第六章 共闘Ⅶ
刀を持つ葉の手に自然と力が入った。
「俺を殺せー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!っ」
バクは大剣を振り上げた。彼の眼から涙が零れた。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
葉は持っていた刀前に突き出した。ずぶりと、刀が人の体内にどんどん入っていく。腹部を突き破り、内臓を傷つけながら刀はバクの体を貫通した。刀を持っていた手も顔も噴き出る血が汚していく。
自分の体から血液が流れるのをバクは感じていた。まるで体内から外界に命が流れるように体温が下がっていく。
死は虚無で恐ろしいものだと思っていた。けれどバクの目には最愛の妻と息子が映っていた。彼らが其処に居るはずがないのに。
幻でもいい。最期に会えて良かった・・・・・・。
「・・・・・スーシャ、リースリー直ぐに、帰るからな」
ずしりと葉にバクの体重がかかった。バクの顔は笑っていた。彼は笑って死んでいけたのだ。
葉はゆっくりと刀を抜き、バクを地面に眠らせた。
「・・・・・高岡君?」
離れた所で一部始終を見ていた藍華に視線を向けた葉の顔は笑っていた。体を震わせ、目には涙を溜め。
「僕、僕が殺した」
殺さなければ殺される。そんな恐慌状態を抜けきった葉は血にまみれた自分と横たわるバクを見て、罪の重さに震えた。
「僕が殺した」
人間を。昨日まで一緒に過ごし、言葉を交わした仲間を。我が身大切さに殺した。
「よせ、止めなさい」
葉は持っていた刀の刃を自分の首に押し当てる。恐怖に満ちた藍華の顔が見えた。
藍華は動かない体を無理に動かし葉の元へ行こうとした。けれど、体は動いてはくれなかった。
「・・・・・て。動いて。動きなさいよ。私の体でしょっ!私の言うことを聞きなさい」
けれど体は動いてはくれない。葉はゆっくりと刀を手前に引く。涙を流し、己の犯した罪に恐怖しながら、其処から逃げる為に彼は首から大量の血を引き出させる。
「・・・・・いや。いやぁぁっ!!!!!!」
乾いた大地に命を奪われた四体の亡骸が転がる。藍華は誰も助けられなかった。
「どう、して」
まだ動けない体を今度は藍華触手のようなものが捉える。巨大なサウロンのコアだ。コアが藍華を取り込もうと藍華の体に手を伸ばし始めた。
だが、藍華の視線はまだ仲間に向けられていた。
犠牲があるから救いがある。
そう、最初に言ったのは誰だろう?
間違ってはいない。でも、正しくもない。
誰も救えず、犠牲だけが転がる未来もあることを此の日、幼いソルダ達は知ることになった。




