紗希 「質問変えますね「こんなんのどこがええの?」ってことは茶園場君の気持ちは知っているってことでいいですか?」
別に答えて貰う必要はない。気持ちを逆撫でる様な質問を投げかけたが意外と返事が帰ってきた。
ホラ女「あんたに振られたって事まで知ってるわ。それやのにチョコ渡すとか何考えとん。」
茶園場のことは貴方よりも知ってますよアピールですかね?色々な誤解と語気にこもる必死感で笑ってしまいそうになる。ウケるってこう言う事ですかね?性格の悪い私の口元が緩むのを察知してか瑞希がとりなす。
瑞希 「二人共落ち着こう。誤解やと思うよ。」
瑞希の柔らかい声は落ち着きますね。後ろで都花もうんうんと首を振っている。ホラ女は瑞希の方を向くが納まりがつかない様子です。
紗希 「振ってませんし、かといって茶園場さんにも興味ないですよ。チョコは部員全員に渡しましたし。逆に茶園場さんにだけ渡さない方が不自然じゃないですかね?断片的な情報でヒスおこさないでくださいね。」
よそよそしさを出すために「君」を「さん」に変えゆっくりとした口調で事実を述べた。最後の一言が余計なのは自分でもわかっています。頭にズビシっと手刀が振り下ろされる。痛っ。いえ、そんなに痛くなかったです。
由早 「またそういう言い方する。私ら以外にそういうのゆーたらあかんよ。」
ホラ女が憤慨する前に由早オカンに怒られてしまいました。
ホラ女「本人から聞いたもん。」
今度は少し感極まっているみたいです。怒るのか泣くのかはっきりしてください。ん?やっぱりどっちでもいいです。特に興味ありませんでした。
紗希 「そういうの面倒臭いのですが、先日も誤解があってむしろ特定の誰かがいてくれた方が私的にはありがたいので貴方が頑張ってくれませんか?」
私の上からな提案にホラ女が憤慨する。
ホラ女「ふざけんな!」
躁鬱ですか?
瑞希 「今のは紗希がひどい。」
そうですねと心の中では同意しながらも口は真逆のことを溢す。
紗希 「え?そうですか?こう言う事から解放されたい私と茶園場君と良い仲になりたい彼女。WINWINじゃないですか。」
WINWINのところで少しふざけてしまいました。
都花 「紗希ちゃん言い方。」
また頭にズビシっと由早の手刀が振り下ろされる。さっきよりも痛い。
ホラ女「好きな人いるからって受け取ってもらえんかった私にどうしろっていうんよ。」
付添女子が感極まったホラ女の肩を擦って「大丈夫?」とか声をかけている。え?受け取らなかったのですか?しかも好きな人って私ですかね?そう言う事話すってどうなんですか茶園場さん。私への配慮が無いじゃないですか。むしろこの状況の諸悪の根源は茶園場。
ホラ女「あんたが真剣やったらまだしも・・・こんなヘラヘラしたの好きやとか・・・」
ヘラヘラしてませんよ失礼ですね。よく考えたら私何も悪くなくないですか?むしろムカムカです。
ホラ女「私どうしたらええんよ!」
感極まって私の肩を掴みガクガクと揺さぶる。瑞紗が止めに入るよりも早く由早が手を払ってくれる。
由早 「それはあかんわ。」
さっきまでとは違う厳しい表情でホラ女を睨む。
紗希 「知りませんよそんなの自分で考えてください。」
乱れた制服の襟を正しながら答える。知らない人、しかも敵意を向けてくる人に答えてやれるほど私は寛大ではないです。
ホラ女「そんなん…」
勝手に絡んできて被害者ぶって本人と向き合わずこんなところで見当違いの言葉を吐く目の前の女子を私は許容することができなかった。ほんとイライラするな。感情の箍が外れかかった私は三度余計なことを口にする。
紗希 「考えることができないなら首の上についているのは飾りですか?飾りならもっと綺麗なのつければいいのに。そしたら振り向いてもらえるかも。」
私が口にした言葉は茶園場にも目の前にいる子にも大変失礼で罵声を浴びせられても叩かれても仕方ないほど汚くひどいものだった。だがホラ女は何れも行わずその辺りにあった椅子にペタンと座りこむ。瑞希達も黙り込む。
付添女「ちょっと顔がええからってなんなん。性格最悪やん。」
ホラ女の仇とばかりに今度は付添女が吠える。特に異存はないので同意する。
紗希 「そうですね。」
付添女「バカにしとんの?」
より一層きつい口調で口にする。同意したのに怒られるとかどうなんですか。いや仕方ないですね。
付添女「何の努力もせんとあんたらいっつもへらへらして。」
周りからはそういう風に見られていたのですね。結果を出していない者が過程はどうであれ結果を出した者を妬むのは見ていて気分がよくない。少なくとも瑞希と由早は学年10位近辺、調子がいい時は一桁だってあります。都花と私だって30位に入らないことはない。皆それぞれ努力しています。30位内常連の人は話したことが無くても顔と名前がほぼ一致するがこの子達は知らない。人に「努力もせんと」とか言うくらいだから努力しているのでしょう。努力してそれなら辞めた方がいいんじゃないですか?と明後日の方向に思考を展開し一人納得する私。
