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3:出会い

「いってぇぇぇ!」

「おい、大丈夫か!?」

「てめぇ何しやがんだよ!」


 教会の敷地内で少年たちが騒いでいる。一人は腕を押さえて地面にうずくまり、残りの二人は警戒するように眼前の少年を睨んでいた。


 六歳のカイン・ヴェルフォードは、子供とは思えぬほど落ち着いた態度で冷やかに彼らを見返している。しかし、それもすぐ得意げな笑みに変わった。


「だから、遊び相手なら俺がなってやると言ったんだ」


 カインは小脇に抱えていた分厚い本を芝生に置いて、その合間にちらりと背後の少女を顧みた。銀髪の幼い少女は教会の外壁に寄り添い、肩を震わせてしゃがみこんでいる。顔や手は土で汚れ、少女の足元には小石が散乱している。

 どうやら目の前の少年たちに石を投げつけられていたようだ。一瞥して少女にケガがないことを確認すると、カインは再び少年たちに向き直って挑発的な笑みを湛えた。


「ケンカがしたいんだろ? 俺が相手になるよ。ケンカといくさは大好きだ」


 そう告げてカインがゆったり両手を広げると「調子乗ってんじゃねぇ!」と一人が叫び、それに続いて彼らは一斉に襲いかかってきた。


 だが結果として、彼らはカインにかすり傷一つ付けられず完膚なきまでに叩きのめされた。泣きじゃくりながら撤退していく子供たちに手を振り見送ってから、カインは背後を振り返る。


「大丈夫か? ラミナ」


 名前を呼ばれた少女は、先ほどまでの怯えた顔が嘘のように破顔してカインに飛びついた。


「ありがとう、カイン!」

「前にいくつか魔術を教えただろ。あれで撃退すればよかっただろうに」

「人に向けて魔術を使うのは……抵抗があって」


 弱々しく述べられた理由にカインはため息をつく。そんな気弱だと私の悲願はいつまで経っても叶わないんだがなぁ……。

 どう対処するべきか思案するカインの胸中など知る由もなく、ラミナが上目遣いで首を傾げる。


「カイン、また魔法を教えてほしいんだけど、ダメ?」

「……いいぞ」


 カインは小さくため息をつくと、結局具体案も出ぬうちに思考を放棄して頷いた。彼女を立派な魔術師にする事が目的のカインにとって、ラミナが勉学に意欲的な点はむしろ喜ばしい。ここで下手に断って彼女のモチベーションを下げる事態だけは避けたい。

 胸中で様々な思惑を巡らせつつ、カインは芝生に置いていた革装丁の古書を手に取り近場の木に腰を下ろした。その隣にラミナも嬉々として寄り添う。

 カインが手にしている本は、彼が近くの魔導図書館から夜中に無断で拝借した書籍のうちの一冊である。術式の構造や原理、属性について記された入門編のようなもので、この世界の魔術知識を得るのにカインも重宝した。そしてそれをたまにラミナにもまた貸ししている。


 まさにこの魔導書こそ、カインがラミナに興味を抱くきっかけとなった代物であり、彼がラミナに肩入れする最大の理由だった。


 膝の上で本を開けてカインが淀みなく記載された内容を解説し、その横でラミナが本とカインを交互に眺めて楽しそうに耳を傾ける。

 それはいつしか日課となり、静かな教会の裏庭で二人は毎日のように魔導書を読み合うようになった。


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