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戦慄のクオリア  作者: 音無砂月
新章 トライゾン決着編

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あれから二年

 トライゾンが日本に侵略し、日本はサウロンの住まう国と化した。逃げ延びた日本人は全員エデンと呼ばれる場所に移住し、其処で世界で今何が起こっているかが国民全員に知らされた。さすがに大々的にサウロンが闊歩した上に祖国を離れるという異常事態に記憶操作をするよりも真実を明かしたほうがいいとなったのだろう。最初こそ混乱し、子供を勝手にソルダとして戦わせていたこと、戦わせていた親に対する批判は凄まじかった。だが、徐々にサウロンとの戦いを目の前で見せられてると悲しことに仕方がないという結論に達し今では誰もが受け入れている。

 クリミアでは篝隼人が自ら指揮を執っている。誰の意図かは定かではないが何故か議員の古だぬき共は全員生きて日本を出ることはできなかった。彼らはシェルターには向かわなかったのだ。

 そう、シェルターがあると知らされていた場所にシェルターがなかったのだ。だが、其の事実を知る者はいない。ただ一人を除いて。

 とにかく、日本を離れてあれから二年が経った。

 エデンは最初の方こそ何もなかったが今ではすっかり見違えている。

 家ができ、お店ができ、小さいが神社のようなものもある。全て篝隼人の指示によるものだ。

 そして、新たにソルダとなったのは末守彰、壬生心愛みぶここあ佐久間夜無さくまよな鬼塚一世おにづかいちよ白牙珪はくがけいの五名だ。彼らはセカンド世代と呼ばれている。

 二年前、隼人の命令でトライゾンに潜入していたコウが持ち帰った情報で作られた新薬、遺伝子抑制剤と肉体強化剤の服用を義務付けられている。更に彼らにはコア移植の際、コアの負荷制限に成功している。其の代わり、ファースト世代よりも能力が乏しいというデメリットも抱えているが彼らは五〇歳まで生きることが理論上は可能となった。

 「アンタ、また此処に来ていたのね」

 「いずな先輩」

 「黒崎が今のあんたを見たらきっと『立派になった』って言うと思うよ、末守弟」

 「先輩の俺の呼び方、変わりませんね」

 「当たり前よ」

 「こっちは二年でいろんなことが変わったのに」

 末守弟こと彰は特殊な機械に入れられ、眠り続ける藍華を見つめた。

 二年前のあの日、藍華を救出する前に研究所が爆破された。其れでも助けに行こうとしたいずなと蒼空は伯明と夏帆に無理やり止められて、研究所を出た。生存は絶望的と思われた。

 でも、生きていた。

 「あの日のことは今でも鮮明に覚えているわ」

 燃え盛る炎の中、金色に光る何かがあった。直ぐに伯明達が消火活動に当たった。残っていた研究員は爆発で全員死に、そうでもない人は既に逃亡した後だった。

 そんな中で藍華と当時は分からなかったが、後で教えてもらった国境の虎を呼ばれているブルーマ将軍の二人を守る様に透明な壁ができていた。其れが光を放っていたのだ。分析の結果、其れが藍華のエヴァンジルによるものだというのが判明した。

 藍華のエヴァンジルにそういった性能はない。だが、あの時、確かにエヴァンジルは藍華と将軍を守る為に本来なら有り得ない性能を発揮したのだ。おかげで藍華の遺伝子は完全に書き換わり、性質上藍華は人間ではなくなっていた。其れが藍華にどんな影響を及ぼすのか、今もこうして眠り続けることと関係があるのか其れさえも不明だ。

 「どうして藍華さんのエヴァンジルだけが特別なんでしょうか?」

 「特別ではないわ。もし特別があるのだとすれば其れは黒崎の方よ」

 「どういう意味ですか?」

 「コアは人の強い思いに応えてくれる。思いが強ければ強いほどコアは其の分を叶えようとする。何故ならコアは自分自身でもあるから」

 「俺達にも可能なんでしょうか?」

 「セカンド世代のアンタらはコアの能力を予め制限されているからね、できるかどうかは分からない。でも仮にできたとしてもしない方がいい」

 「どうしてですか?」

 「神山鷹人は其の過程で死んだ。仮に成功しても黒崎と同じになるだけよ」

 其の言葉にはいずなの苦悩が感じられた。

 人ではなくなっていく仲間。誰かを守ろうと、其の為に欲した力のせいで短くなる寿命。いずなはそんな仲間の背をずっと見続けてきたのだ。普通の精神では無理だ。いずな先輩はとても強い人だと彰は思った。

 「今はトライゾンから逃げた白鬼も要るから戦力は私達の時よりも多いし、一人ひとりの負荷は少ないから無茶しなくても大丈夫。私も、命続く限り戦い続けるから」

 そう言っていずなは部屋を出て行った。恐らく藍華とは違うが同じ植物状態になった仲間の元へ行ったのだろう。

 一人になった彰は藍華を見つめた。

 トライゾンには多くの白鬼隊が居た。研究所が爆破され、白鬼隊が実は年端も行かない子供で身寄りがないと知った女王は大層怒り、彼らの自由を保障した。だが、保障されたところで彼らに行き場などなく仕方がなくエデンで引き取ることにした。

 因みに厚かましくもトライゾンの女王はサウロンを駆逐する為に黒崎藍華の協力を依頼してきてはいるが此方には其れに応じる気はない。

 隼人は優しい言葉で、しかしきっぱりと拒絶している。トライゾンの仕打ちを考えれば当然ことだ。

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