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戦慄のクオリア  作者: 音無砂月
新章 トライゾン決着編

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62/69

黒崎藍華は闇の中

 暗い闇の中に居た。

 底の見えない闇の中に体がゆっくりと沈んでいく。

 恐怖はない。

 自分がもう誰なのかも分からない。

 どうして此処に居るのか、此処が何処なのかも分からない。

 そうして私の体は一度砕けた。

 まるで硝子が砕けるように私の体も心も砕けたのだ。

 そして再び再構成された。

 出来上がった『私』という存在はやはり闇の中に堕ちていた。

 けれど、先程とは違う。

 闇の中に光が見えた。

 光を放つ球体を私は自分の体で包み込んだ。

 温かかった。其処で初めて私は自分の体がひどく凍えていることに気がついた。


 <藍華>


 誰かの声がした。其れが誰の声かは分からなかった。


 <藍華>


 藍華?

 其れは誰のこと?


 <君のことだよ、藍華>


 私?


 <そろそろ目覚めの時だ。藍華>


 目覚め?

 分からない。あなたは誰?


 <我はコア。君であって君でないもの>


 球体から強い光が放出した。声は其の球体から聞こえた。

 闇の中だったはずなのに私はいつの間にか光が満ちる世界に居た。

 けれど、其処は何もない白い空間だった。

 球体が放つ光が闇を退けたのは分かった。闇がなくなった其処は何もない『場所』とすら言えない所。

 右も左も上も下も分からない。

 地に足がついてるのかも分からない。


 此処は何処?


 <此処は君の中>


 こんな何もないところが?


 <そうだよ>


 どうして私は此処に居るの?


 <自分を守る為に力を使いすぎた。其のせいで君の心はコアの力に飲み込まれた>


 何か大切なことを忘れている気がした。

 力を使いすぎた?何の?

 思い出そうと努力するとわずかに頭が痛んだ。でも、我慢できない痛みではなかったので続けてみた。

 すると、何もない白い空間に映像が流れた。

 此れは?

 そうコアに問う前に自分の過去だと理解した。

 理解した瞬間、痛みと悲しみが私を襲った。

 胸が痛くて、心が痛くて、体が痛くて涙が止まらなくなった。


 <さぁ、目覚めよう藍華。君はもう十分眠った。そろそろ目覚めの時だよ>


 コアの指示に従い私は意識を浮上させた。

 目覚めて最初に見たのは白い天井。なんだか懐かしいと心なしか笑みが零れた。

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