第14話 痛姫と言う二つ名
都花 「私もね、正解とかよく分からないんだ。批判されたこともあるし。でも正解を考えている時点で正解じゃないんだろうなって。」
哲学的ですね。でもその意見には賛成です。それよりも都花さんでも批判されたことあるのですね驚きです。あ、そう言えばヘラヘラの一味と思われていましたね。
紗希 「私はいっちゃんはいっちゃんのままが好きだし、由早は由早のままが好きですよ。」
都花 「へへへ。ありがとう。」
この笑顔は罪。私が男子ならストーカーになるレベル。無闇に笑顔を振りまいてはいけませんよ。
紗希 「ところで、瑞希と谷八木君はどうなのですか?」
お姉ちゃん興味津々じゃなかった心配です。
都花 「どうかな・・・仲良さそうだね。」
都花さんは本当に分かり易いですね。「どうかな」のあたりで目をそらす。そのままで変わらないでくださいね。
紗希 「なるほど、満更でも無いわけですね。」
都花 「紗希ちゃん嫌い。」
何という事でしょう。嫌われてしまいました。部屋に戻ると席替えをしたのかいつの間にか谷八木がちゃっかり瑞希の横に座っていた。都花も空いている席に座ると空気的には必然的に私の席は空いている日富美の横。しかし私は端に置いてあったスツールを移動させぼっち席を作り回避した。
宗磨 「こっち空いてんで。」
知ってますよ。
紗希 「ここの方がモニター見やすいので。」
嘘も方便。8人で歌うと一人4から5曲歌っただけでもう時間が来てしまいました。あれ?短く感じてます?私乗り気じゃなかったのにおかしいですね。会計を済ませて外に出ると辺はオレンジに染まりこの集まりがもうすぐ終わることを告げている。やっと終わるのですね。私と瑞希と由早を駅まで送るとこの集まりは終焉を迎えた。
蒼甫 「今日はありがと。また学校で。」
学校で会っても話しかけませんけどね。むしろ話しかけないでください。
由早 「またね。」
宗磨 「ええなぁ。俺も理系にしとけばよかった。」
私は助かりましたよ。
氶太良「文理関係ある?」
流石に谷八木は瑞希との関係からか少し余裕のある上からの意見ですね。
宗磨 「他のクラスって入りにくいやん。」
この人でも憚られることってあるのですね。
泰河 「カズでもそんなん考えるんや。」
正しくそれです。
宗磨 「ちょぉお前ら俺の好感度下げすぎじゃね?」
氶太良「もともと低いからええやん。」
宗磨 「やったらもっと労わろうね。」
限がなさそうなので都花に胸のあたりで軽く手を振って改札を通ると気付いた由早と瑞希が慌てて追いかけてくる。
由早 「ごめん。またね。いっちゃんばいばい。」
瑞希 「今日はありがとうね。いっちゃんまたね。」
階段を上りホームに出るとオレンジ色の空は赤と深い紫のグラデーションへと表情を変えていた。もう春の気配はそこまで来ているのに日が落ちるとまた冬の名残が辺りを覆う。ポチポチとスマホをいじっていると瑞希と由早が駆け上がってきた。
瑞希 「すぐ一人で先に行く。」
紗希 「みんなで決めればいいっていうのは数の暴力ですよ。それとも谷八木君との別れが名残惜しかったですか?」
瑞希もこう言う弄られ方は嫌いなのを知っていて煽る。大体今日の事で怒っているのは私なんですからね。
瑞希 「何の事ですか?」
逆切れですかそれ?文句がありそうな声のトーンに二人は臨戦態勢。
由早 「まぁ、今日はみぃちゃんも悪かったと思うよ。まだごめんなさいしてないし。」
もっと言ってやってください。最近瑞希が私の言う事を聞かないのでもっと言ってやってください。完全に私情。
瑞希 「ごめんなさい。」
私以外にはやけに素直なんですね。それも腹立ちますが。
由早 「はい。仲直り。」
紗希 「応援とか迷惑ですから。一人でもいいので放っておいて下さい。」
なんとなく納得のいかない私は更に噛みつくと瑞希もムッとした様子で返す。
瑞希 「由早ちゃんから聞いたんだ。そんなにモテると思ってるの?」
由早 「みぃちゃんどうしたの?」
