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第17話 さわやか気持ち悪い

お昼になった。茶道部の部室になだれ込む。流石に男子たちは入ってこれないので私の安住の地。表に部外者立ち入り禁止の紙が貼ってありますが妹の部活の様子が気になってと通らない言い訳で罷り通る。

由早 「なんか賑やかやったね。」

都花 「日富美君紗希ちゃんの事絶対好きだよね?」

あれ?そういえば日富美にすごくからまれているのに好きとは言われてませんね。あれですか私が自意識過剰に反応して来たところを自意識過剰と揶揄する気ですか?

紗希 「いえ。好きと言われたことはないですよ。」

都花 「でもLIME交換したい必死感は伝わって来たよ。」

胸の前で軽くこぶしを握り熱く語る。都花さんの必死感は伝わってきました。

紗希 「そうとも限りませんよ。興味本位かもしれませんし。」

都花 「そうかなぁ。そんな事無いと思うよ。」

一瞬流されそうになったところを、こぶしを握り直し熱く断定する。普段は大人しい都花ですがたまに芯の強いところを垣間見せますね。

由早 「でも紗希の好みで言うと日富美君よりも上ノ丸君だよね?」

瑞希 「分かる。」

分かるじゃないですよ。そしてニヤニヤしない。そんなに意地悪するんだったらこっちにも考えがあります。

紗希 「瑞希の好みは谷八木君ですよね。」

瑞希 「そうやね。で、そこに茶園場君も参戦させて三つ巴。」

あっさりと認めて流されてしまいました。この子ほんと嫌。そして黒歴史を掘り返さないでください。また変な言いがかりつけられたらどうするのですか?

由早 「うわ、紗希モテやね。」

望んでいないモテ期で一回消費とか勿体ない。確か回数制限ありましたよね?モテ期。そしてあながちモテ期がうらやましいという事は無いと理解しました。望まない時期に望まない人からとか罰ゲームですよ。

瑞希 「いっちゃん誰推し?」

都花 「うーん。私は積極的な日富美君を応援。」

どういう判定基準ですか?ゆるくないですか?

瑞希 「由早ちゃんは?」

由早 「私は茶園場君かな。相談に乗ったし。」

それは終わった話ですよ。

瑞希 「じゃあ私は上ノ丸君ね。」

消去法って適当すぎませんか?

紗希 「あの、何の話してるのですか?」

これ私怒ってもいいですよね?

由早 「何って紗希の恋のお手伝いやん。」

紗希 「おせっかいですよ。私の気持ちも考えてください。」

「むっ」としながらも懇願の眼差しで場の収拾を図る。

由早 「じゃあ紗希の手伝い辞めて茶園場君たちのお手伝いするわ。もうすぐホワイトデーやし。」

何も解決していない。むしろ悪化しましたね。私何か悪いことしましたか?

紗希 「もう寝ます。ふて寝です。」

ブランケットを取り出しくるりと纏い部屋の端で小さくなってごろんと転がった。目をつむると都花の「いいの?」という声が聞こえたが瑞希と由早が「大丈夫。」「いない方が話が進む」とか返事して会話が進んでいった。ちょっとは構ってください。フォローとか。

都花 「そうなるとチョコもらってない日富美君と上ノ丸君は不利だよね。」

いや茶園場もチロルなので大差はないと思うのですが。その論法で言うと将棋部全員有利。

瑞希 「氶君が私にくれると思うから、その流れに乗れば逆転も可能だよ。」

先ず茶園場はリードしてないし、そんな競争も始まってません。茶園場は思いを聞きましたが後二人は瑞希と都花の妄想でしかないですよ。あと瑞希さん厚かましくないですか?そんな仲なのですか?

