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戦慄のクオリア  作者: 音無砂月
新章 トライゾン決着編

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63/69

嵐が到来

 時間は少し遡る。

 藍華がまだコアと対話をしている時、クリミネルは震撼していた。

 「何?どうしたの?」

 訓練場に居た心愛、夜無、彰、伯明はクリミネル内での警報を聞いた。エデンに移り住んでからはサウロンの強襲はなく警報を聞いたのは実に二年ぶりだった。

 別の部屋で訓練をしていたゼフェル、イスファーン、ルルーシャ、いずなも警報を聞いていた。

 「まさか強襲?」

 「直ぐに指示が来るはずよ」

 珪を探しに行っていた蒼空は木の上に居る珪を見つけた。声をかけようとした矢先、エデンに近づく奇妙な艦隊を見つけた。

 珪も気づき、木の上に立ち上がり船を凝視した。

 「何処の船だ?」

 蒼空が訝しんでいると胸につけたアイリスの花からコントロールルームから指示が来た。

 『白鬼隊、ソルダは全員直ぐにコントロールルームへ集合。各主任は会議室へ。残りは其の場で待機』

 アイリスの花から聞こえた隼人の声はいたって冷静だったが僅かに怒気を孕んでいるのが分かった。





 コントロールルームに居た職員、そして隼人は眼前の画面が映し出す船を見つめた。

 「何処の船か分かりますか?」

 「少しお待ちを。今拡大します」

 和枝はまだエデンから少し離れている船の画像を拡大させた。船の側面には黒い獅子と其れを守る様に獅子の前で重ねられた二本の剣が描かれていた。

 「・・・・トライゾン」

 呟かれた隼人の言葉に誰もが驚愕した。

 「通信はできますか?」

 「試してみます」

 和枝が通信を試みると何の弊害もなく簡単に通信はできた。

 『わたくしはトライゾンの女王テレサ・マックフェイスです』

 「日本国総理大臣、篝隼人です。何が目的で我々の国に近づくのですか?」

 『大臣?わたくしはとても大切な話があるのです。日本国の国王をお呼びいただけますか?』

 何を言っているんだと叫ばなかった自分を褒めたくなった。誰もが戸惑ったように隼人を見つめた。其れも其のはずだ。そもそも日本に国王は居ない。強いて言うのなら総理大臣が其れに匹敵する。そんなことは諸外国にとっても周知の事実だ。そんなことも知らないのかと隼人は呆れながらもそれを出さず見せかけでも誠意のある対応をするように心がけた。そうすることで早々に帰って欲しかったのだ。

 「我が国に国王はおりません。敢えて言うのなら私が其れと同等の権限を賜っています」

 『嗚呼。そうなのですね。其れは失礼しました』

 返ってくるテレサの声に恥というものは感じられない。

 「其れで何用ですか?」

 『我が国の白鬼隊を預かっていただけている日本国に感謝と知らなかったこととはいえトライゾンが日本国へ進軍したことへの謝罪をしに参りました』

 「預かっている?失礼ないながら我々は白鬼隊を預かっているわけではありません。行き場がないという彼らを引き取ったんです。ですから彼は既に総理である私が守るべき大切な民です」

 だから『返せ』と言われても返しませんと隼人は遠回しに言っているのだ。だが『まぁ、お優しいんですね』と能天気な声が通信機から返って来たので隼人の言い分が正しく向こうに通じたのかは微少だ。

 其れに隼人としては優しさではなく日本奪還の為にも白鬼隊の戦力は欲しいのだ。何が何でも渡す気はない。

 「其れともう一つ、先程『謝罪』と言っていましたが其れは二年前に書面にて受け取っていますが」

 ただ隼人を始め日本の殆どが受け入れているわけではない。ただ此れ以上揉めて戦争に発展しても損害しかないので表向きは受け入れたという形を取っているだけだ。

 『ですが、書面ではやはりわたくし達の誠意を感じられないと思うのでこうして参った次第です』

 職員全員が嫌悪に等しい感情をトライゾンの女王に抱いた。

 ソルダと白鬼隊のメンバーがコントロールルームに集まるのを横目で確認しながら隼人は通信を続けた。

 「必要ありません。此方は既に受理しています。わざわざサウロンがいつ何処に居るかも分からない危険を冒してまで一国の王が来ることではありません」

 『まぁ、心配してくださるなんてお優しいのですね。其れにわたくし達がしたことを赦して下さるなんて』

 赦してもなければ心配もしていない。さっさと帰れと隼人は言っただけだ。だが、どうも此の女王には通じない。

 「ご理解いただけて何よりです。此れであなたが此処に来る理由はなくなったのでお引き取り下さい」

 『いいえ、わたくしお願いもあって来てのです』

 ピキリ。と、隼人だけではない。職員、其れに途中から来て二人の会話を聞いて何となく内容を察したソルダのメンバーの額にも青筋が立ち、白鬼隊はただ困惑した。

 「お願い、ですか?」

 部屋の温度が氷点下になる勢いで静かな怒りを発した隼人。普段のメンバーなら其れで恐れを抱くが今は怒りのあまり其れを感じることができる人間は白鬼隊以外には居なかった。