由早も瑞希の物言いに違和感を覚えたようです。
瑞希 「私は紗希ちゃんのこと好きだよ。」
え?ここで告白ですか。姉妹でそんなのいけませんよ。でもこのパターンは振られるフラグですよね。恋敵は都花。
瑞希 「でも、みんながそうじゃないの。紗希ちゃん陰で何て呼ばれてるか知ってる?」
由早 「みぃちゃん。」
心配そうに由早が止めようとするが、私はそれを拒む。
紗希 「構いませんよ。続けてください。」
瑞希 「「痛姫」って呼ばれてるの知ってる?」
知りませんでした。でも「姫」って付くからいいじゃないですか?それだけ私がかわいいって事ですよね。ポジティブが止まらない。痛いのは自分でもわかってますし。
紗希 「それ、駄目なんですか?」
なんか二つ名っぽくてかっこいい。「繊麗の痛姫」「鍾美の痛姫」とかなんか素敵。この辺が痛い。
瑞希 「妹としては嫌かな。私にとっては良いお姉ちゃんだもん。」
そんな風に思っていてくれてたのですね。チョコ食べます?買ってきましょうか?ちょろいな私。いいお姉ちゃん。
紗希 「上ノ丸君が言ってた噂とか大蔵谷君が言ってたツンデレとかそう言う事だったのですね。」
なんとなく事態が把握できた。つんつんした態度で男子と接しお付き合いを断ってきた私は、大方お高く留まっていると思われていたのでしょう。更にオタクでコミュ障な上に痛い言動。そしてかわいさを表す「姫」の称号。あれ?あながち間違っていないですよ。でも「痛姫」って付けた人もかなりこちら側の人かと思いますけどね。はっ!痛姫の「いた」って「板」じゃないですよね。とか韻を踏んでるとかでもないですよね。それはちょっと傷つきますよ痛姫。でもその場合瑞希も板姫ですね。
紗希 「気にしてくれてありがとうございます。でも瑞希と由早といっちゃんが分かってくれてたら私はそれでいいですよ。」
由早 「紗希はそういうと思った。」
半ばあきらめ気味に由早がため息をついた。
瑞希 「紗希ちゃん。谷八木君の話は置いといて、大学行って私に彼氏が出来て由早ちゃんもいない状況なったらどうするの?」
由早と同じ説教ですか?でも谷八木は置いておかれるのですねかわいそうに。
紗希 「ソシャゲーで上位を目指す。」
由早 「駄目だから。無駄だから。」
私の回答が分かっていたのかくい気味に由早に否定されてしまいました。
紗希 「じゃあ上位になってソシャゲーで友達つくります。」
瑞希 「ほんとそういうの止めてね。やるのは良いけどアドレス交換とか無理だから。」
瑞希と由早が嫌がるのは最近SNSで知り合った男女が事件に巻き込まれるという事が続けて起こっていて私の事を心配しているからなのです。由早に至っては思考の無いゲームは時間の無駄だと言っておられました。ウニウニはセーフ?アウト?境界線が分からない。私は流されやすい性格なので心配されているのでしょうが、流されやすいのは家族と由早と都花くらいです。SNSでのナンパなんて私のIフィールドで無効化してあげますよ。
由早 「こんなに可愛くて賢いのにお馬鹿さんなんやから。」
由早に賢いとか言われると自分の方が成績良いくせにとかやっかんでしまいます。そしてどさくさに紛れて抱き付かないでください。でも可愛いとか思ってくれているのですね。寒くなって来たし、温かいし、ならいいですか。いけない、いけない流されるところでした。由早だからいいのか。ん?わからなくなってきました。
紗希 「大丈夫ですよ。それは絶対にしませんから。それとお馬鹿さんてなんですか。」
私の質問を無視してまとわりつく由早はご機嫌な様子の由早は私の頭をなでる。だから髪乱れますから。あ、瑞希と由早と私比べるとワンランク落ちますね。お馬鹿さんでした。
瑞希 「それは約束ね。話し戻すけど、これからもこういうのするからね。紗希ちゃんのためだから。」
皆私の事どれだけ心配しているのですか?あれ?デート断ったからこうなったんじゃなかったですか?だしに使われていますか?と言うか学生の本分は勉強、受験を控えて何を言っているのでしょうか?
