黒崎藍華は闇の中
暗い闇の中に居た。
底の見えない闇の中に体がゆっくりと沈んでいく。
恐怖はない。
自分がもう誰なのかも分からない。
どうして此処に居るのか、此処が何処なのかも分からない。
そうして私の体は一度砕けた。
まるで硝子が砕けるように私の体も心も砕けたのだ。
そして再び再構成された。
出来上がった『私』という存在はやはり闇の中に堕ちていた。
けれど、先程とは違う。
闇の中に光が見えた。
光を放つ球体を私は自分の体で包み込んだ。
温かかった。其処で初めて私は自分の体がひどく凍えていることに気がついた。
<藍華>
誰かの声がした。其れが誰の声かは分からなかった。
<藍華>
藍華?
其れは誰のこと?
<君のことだよ、藍華>
私?
<そろそろ目覚めの時だ。藍華>
目覚め?
分からない。あなたは誰?
<我はコア。君であって君でないもの>
球体から強い光が放出した。声は其の球体から聞こえた。
闇の中だったはずなのに私はいつの間にか光が満ちる世界に居た。
けれど、其処は何もない白い空間だった。
球体が放つ光が闇を退けたのは分かった。闇がなくなった其処は何もない『場所』とすら言えない所。
右も左も上も下も分からない。
地に足がついてるのかも分からない。
此処は何処?
<此処は君の中>
こんな何もないところが?
<そうだよ>
どうして私は此処に居るの?
<自分を守る為に力を使いすぎた。其のせいで君の心はコアの力に飲み込まれた>
何か大切なことを忘れている気がした。
力を使いすぎた?何の?
思い出そうと努力するとわずかに頭が痛んだ。でも、我慢できない痛みではなかったので続けてみた。
すると、何もない白い空間に映像が流れた。
此れは?
そうコアに問う前に自分の過去だと理解した。
理解した瞬間、痛みと悲しみが私を襲った。
胸が痛くて、心が痛くて、体が痛くて涙が止まらなくなった。
<さぁ、目覚めよう藍華。君はもう十分眠った。そろそろ目覚めの時だよ>
コアの指示に従い私は意識を浮上させた。
目覚めて最初に見たのは白い天井。なんだか懐かしいと心なしか笑みが零れた。