 だが、通信相手には其れが通じない。『はい』と一際嬉しそうな声が聞こえて来た。女性の声に此れほど不快を感じたのは隼人は此れが初めてだった。

 『黒崎藍華さんに会わせて頂きたいのです。彼女のソルダとしての資質はとても素晴らしい。是非我が国の国賓として招きたいのです』

 ドンッと隼人の背後で大きな音がした。怒りのあまり蒼空が拳で壁を殴ったのだ。おかげで拳をめり込ませた壁が凹んでいる。修理費は幾らだろうと隼人は頭の片隅で考えた。

 そんな余裕ができたのは彼が立てた大きな音で集中力がいったん切れたからだろう。もっとも彼にはそんな意図はなくただ感情のままに振舞った結果だ。

 「申し訳ありませんが、彼女は我が国の大事な戦闘要員。そうやすやすと他国へは行かせられません。以前のように片道切符だけ渡されても困りますから」

 藍華はトライゾンに誘拐された。そしてトライゾン側はひたすら藍華を自国の利益の為に利用し、日本に帰す気は一切なかったのだ。其のことを隼人は匂わせた。ただ鈍感な女王に其れが通じたかは不明だ。

 『では会わせて頂けますか?お話がしたいのです』

 「申し訳ありませんが彼女は戦闘で疲れています。国賓の相手をさせるぐらいなら休ませてあげたいのです」

 隼人は藍華が昏睡状態にいることを隠し続けるつもいりだ。わざわざ教えてやることでもないからだ。

 隼人の言葉はとても丁寧だが内容はとても辛辣になっていく。他国とはいえ相手は国賓だ。失礼な態度は控えた方が良いのだが隼人を止める者は居ない。

 『空いている時でいいのです。なんなら戦闘にトライゾンも力を貸します』

 「お断りします。足りていますので。我々は二年前に故郷を追われましたが他国に力を借りる程衰えてはいません」

 『そうですか。ならば他に何か』

 「いりません」

 隼人はテレサが言い終える前に言った。

 『そういうわけにはいきません』

 「いけよ」よ隼人は心の中で突っ込んだ。思わず出そうになる溜息を何とか堪えて隼人はテレサの言葉を聞く。

 『わたくし達は黒崎藍華さんに会いたいとお願いしているのですから其れに見合った誠意を見せるのは当然です』

 「誠意ですか?ならお引き取り下さい。私達はあなたがたにそういった誠意を求めてはいません。其れに彼女と会わせる気もありませんので尚更必要はないです」

 もはや言葉を飾るつもりはない。

 「お引き取り下さい。我々はあなたがたトライゾンの上陸を許可しません。無断で此れを犯した場合は捕縛します。其れに捕縛する前に国民に見つかった場合あなたの身を保証はできません。分かりますか?此のエデンであなたは我々に殺されても文句を言えない立場にあるんです」

 『ですが、先程は』

 「謝罪を受け入れたのはあくまでもあなたに早く帰ってもらいたいからにすぎません。其れに謝罪すれば全てが清算されると本気で思っているなら恥を知りなさい!とにかくあなたの上陸は認めません。此れは最終忠告です」

 そう言って隼人は通信を切った。

 「何よあれ!」あれがトライゾンの女王なの!何が謝罪よ!」

 いずなは通信が切れたのを確認すると怒りのあまり叫ぶように言った。目には涙が浮かんでいた。

 「タカは死んだのよ。黒崎も舞子も目覚めないまま。此の先も続いたかもしれない人生をアイツらは私達から奪い去ったのよ」

 そう言って泣くいずなを蒼空は優しく抱きしめた。

 「あの」

 申し訳なさそうにする白鬼隊に隼人は優しく笑いかけた。

 「君達の責任じゃない。申し訳ないけどソルダと白鬼隊には暫くの間クリミネルに泊まってもらう。外出も制限するよ。其々の部屋で待機をしておいて。もし何かあれば其の都度指示を出す。

 コントロールルームの職員は其のまま艦隊の監視を続けて。私は会議室に行ってくる」

 「はい」

 全員が隼人の指示を受けて動き出した。頼もしい仲間に笑みを浮かべ隼人は此れからのことを考えながら会議室へ向かった。

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