第15話 煩わしい日々
翌朝習慣で私は日曜日だというのに6時前に起床した。日の出にはもう少し時間があるらしく辺りはまだ薄暗い。隣のベッドでは瑞希は気持ちよさそうに寝息をたてている。ジャージに着替えて外に出ると東の空が日の出を待ちきれずに朝焼けで太陽を呼んでいた。その光景は足を止めるのに十分な美しさだった。早起きは三文の徳とはよく言ったものです。早朝の冷え切った空気の中を散歩してコンビニに着くこれと言って買うものはなかったがおでんの蒟蒻を購入して散歩を続ける。口から漏れた白い息が空気を泳ぐ。見とれているとゆらりと消え去り現実に戻された。ぐるっと一周町内を回る由早起きてるかなと部屋の方に目をやったが真っ暗なのでまだ寝ているのでしょう。蒟蒻を頬張りながら町内を一周とか不審者。家に戻ると蒟蒻を食べたばかりなのにお腹が空いていました。よし、朝ご飯を作ろう。ガッツリ系で。鍋を出し湯を沸かす。別の鍋に多めのオリーブオイルとニンニクを入れて鳥もも肉に多めの塩コショウを振って皮面から入れて蓋をする。もう一つ小さい鍋でゆで卵を作る。鶏肉を焼いている間にジャガイモの皮を剥き8ミリくらいの厚さにカットする。途中でニンニクを取り出し皮目に焼き色が付いた頃にひっくり返す。反対側も焼けたのを確認すると鶏肉の下にジャガイモを敷き詰める。ジャガイモには味付けをしなくても鳥のエキスと塩コショウですごく美味しくなります。
母上 「おはよう。お湯沸かしてもいい?」
紗希 「卵もうできているからそこ使ってください。」
ごそごそしている私に気付いた母上がコーヒーを淹れに来ました。蓋をしてジャガイモの表面に焦げ目がつくまで蒸し焼きにします。この間も鳥から美味しいエキスが供給されています。焦げ目が付くと鶏肉を取り出し一口大にカットとジャガイモの味見。火の通りも申し分なく美味しゅうございます。具材が揃ったところでお湯を沸かしていた鍋に塩と少量のオリーブオイルをたらしパスタを投入。家では瑠希ちゃんの好みで1.4㎜のスパゲッティー。この間にゆで卵を卵サラダにしてさらに法蓮草をさっと茹でる。フライパンにオリーブオイルを敷き鶏肉を肉汁ごと入れて湯がいた法蓮草と絡めさらに茹で上がったパスタを投入。ここではなじませるだけで炒めすぎない様に。電子レンジで温めた大皿に盛り付けジャガイモをトッピングし更に卵サラダを堆くトッピング。今日はこれで決まり。紗希’s kitchen。オリーブオイル結構使いましたね。
母上 「ご飯出来たよ。」
母上はパンをトースターに入れながら皆を呼びコーヒー2杯と紅茶3杯を手際よく淹れた。
瑠希 「朝からよく作ったね。あ、でも美味しいわ。」
朝から少し重めでしたが評判は上々です。鳥と塩コショウの味だけでコッテリしていないので父上も母上も沢山召し上がってくれました。お好みでレモン・ブラックペッパーをかけてもおいしいですよ。あれ?瑞希がいない。
紗希 「瑞希は?」
瑠希 「日曜日やから寝かしといたり。」
お腹へったとか言っても知りませんからね。紅茶が冷めてしまう。フォークに巻きつけて口に運ぶ。やっぱり油と炭水化物のコンボは最強。モグモグとフォークを進めていると二階からタタタと階段を下りてくる音がする。
瑞希 「おはよう。あ、朝ご飯・・・」
ほぼ完食間近の大皿を目にした瑞希に母上が無言でフォークを差し出す。瑞希はそれを不服そうに受け取りながら席に着く。
瑞希 「ありがとう。なんで起こしてくれへんかったん?」
紗希 「起こしましたよ。」
瑞希 「私が起きてないんだから起こしたうちに入らない。」
寝坊キャラのテンプレートと末っ子の我儘のコンボで勢いよく啖呵を切ったが父上に睨まれて我に返った。
父上 「人の所為にしない。」
瑞希 「ごめんなさい。」
誰も優等生瑞希さんがこんなこと言うって知りませんよね。外面最強。仕方がないので瑞希が残りのパスタを食べているうちに瑞希の為に朝ご飯を作る。トーストを軽く焼きその上から残った卵サラダを載せてとろけるスライスチーズとパルメザンをかけトースターにアルミホイルを敷いてさらに焼く。その間に紅茶を入れ直しテーブルに運ぶと瑞希の機嫌が直った。
瑞希 「ありがとう。いただきます。」
満足気に一口二口と頬張った所で何を思ったのか瑠希の追及が始まる。
瑠希 「で、昨日誰と遊んでたん?」
なんでそんなことを聞くのだろうと思考する。誰がリークしたのか瑞希は得が無いし由早、都花とも連絡が取れるとは思えない。まさか見られていた?