紗希 「は?私はともかく他の子は関係ないじゃないですか。」
なんかスイッチ入っちゃいそうです。察した瑞希がまた口を挟む。
瑞希 「ごめんね。紗希も言いすぎやからちょっと席外して、由早ちゃんお願い。」
行こうと私を由早が促すが私は動かない。
紗希 「努力ばっかりしてて結果が出てない人たちが用があるのは私ですよ。」
瑞希 「紗希黙ってて。怒るよ。」
え?私のお客さんなのに。怒るよとか言って既に怒ってるじゃないですか。でもここは従ったほうが良さそうなので由早に付いて教室を後にする。別に怖くなんかないですよ。ほんとに。怒られて少し焦ったけど。
瑞希 「ほんとにひどいこと言ってごめんなさい。でも誤解もあるんで聞いてもらえる?」
廊下に微かに響く瑞希の声が聞き取れたのはここまででした。結局あの人たちは何がしたかったのか。今日は茶園場の顔も見たくないので図書室で瑞希と都花を待つことにしました。
由早 「落ち着いた?」
自販機に向かい飲み物を買うと私の横に座り私の好物ハイキングのフルーツ味を差し出す。あ、と財布を出そうとすると「いいよ」と制する。
紗希 「ありがとうございます。いつでも落ち着いてますよ。」
ストローをさして一口飲む。甘くて美味しい。落ち着く。由早には見透かされている。
由早 「うそやー。私らのこと言われて怒ったくせに。ありがとな。」
そう言って今日何度目かのハグをされるが無視してハイキングを飲む。今回の件、起因としての私の責任は一切感じていない。強いて言うなら美少女が罪。冗談ですごめんなさい。しかし、対応の悪さは分かっていても治らない。同じ失敗を繰り返すって無能ですね。だから、自分の無能さを痛感させられる人付き合いが苦手で嫌いなのです。事恋愛に関してはその他のファクターが関係して尚の事面倒くさい、煩わしい、うんざりです。
半時間ほどたった。図書室で勉強していると瑞希と都花が少し息を切らせて入ってきた。
瑞希 「あ、いた。」
都花 「よかった。」
バタバタと上履きをスリッパに履き替え向かいの席に都花は行儀よく座り瑞希は机にパタンと突っ伏す。
瑞希 「もうLIMEしたのに。紗希ちゃんはともかく由早ちゃんまで無視して。」
スマホをポチポチと弄りながら恨めしそうに私と由早を見る。連絡入れるのを忘れてましたね。私はともかくで免罪なのですね。部活に行くと思っていたのでチェックしてませんでした。
紗希 「いや、既読じゃないですよ。」
瑞希に怒られるんじゃないかと思い無視じゃなくて気がつかなかったアピールをする。
由早 「ごめん。部活行くと思ってた。」
由早は不思議そうになんで瑞希たちもここにいるの?といった様な感じだった。
瑞希 「こっちも部活行ってると思ったから探したよぉ。」
突っ伏したまま机の上にある私の消しゴムをぴんと人差し指ではじく。いたずらっ子。
都花 「今日は気分じゃないから皆でカラオケでも行こうって。」
あ、すみません。私の所為ですね。
瑞希 「納得してくれたみたいやけど、大変やったんやからね。もう疲れた。」
そう言って机に突っ伏したまま腕を「うーん」と伸ばし私のノートをふざけて押してくる。猫っぽい。ほんとすみません。不出来な姉を持つと妹は苦労しますね。本当か嘘か彼女たちは私が茶園場に気があるのかが知りたかっただけだそうです。その上で今後の身の振り方を決めようと。それだけだったらあんな言い方しなくてもいいのにね。私もですか?
紗希 「ご飯の支度は?」
行くのはいいが、今日の当番は瑞希です。仕事から帰ってきてご飯がないとか父上達可哀想すぎる。
瑞希 「パピにLIMEしたら行っていいよって返ってきた。」
その言い方馬鹿っぽいのでやめてください。私にスマホの画面を向けて父上との履歴を見せた。最後にサムズアップしたうさぎのスタンプを受信していた。外食でもするのかな・・・父上の奢りで。カラオケも久しぶりだしいいかなと思いましたが私たちのホームカラオケ店は都花の家と反対方向なのにいいのですかね?
由早 「いっちゃんもいいの?月曜日やけど。」
そう、だいたい金曜日とか休みの日に行ってたのでそれも心配です。今16時前遅くなりますよ。かわいいから帰りが心配。
都花 「私も歌いたい気分!」
こんなに積極的な都花も珍しいですね。やっぱり私が原因ですか?どうしよう段々肩身が狭くなってきましたね。しょんぼりしていると由早が元気に私を誘う。
由早 「じゃあ、行こっか。」
私はともかく都花の意思は堅そうなのでカラオケが決定した。行くと決定すると何だか少し上がってきましたよ。不思議と。




