第八章 休息Ⅴ
一方男側のテントでは。
「女子はうるせぇな。何の話をしているんだ」と蒼空が不機嫌そうに女子テントがある方を見る。
「女の子だから恋話じゃない?」と鷹人が言うと彰がどことなくそわそわしだした。
もし本当に恋話をしているのなら藍華の好きな人の有無が分かるということだ。
「彰君は気になるんだ」
「え?いえ、別に」
鷹人は持ってきていた本から視線を逸らし、ニコニコと人の好い笑みを浮かべていた。
「藍華ちゃんなら好きな人は今のところいないよ。特別に親しくしている人は居るけど」
何気ない鷹人の言葉に彰は分かりやすいぐらい落胆した。其の様子を見ていた蒼空は初対面なのに好きな奴がバレている問題はどうでもいいのだろうか、と疑問に満ちた目で彰を見た。だが、落ち込んでいる彰が蒼空の視線に気づくことはなかった。
「彼、面白いね」と、鷹人は蒼空にだけ聞こえるように言った。
人の好い笑みで二歳年下の小学生をからかう鷹人は弟ながら絶対に敵に回したくないと蒼空は改めて思った。
「でも、付き合っているとかじゃないし。其れに特別って言っても恋愛に発展しているわけじゃないから彰君にもまだチャンスはあるよ」
「本当ですか!」と喜ぶ彰。素直でとても良い子だ。だからこそ鷹人が余計に黒く見える。でも、そんな二人の様子を見て引き気味になっている蒼空の反応も計算づくで鷹人は面白がっているのだと、聡い彼が気づくことはなかった。
王道ばかりではあったが一行の初めてのキャンプはこうして幕を閉じた。
此の時はまだ今のメンバーが全員揃う未来が既にないことを誰も知らない。




