第四章 仲間Ⅳ
そんな彼らと諦めそうになる自分を鼓舞する為に伯明は持ってきたロケットランチャーをぶっ放した。弾がなくなるまで何度も攻撃をした。すると、ラ・モールの体が傾いた。
ロケットの勢いに体勢を崩したのだ。だが、其のまま倒れてくれるほど巨大化したラ・モールは優しくはない。持っていた鎌を薙いだ。伯明は受け身を取ってギリギリで攻撃を躱した。
「蓮城さん」
「攻撃が全く効かないわけじゃねぇ。一つの攻撃で足りねぇなら全員でかかれ。俺達は一人で戦っているわけじゃないんだ。此処に居る全員が味方だ。其れってすげぇ頼もしくないか」
何て根拠のない自信。けれど、折れそうになる心に光が差した。此処まで連戦で来ている。体力的にきつい。特にエヴァンジルで肉体強化されていない伯明達は。其れでも笑う彼に負けられないとソルダ達はラ・モールを見据えた。
「ムカつくぐらい格好良い」とぼそりと呟きながら花壇の上で寝ていた蒼空が戻って来た。頭から血は出ていたが数分で止まった。こういう時、ソルダの回復力は有難い。
『此方コントロール。コアは左胸にあります。可能であれば回収をお願いします。』
「無理を言うな。生き残るだけで精一杯だ」
『ですから、可能な限りですよ。其れと黒崎指令の指示で其方にミサイルを送っています。到着まで一〇分。持ち堪えてください』
「蓮城了解」
「十鳥了解」
「黒崎了解」
「桜井了解」
「「神山了解」」
とは言ったものの正直きつい。でも、やるしかないだろう。
「一斉攻撃だ」
伯明と夏帆は車に積んでいたロケットランチャーや手榴弾でラ・モールに攻撃を続ける。一体、あのおっさんはどんだけ武器を持って来たんだと半ば呆れながらも頼もしい上官に後押しされるように蒼空と鷹人はラ・モールにエヴァンジルを左胸に突き刺し、蒼空は左に鷹人は右にエヴァンジルを引く。すると、ラ・モールに僅かだが穴ができた。
ラ・モールは耳障りな叫び声をあげた。流石に傷口を開かれるのは痛いようだ。初めて攻撃が効いたことを喜んでいる暇もなく今度は開いた傷口を目がけていずなの放った種が飛び込んできた。
「芽吹け」
入って来た種は十発以上。太い幹のようなものが傷口から生え、閉じない様に固定をする。蒼空と鷹人は其れを確認すると直ぐにラ・モールから離れた。代わりに藍華がラ・モールにラ・ポールを突き刺す。
「マレディクシオン」
ラ・モールが暴れ、藍華は地面に叩きつけられるように落下した。
「黒崎、大丈夫」
いずなが直ぐに駆けつけたが藍華に怪我はなかった。咄嗟に受け身を取り、ダメージを外に逃がしたのだ。藍華の身体能力の高さにいずなは感服した。
「多少は効いているみたいね」
藍華が見上げた先には左胸を中心に石化し、苦しみから逃れようと暴れるラ・モールの姿があった。けれど、以前のように体の全てを石化するには至らなかった。
ラポールの力をもっと最大限に開放すれば。そう思った時、藍華の中に存在するコアからストップがかかった。
<止めた方がいい>
何故?
<本物の化け物になる。人間にもう戻れなくなるよ。ただでさえ、君は此方側に足を一歩踏み込んでいるんだから>
どういう意味?
<意外と鈍いんだね。其れとも知らないふりをしているのかな。普通の人間は怪我をなかったことにはできない。治すには時間が要る。どんなに些細な傷でもね>
・・・・・
<其れに、君は前よりも傷の再生が早くなっている。我々に近づいている証拠だ。
ねぇ、藍華。ねぇ、此の世界は君が其処までする価値があるのかな?我が思う限り君は世界に執着していない気がするけど。
ねぇ、藍華。君はこうも思っているんじゃないの?こんな世界滅んでしまえばいいのにって。
あははは。歪だね。君はきっと誰よりも我々に近い存在だ>
どういう意味?
コアは其れ以上何も言ってくれなかった。
「黒崎、戦っている最中に何をぼうっとしてんのよ」
「コアと話していた」
「コアと?ふぅん。私はまだ話したことがないけど」
「たまに話しかけてくる」
「そんなの全くないよ。存在は認識できるけど、もしかしたら会話するのに何かの条件が要るの?」
「さぁ」
『此方コントロール。ミサイルが間もなく其方に到着する。全員避難してくれ』
胸につけたアイリスから勝成の声がした。
「勝成、蓮城だけど、ミサイルじゃあサウロンは倒せねぇぞ」
『問題ない。あのミサイルはコアを大量に積んでいる』
「コアを?」
『まだ開発中だから何処まで攻撃が効くか分からんが、ミサイルの形をしたエヴァンジルだと思ってくれ』
「了解。全員、避難だ。近距離系の蒼空、鷹人、藍華ちゃんは先に下がれ、俺となっちゃん、いずなちゃんで前衛を支援」
「「「「「「了解」」」」」」
全員が避難をし終わった後、ミサイルが投射された。一瞬だった。ミサイルがラ・モールに直撃した瞬間、何もかも吹き飛ばすような爆風が武蔵野を覆った。
太陽が地上で爆発したような光の攻撃で公園の遊具は全て破壊された。子供達が笑いながら遊んでいた日常を簡単に吹き飛ばしてしまった兵器に恐怖と助かった喜びの混じった複雑な気持ちを抱えながら藍華達は任務を終了し、本部へと帰還した。




