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戦慄のクオリア  作者: 音無砂月
新章 トライゾン決着編

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此れからの方向性

 翌日、クリミネルに珪以外のメンバーが集まった。

 伯明に確認を取ったところ会議室は今日、使う人間はいないということだったので会議室に集合することになっていた。

 「アイツが居ないけど」

 いかにも不機嫌そうに一世が言った。

 彰は苦笑しながら「一応声はかけてたんだけどね」と答えるが結果は御覧の通り。

 彼の手綱を引っ張るのはなかなか難しいようだ。

 「此の時点でアウトだろ」

 一世の言葉に反論できない。でも、珪だけは彰ではなく他のメンバーもどう接していいのか分からないのだ。

 初めて会った時から彼は何処か壊れていた。

 ひたすら戦いを好み、血を好む。憑依されているとはいえ元は人間なのに、彼らを平気な顔をして殺す。

 今はもう憑依した人間を殺さなくてもいいようになっている。

 憑依された人間は捕獲して特殊な機械にかける。時間はかかるけれど其れでもゆっくりと憑依を解くことができるようになったのだ。

 此れもサン・グラールを分析し、科学班が新たに作り上げたリベレーションという機械のおかげだ。

 「取り合えず、今できることをしよう」

 気を取り直して彰は全員の顔を見た。

 「俺達にはコンビネーションが足りていないって話だったね」

 「うん。でも、具体的にどうする?」

 「訓練ではコンビネーションでの戦闘はやっている」

 「でも、できてないから毎回蓮城さんに怒られているよね」

 彰、心愛、イスファーン、ルルーシャは訓練の時のことを思い出し、落ち込んだ。訓練では確かにできてはいなかった。

 「けっ。どのみち無理なんだよ。白鬼と手を組むなんて」

 一世は再び白鬼を睨みつける。

 「其れ以前の問題じゃない」

 「どういう意味だ」

 怒気を孕んだ一世の目を、しかし夜無は怯むことなく見返した。

 「だってソルダだけでもできていないもん」

 「其れは、そうかもしれないね」

 彰は直ぐに賛同した。心愛は「そうかな」と考えている。頭を使うのが苦手な心愛は戦闘中は戦うことに夢中になり周りが見えていないのでそうなのか分からなかった。

 因みに、周りが見えていない時点でチームワークがダメだということには気づけなかった。

 「どうだろ、此処で一つ提案があるんだけど」と言い出したのはイスファーンだ。

 「元敵同士でお互い打ち解けるのにまだ時間はかかる」

 殺し、殺されの関係だったのだ。幾ら二年が経ってもそう簡単には蟠りは解けない。

 「なら一層ソルダはソルダ。白鬼隊は白鬼隊で分れて訓練するってのは」

 「つまり、ソルダはソルダだけで、俺達は俺達だけでのチームワークを高めようってことか?」

 確認の意味を込めてゼフェルが聞いた。

 其れに対しイスファーンは大きく頷く。

 「無理にチームになろうとしたって亀裂が生じるし其れこそ些細なことで破綻するだけだと思う。どうだろ?」

 イスファーンは全員に視線を配り確認した。

 「そうだね、いいかもしれない」

 彰は暫く考えてから賛成の意を示した。

 「俺もそっちの方が有難いわ。お前らなんか信用できねぇからな」

 一応、一世も賛成のようだ。

 「鬼塚君、ずっと別々で戦うわけじゃないよ。最終的には全体でチームプレーができるようにするんだからね!私も賛成だよ」

 心愛も賛成を示し、夜無は無言で頷くことで賛成を示した。ルルーシャとゼフェルも賛成を示したのでとりあえずは其の方向性で行くことにした。

 方向が決まったところで会議は終了だ。

 みんな其々に家に帰ったりする中で夜無だけは会議室に残っていた。意味があっての行動ではない。特に予定もなく、だからと言って家に帰りたいわけでもなかったので残っただけだ。

 「あら、アンタ一人?」

 「・・・・いずな先輩」

 「話し合いはどうなったの?」

 「私達が何の話し合いをしていたのか知っているんですか?」

 「まぁね。アンタらの顔を見れば其れぐらい分かるでしょう」

 普通は分からないと思う。いずなはそういうところ勘が鋭いと密かに夜無は関心していた。

 「先輩が此処に来たのは私達の様子を見に来たんですか?」

 「まぁね。方向性が決まらないなら先輩風吹かせてアドバイスでもしてやろうと思ったけど必要なかったみたいね」

 「どうでしょう。方向性は決まってもみんな向いているところがバラバラなままです」

 「だろうね。私達だって必ずしも同じ方向を向いていたわけじゃない。其れにアンタ達はまた特別難しいと思うよ」

 「どうしてですか?」

 「失ったものが大きすぎた」

 「・・・・そうですね」

 トライゾンの命令でも白鬼隊が私達から家族や友人、あったはずの日常を壊したのは事実。そして私達の世代ではないけれど、ソルダが彼らの仲間を殺したのも事実。

 仕方が無かったこととはいえ、起こった過去はなかったことになはらない。芽生えた悲しみや憎しみは消えてはくれない。

 「でも、憎み続けることで生まれるのは絶望だけですよね。私、そんなのは嫌です」

 「そうね。でも、きっと乗り越えられるよ。アンタらなら」

 「はい」

 「其れで、一応聞くけど此れからはどうするの?」

 「ソルダはソルダに、白鬼隊は白鬼隊だけで取り合えずチームワークを高めようってことになりました。まず、私達は其処からもできていないんで」

 「確かに。まぁ、其処らが妥当かもね。頑張んな」

 「はい」

 そんな二人のやり取りを蒼空は会議室の外から聞いていた。彼もなんだかんだ言ってセカンド世代のことを気にかけていたのだ。

 だが、自分やいずなが出るまでもなく取り合えずではあるが方向性が決まったのなら何も言う必要はないので会議室に入ることなく彼は訓練場へ向かった。

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