昔の恥と今の照れ
もし待っていてくださった方いらっしゃいましたら申し訳ありません、大変長らくお待たせいたしました、今度もいつになるかわかりませんが気長に
お待ちください、お願いします。
幼い頃、己の足で歩いた記憶はほとんど無い。
足が不自由だったとか、幼かったからとかそんな理由ではない。
幼い自分は、人形の様に小さくか細い手足しかもたぬ貧相な子供だった。
それを家族は心配し、同時に愛らしいと、自分をことさら大切に扱った。
詰まる所幼い頃の自分は、家族から溺愛され、どんな近い場所を移動するのも、
家族の腕に抱かれていて、己の足で歩く必要が全くなかったのだ。
それは家の中だけにはとどまらず、外に出歩く時も同じだった、父か兄たちに抱え
られた自分を召使や領民たちは当然の様に、誰一人「若様」と呼ばず、
「姫様」とか「お嬢様」と呼んだ、そのことを父や兄たちも当然の様に聞いていたの
で自分自身自分の呼び名はそれで正しいのだと思っていたほどだ。
考えてみればとんでもない事だが、当時の自分は父や兄たちだけでなく使用人や
兵士に至るまでが、自分を抱き上げて移動させるのが当然だとばかりの行動をとって
いた上に、母は母で5人もの兄の後でか細い末息子には何かいたずら心を持ってしま
ったのか、城にある代々の子供たちの衣装から女の子の物ばかりを嬉々として着せて
いたのだ。
はっきり言って物心ついた頃には完全に娘として扱われていたと思う、兄や父と
湯船につからなければ、自分は女だと思い込んでいたかもしれない、実際あまり付き
合いのない他の地域の領主などが訪ねてくると娘だと思い込まれて、うちの息子の嫁
に…などと言う話は何度かあって、その度に父が苦笑いしながら、魔力の弱い子ゆえ
健康に成人するための願掛けで娘のかっこうをさせていると、苦しい言い訳を繰り返
していた、ちなみに本当にただの言い訳であるのは、客人が返った後父がよく母に
せめて男の子の格好をさよう、と話しているのを聞いたので間違いない。
ただそれで、男の子の格好をさせられたことはほとんどない、1日2日その恰好を
していても、家族全員の「華がない」と言う嘆きで、結局ドレス姿に戻ってしまって
いた。
そんなことで将来婿の行き手があるのかと心配する母方の祖父母に対し兄たち全
員が、声を大にして。
「「「「ディアは嫁にやらん!!」」」」」
と叫んでいた。
先見の目があったのか、軽い弟狂いだったのか、判断に苦しむ所である。
そしてそんな生活が7歳まで続いた、言い換えれば7歳で終わってしまったのだ、
父と兄達の戦死と言う形で…。
魔力の弱い、脆弱で、家族の愛情だけに守られてきたできそこないの6男坊は否応
なしに次期領主と言う立場に立たされ、今まで受けた事も無いような教育を受けさせ
られ、騎士としての訓練に放り込まれた、さらに母は地元では甘えが出るとばかりに
父の友人である隣の領主に自分を預け、徹底的に鍛え上げてくれと頼みこみ、後に
師父となる領主もしっかりとそれを聞き入れた。
そうして彼のもとで、勉学と修行にはげみ、12歳の時領主となり、同時に師父で
ある隣の領主の娘を妻に迎えた。
優しく美しい年上の妻と伴侶と息子たちの死で一気に老け込んでしまったような母
ひいては、自分と言う領主に不安そうにしている領民の為、必死に領主の仕事をこな
し、子にも恵まれれば、領内で自分を姫様と呼ぶ者はいなくなっていた。
気付けば自分は、抱き上げられ守られる存在から、抱き上げ、守り、愛しむ存在にな
っていた。
だからもう2度と自分は抱き上げられ、愛しまれる事は無い、…幼い頃の自分が
寂しそうにそう感じた気がした。
夢から覚めた後、悶絶したい恥ずかしさを感じたのは初めてだった。
人生を振り返っているだけの内容だったはずなのに、いい年をした男には消したい
出来事の多すぎる過去である。
なぜこんな夢を…などと考える必要もない、原因などはっきりしている。
「ディア?どうした?」
己の背にそっと触れる熱に思わず全身がビクリとはねた。