紗希 「いえ、お気遣いなくですよ。傾向が分かっているので私が行かなければ成立しませんよ。あと来年受験ですよ。そんな事してていいのですか?」
あと貴重な休みをそんなことに使いたくないです。
由早 「それは心配ないんちゃう?」
えらく余裕ですね。足元すくわれますよ。
瑞希 「じゃあ次は勉強会にしよっか。もう皆A判定だと思うし問題ないと思うよ。」
由早 「学校で出来るし、わざわざ休日でなくていいからよかったやん。」
しまった。全然よくないですよ。学校だと逃げられないしあの空間に知らない人が入ってくるとか私のスクールライフの危機じゃないですか。休日は救われましたが。この人たちやるって言ったら絶対やるから嫌い。
紗希 「皆A判定ですし開催はGW以降でいいですかね。」
懇願の表情で少しでも延命措置をお願いします。
瑞希 「今月中だよ。」
にっこりと返す妹には慈悲という言葉を教えてあげたいです。
紗希 「相手の都合とかあるじゃないですか。」
由早 「紗希本気でいってんの?あの子らが断るはず無いとゆう思考にいたらんかな?」
そうですね。無理にでも都合合わせてきそうですね。詭弁でもなんでもこの状況を打開したいのですよという思考には至りませんかね。何か言い返そうと思ったタイミングでホームにアナウンスが流れる。「間もなく6番乗り場に・・・」
由早 「じゃぁこの話はここまでな。」
機を逃しました。何を言っても聞いてくれそうにないのでしょんぼりしていると由早がフォローを入れてくれる。
由早 「勉強会でよかったやん。余りしゃべらんでええし。」
紗希 「そういう問題じゃないですよ。」
消えそうに呟いた私の返事は騒がしい電車のブレーキ音にかき消された。
最寄駅に着くと太陽は本日の仕事を終えその役目の一部を街灯へと移していた。今日は由早の塾もないので久しぶりに一緒に帰ることになった。黙って歩いていると静寂を嫌った瑞希が沈黙を破る。
瑞希 「そんなに嫌?」
紗希 「そりゃもうですよ。」
瑞希 「じゃぁ席は紗希が決めていいってのはどう?」
これが彼女なりの譲歩でしょうか。開催はゆるぎないのですね。でも席を決められるのは悪くない。女子と男子を固めて男子から一番遠いところに私を配置すればいい。あ、瑞希の横は谷八木を配置してあげますよ。気遣い。
紗希 「全員分決めていいのですか?」
私一人分だけ決めても仕方ないですからね。確認が必要。
瑞希 「由早ちゃんいい?」
由早 「私は良いよ。」
瑞希 「いっちゃんは大丈夫だと思うからいいんじゃない?」
男子に決定権はないのですね。
紗希 「途中で席替えとかなしですよ。」
瑞希 「疑り深いなぁ・・・」
慎重と言ってください。石橋を叩いて割って「ほらね。危なかったでしょ。」って言いたい性格です。と、二人きりのいつもより少し賑やかになった所で由早とお別れの場所に到着した。
瑞希 「またね。」
瑞希の挨拶に由早はハグで答える。だから何人ですか?
由早 「ほら紗希も。」
由早に引っ張られ三人でハグすることに。これ絵的にどうなんですか?唯々諾々いつの間にやら私が挟まれる形に。
紗希 「苦しい。」
ぺちゃんこになっちゃいそうです。元からですよとか突っ込みはいらないですよ。
由早 「よし。みぃちゃんと紗希補充完了。じゃばいばい。」
満足した由早に解放されて元気に玄関へと走って行った。すぐそこなので家に入るまで見送ると私と瑞希も家に着いた。