紗希 「由早といっちゃん達ですよ。」
だけとは言ってないので嘘ではない。
瑠希 「達って誰よ?ボーリングとかあんたらだけで行かへんやん。お姉さんにゆーてみ。」
あ、この既視感。血のつながりを実感させられますね。
瑞希 「なんで知ってんの?ついてきたん?無理。」
瑞希が瑠希を冷ややかに見つめる。
瑠希 「ちゃうわ。こーれ。」
瑠希はボウリングのスコア―シートをひらりと取り出し8人中6位の部分を指さす。瑞希さんちゃんと捨ててきましょうね。それとも谷八木との記念ですか?そうだとしてもきちんとしまっておきましょうね。
瑠希 「あと4人。隠すってことは女子じゃないよね。」
紅茶を飲んでいた父上の手が止まる。こういう時だけ鋭いですねうちの姉は。
紗希 「いえ野良PTですよ。名前も知らないので言えないのですよ。」
くだらない嘘をついてしまいました。「女子じゃないよね」に対する「いえ」の部分だけが嘘。野良は本当だと思っています。名前もうろ覚えというかそんなの覚えるくらいなら英単語の一つでも覚えたい。追及されるのは嫌です。
瑠希 「んな分けあるかい。」
ですよね。
紗希 「本当ですよ。私は知らない人達でしたし、名前も聞いたけど忘れてしまいましたし。みぃちゃんは知ってるかもしれませんが。」
瑞希にパスを出し自分は退避する小狡い作戦にでる私。そんな私を意にも介さず瑞希は堂々と説明を始める。
瑞希 「姫路に着いたら、いっちゃんとクラスメイトとその友達がいてですね、成り行きで一緒に遊ぶことになったのですよ。なので男子も居ましたが瑠希ちゃんが思っている様な事は残念ながら一切ありませんよ。」
すごい。全然違うっぽいのに嘘がない。なんか怖いなうちの妹。
瑠希 「ほんまに?嘘ついたらお父さんに怒られるで?」
今思ったのですがこの状況誰得ですか?父上の前でこんな話して機嫌が悪くなったらどうするのですか?姉の意図が分からない。
紗希 「いや、今の説明に嘘はないですよ。」
フォローを入れてみたものの説得力が無い。どうしたらわかってくれるのですかね。
母上 「瑠希ちゃん。」
母上の一言で瑠希は追求を諦めたようです。有難うございます母上。
瑠希 「ふーん。なーんだつまんない。」
沈黙を決め込んでいた父上が重い口を開く。
父上 「三人共彼氏ができたら怒らないからちゃんと報告するように。でも紗希と瑞希は卒業するまでは学業を優先しなさい。」
あ、やっぱり機嫌が悪くなっていらっしゃいますね。というか、怒られる事もあるのですね彼氏ができると。でも学業優先なのは同意です。これを免罪符に瑞希達と戦っていきましょう。
今日も今日とて電車に乗り学校に赴く。昇降口の鏡の前で身だしなみを整えているとこう言う所も痛姫って呼ばれる所以なのかと考えてしまう。確かに傍から見るとナルシストかもですね。でもぼさぼさの髪でいるのは嫌なのですよ。いつもより気持ち手早く整えて教室に向かう。すると見たことのある他クラスの男子が都花の前にいたが見なかったことにした。
紗希 「いっちゃんおはようございます。」
そして都花に簡潔に挨拶を済ませると席に着く。
宗磨 「ないわー。そしてスルースキルぱない。」
何語ですかそれ。本当に我校の生徒ですか?というか、他のクラスに入りにくいんじゃなかったですかね?目線を合わさず教室を見渡すと大蔵谷と目があったが逸らされた。学校だと内気な少年なんですね。その方が好感度高いですよ。谷八木も居ましたが彼は意中の人の挨拶さえもらえればいいみたいです。
瑞希 「いっちゃんおはよう。氶君もおはよう。」
氶太良「おはよう。一昨日はありがとうね。」
瑞希も大蔵谷をスルーするとそれは逆効果だったみたいではしゃぎだす。
宗磨 「ちょー姉妹揃ってスルーとか愛され過ぎやろ。」
もはや言っている意味が分かりません。周囲の視線を集めた日富美に冷ややかな表情の私と困った顔の都花と瑞希。
氶太良「カズ自重。」
谷八木が日富美を嗜めたところで私を見つめる視線を感じた。
由早 「お?なんか盛り上がってるね。おはよう。」
どれだけ目力あるのですか。視線感じましたよほんと。
紗希 瑞希 都花 氶太良「おはよう。」
宗磨 「あ、おはよう。南貴崎さんだけや俺に挨拶してくれんの。」
何このコミュニティの広がり。騒がしいな。静寂が好き。そうこうしているうちに教室に人が増え始める。
蒼甫 「なんか賑やかやね。おはよう。」
うわ、土曜の人たち全員揃っちゃったじゃないですか。満を持して大蔵谷が腰を上げてこちらに向かってくる。いや良いですからじっとしていて下さい。私は平常心を保つためにスマホを取り出しアプリを起動する。人が増えてきた教室で男子が絡み普段と違う雰囲気で目立たないか心配でしたが皆さんそれほど興味は無い様でよかったです。
宗磨 「紗希ちゃん何しとんの?」
この人はまた下の名前で呼ぶ。朝からイライラさせますね。無視していると近づいてくる。来なくていいのに。そして私の机に顎を載せ目線を合わそうとするが私がスマホの画面を見ているので目が合わない。
宗磨 「ごめん。俺なんかやらかした?」
珍しくしおらしく問いかける日富美に答えてあげようかと思いましたが。ここで予鈴が鳴り日富美と谷八木が退室する。
宗磨 「ごめん。また謝りに来るから。」
いやいいですよ。と口に出そうと思いましたが口にできませんでした。