都花 「そうか。その手があるよね。」

無いです。本当に持ってきたらどうしようと少し怖くなりました。受け取らなかったら私ひどい人ですかね?でも受け取ると認めるという事ですよね?そんなに深く考えなくてもいいですか?経験不足で最適解が見つからない。

由早 「じゃあ渡すの被らないようにしないとね。皆同時だと気まずいだろうし。」

私が気まずいですよ。

都花 「本当モテだよね。」

あなたの方がモテるでしょ?それとも高嶺の花過ぎますか?都花に言われるといじられているような被害妄想が止まらない。そういえば、あの4人の中に都花目当ての人がいてもおかしくないですね。その辺はどうなんだろうか。谷八木以外の誰かが・・・そう考えていると本当に眠くなってきました。

由早 「そうやね。あ、もうこんな時間。私らも寝よか。」


放課後になり部室に向かう。今日は散々だった。休み時間は絡まれるし瑞希達はまたよからぬプロジェクトを立ち上げようとしているし。部室に着いて思う、人に話しかけられないって素晴らしい。駒をざーっと盤上にだし、綺麗にぴしりと並べる。研ぎ澄まされます。やっぱり将棋最高。由早が一つ席をずらして座る。あれ?なんでだろう。

静臥 「こんにちは。南貴崎さんここいい?」

わ、びっくりしました。思わず過剰に反応して仰け反りました。そうだ、ここには彼がいましたね。私の幸せはここにも無かった様です。暫くぶりの登場ですね。私の答えはもちろんNOですが、由早に聞いているので私に答える権利が無い。由早さんまた仕掛けてきましたか?

由早 「こんにちは。いいよ。」

でしょうね。じゃあ私は失礼して一つ隣の席に移動する。

由早 「紗希はそこにいて。」

当然のように由早の前の席を細く長い指で冷たく指し示す。

紗希 「いえ、お二人の邪魔にならないようにここにいます。」

何か知りませんが巻き込まれたくないので頑なに拒否ですよ。

由早 「ふーんじゃあいいわ。」

勝った。あっけなく引き下がりましたねと思ったら由早と茶園場が席を移動してきた。なにこれリアルはさみ将棋ですか?隣の席が後輩ちゃん達で埋まっているので逃げ道がない。ここで立ち上がり遠い席に移動するのは大人気ない気もするしどうしよう。

静臥 「ごめんね。邪魔するね。」

これは私にかけられた言葉ではない。後輩ちゃん達に向けられた言葉です。好きとか言ってたくせに今度はスルーですか。やはり信用ならないですね。

後輩 「あ、大丈夫です。」

後輩 「頑張ってくださいね。」

何を頑張れと応援してるのでしょうか?将棋ですよね。将棋。

由早 「じゃあ、紗希棋譜お願いね。」

普通「お願いね」じゃなくて「お願いしてもいい?」じゃないですか?親しき仲にも礼儀ありですよ。しかも相手が茶園場とかなんで私が付けないといけないのか。怪訝な表情で由早を睨む。

由早 「どないしたん?紗希に指してって言ってないんやからええやろ?」

かちーんですよ。何ですかその態度は。むっとした表情に変わった私に由早は余裕の表情を向けるが、茶園場は少し動揺しているようです。

紗希 「なんですか?その言い方。」

由早 「紗希こそ何なん?茶園場君がお願いしても邪険にするくせに自分がされると嫌なわけ?」

殴っていいのは殴られる覚悟のある奴だけだ的な論法ですか?でも前提が違うじゃないですか。私と由早の関係と私と茶園場の関係それは考慮に入れて欲しいです。由早と茶園場の関係がどうなのかは分かりませんがそれでも由早にそういう態度を取られるのは悲しいです。

紗希 「論点がずれていますよ。どうしてそういう言い方になるのかを聞いているのであって茶園場さんの事は関係ありませんよ。」

由早 「ずれてないよ。そうやって自分中心に考えて回りに配慮が無いのが自分に返ってきてるだけ。」

由早も譲らず険悪な雰囲気になりつつあった。私が自己中でコミュ障なのは今まで通りでなぜ急に由早が突っ掛ってくるのか理解できなかった。

紗希 「そうですか。」

これ以上言い合いをしてもいい結果にはならないだろうと私は席を立とうとした。茶園場の視線を感じたが目を合わせない。

静臥 「南貴崎さんごめん。こんなのおかしい。」

居づらそうにしていた茶園場が急に声を上げた。もう少しトーンを落としてください。また視線がこちらに注がれるじゃないですか。

由早 「うん。じゃあどうするの?」

また私の与り知らない所で私に関係するであろう会話が進められていますね。

静臥 「金ケ崎さんごめん。やっぱり諦めきれなくて南貴崎さんに相談して、こうなんというか自然に近くにいる所から始めれたらと思ったんだけど、でも二人がもめるのは僕の本意じゃないんだ。こうなっても手に入れたい物があるんだけど、でもそれは違う気がするんだ。」

