第一〇章 侵略Ⅲ
蒼空に車椅子を押してもらい、いずなは病室のベッドの上に戻った。「抜け出すなよ」と釘を刺して蒼空は病室を出る。いずなは再び一人になった。
足がない。足がないのなら戦えない。足手まといにしかならない。
<足が欲しいか?>
自分の内部から響くように他人の声が聞こえた。此れがコアの声かといずなは驚くこともなく受け入れた。
<戦う為の力を欲するか>
「欲しい」
いずなの言葉に迷いは無かった。
<代償は付き物だ>
コアは言う。いずなの覚悟を試す様に。
<其れでも力を欲するか>
「欲しい」
<もう、戻れなくなる>
其の言葉にいずなは笑った。
「何処に戻るって言うの?此の世界はとっくに壊れていて、子供に戦わせないと生存する難しくて、だから全部の気持ちを押し殺して戦って、なのに誰も守れなくて、おまけに同じ人間に襲われて、ふざけんなって話だよ。
自分じゃない誰かが中に居る時点で私はもう人間じゃない」
今更人間であることに執着する理由は無い。人間だから守れない。守る為に邪魔なら人間性だって捨ててやる。
いずなの覚悟をコアは感じた。
<傲慢だね。でも、そういうの嫌いじゃない。いいよ。君に足を上げる。でも、かかる負担は大きい。前線で戦うのは避けた方がいい>
「分かった」
<じゃあ、足を再生させるよ。足を再生させて直ぐに歩くのは禁止。少なくとも今日一日は安静にしてね。神経とか繋ぐのに時間がかかるし、体に馴染むのに其れぐらいはかかる>
「分かった」
失われた左足の再生が始まった。足から膿が出るような不快感と猛烈な痛みがいずを襲った。骨や神経ができているのか感覚では分からなかった。痛みで其れどころではなかった。