説明ご苦労様です。そして矛盾お疲れ様です。二兎追う者は・・・ですよ。でも一兎を追ったところで獲れるとは限りませんけどね。

由早 「ほらほら。よくない?」

由早は茶園場が良心の呵責に耐えかねて自らの策を吐露する展開になるのを予測していた様ですね。ほんと意地が悪い。

紗希 「良くないですよ。」

とりあえず喧嘩中なので否定で返す。

静臥 「なんかごめんね。」

私に代わり立ち上がろうとする茶園場を由早が止める。

由早 「優しいのもいいけどそれじゃ何も解決しないよ?」

余計なことをしないでください。このまま退場して頂ければまた平穏を取り戻せるのに。ここまで来ると私の由早贔屓をしても原因は茶園場じゃなくて由早としか思えない。

紗希 「由早はもっと私にやさしくしてください。」

主のいない盤の上に置き去りにされた駒を並べながらぼそりと呟いた。

由早 「やさしくしてるからこうなってるの。」

なぜか怒られてしまいました。意味が分からない。よく「あんたのため思ってやってんねんで」とか言いますがそれって自己満足じゃないでしょうか?百歩譲って「あんたのためになるかもしれないから私の自己満足でやってます」ですよね。

静臥 「じゃあ、先ず二人の仲直りが先かな。そしたら僕も頑張れる。」

正気ですかこの人。この論法で考えると私と由早が仲直りをしない事は無いので仲直り次第攻めてくるという事ですね。いい人ぶって確実に攻める口実を作るわけですね。油断ならない。

由早 「紗希ごめんね。仲直りしよ。」

私の胸に飛び込んでおいでとばかりに両手でウェルカムを表す。ほら、別に喧嘩してたけど嫌いって訳じゃないのでこうなりますよね。ひょっとしてこれも由早のシナリオ?どこまでが計算でどこまでが成行きか分からない。

紗希 「いえ、別に本気で喧嘩とかしてたわけじゃないので仲直りも何もないですよ。強いて言うなら静かにしてもらえると嬉しいです。」

苦しい言い訳をして現状回避を模索する。

由早 「もう、そんなこと言うて。」

こちらから行かないと向こうから来る。由早さんはそういう人でした。忘れてました。ハグしようとするところをひらりと躱す。こんな周囲の目があるところで辞めてください。周囲の目が無くても駄目ですよ。

紗希 「茶園場さんが元の席に戻ってくれたら仲直りしますよ。」

こちらも負けじと前提の上塗りをする。どうですか?これで攻める口実を封印できましたかね?

静臥 「これは一本取られたね。」

よし、敗北宣言いただきました。

由早 「紗希!」

もう、なんで怒られるのですか?怒られるの嫌い。

静臥 「いや、いいよ。二人がもめるのは僕の本意じゃないっていうのは間違いないから。」

その台詞さわやか気持ち悪いですね。

由早 「茶園場君は押しがたらんね。」

由早も諦めモードに入ってくれたようです。

静臥 「ははは。でも諦めたわけじゃないから。ほら今日は会話できたし。前進前進。ありがとうね。」

茶園場は席を立つと振り返らずに元の席に戻っていった。戻ると冷やかされる。そうなりますよね。そしてちらちらとこちらにも視線が向けられる。隣の後輩ちゃん達も気まずいのか目を合わそうとしない。面倒くさい。私に誰か特定の人でもいれば回避できていいのですが、そんな人いないし、いたらいたで面倒くさいし、何だか全てが面倒くさくなってきましたね。

由早 「いいと思うんやけどなぁ。」

紗希 「無いですよ。」

いいと思うんなら自分でどうぞ。押し売りはお断りですよ。

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