「……何でも無い。」
「さっき起きるなり、ばたばたと動き回って、今も顔を真っ赤にしている人間のどこ
が何でも無いの、良いからせめてこっちを向いてくれないか?」
そう言って、強い腕に方向を変えられれば目の前に、美しくも凛々しい蒼き王が微
笑んでいる。
思わず見とれて頬にそっと手を伸ばせばその手を大きな手が包み込み、そっと唇が
落とされる、その姿の神々しさと恥ずかしさで、またぞろ顔が熱くなってくる。
「おはようディア、今日の調子はどうだい?」
「おはよう、…すまない、今日も立てそうにも無い。」
申し訳なさそうにアルフディアが答えれば、クスリと笑って抱き寄せられる。
「それは良い事を聞いた、じゃあ今日も一日こうやってディアと一緒に居られる。」
そう言って、膝に乗せられ額に唇を落とされるのを、動かない体でワタワタと抵抗
するものの、ろくに力の入らない体では、抵抗と言ってもたかが知れている、それを
楽しげに眺めるジルフォートを軽く睨み。
「レイいい加減にしろ。」
と言えばまた楽しげな笑い声と共に唇が触れ合う。
お互いの真意を知って三日、アルフディアはジルフォートの大量の魔力による魔力
酔いから今だに回復できずにいる。
魔力酔い自体は珍しい症状ではない、ただ魔力が弱ければ弱いほど、その症状は
酷くなり、最悪生まれてすぐの幼児が亡くなる事例は後を絶たない。
だからこそ、生まれてすぐのアルフディアを見た瞬間、母は絶叫し泣き叫んだと言
う、五人もの子を産もうとも、腹を痛めて産み落としたばかりの我が子が余命幾ばく
も無いかもしれないという事実に、母は耐え切れぬとばかりに泣き叫んでいたらしい。
しかし、彼女の絶叫に慌ててやって来た隣の間に控えていた医師により、診断を受
ければ、確かに魔力はほとんど無いが、魔力酔いにより亡くなる程魔力耐性は弱くな
く、むしろ外気からの魔力をうまく循環させて、健康そのものに育つだろうと言われ
ると、今度は安堵のあまり泣き崩れたそうだ。
ただそれでも、急激に大量の魔力を浴びれば普通の者より魔力酔いが酷くなりがち
で、幼い頃は5日6日寝込むことも珍しくはなかった、大人になり魔力自体は殆ど
上がらなかったものの、魔力耐性はさらに上がり、今ではめったに倒れるようなこと
は無くなっていたが、さすがに国一番どころか近隣諸国でも類を見ない魔力の持ち主
である王が相手では、久しぶりに重い魔力酔いを味わうことになってしまったのだ。
普通にしていても治りそうにない重い魔力酔いの為、現在アルフディアは魔力酔い
の原因であるジルフォートに常に魔力循環を調整してもらわなければいけない状態な
うえ、最初に魔力酔いを起こさせた魔力が、澱の様にアルフディアの体内に残り続け
ている為、彼から離れられない状態なのだ。
ジルフォートはその状態をこれ幸いとばかりに、アルフディアを片時を離さずこの
3日共に過ごしている、もちろん執務や謁見もこなしてはいるが、常にぐったりと
王に寄り掛かる怪しげな存在に皆気もそぞろになっているのが容易に感じ取れるので
はっきり言って周りには迷惑極まりない存在だろう。
「レイ、私の事は寝ていれば済むのだから、色々な場所に連れ歩くのはやめてくれ。」
今日もまた、執務室まで連れて行く気でいるジルフォートに抗議すれば、心外だと
ばかりに顔を覗き込まれ。
「ディアは俺と居たくない?」
と尋ねてくる真剣な表情に思わず見とれそうになりながら。
「そんな事あるわけない、でも皆困っているだろ?その…。」
必死に言い返すものの、思い出せば思い出すほど恥ずかしい状況に言葉を濁せば、
クスクスと笑いながら。
「俺の膝に乗って俺の手から食事を取らされたり、執務中はずっと膝枕で寝かされて
いたり、歩くのもままならないから俺に抱き上げられて運ばれるのが恥ずかしい?」
それとも侍女たちの前で二人で湯に入る事?そうじゃなければ後は…。
「もういい!!全部だ!本当に恥ずかしいんだ!頼むからせめて私室の中だけにして
くれ!」
とんでもなく恥ずかしい事を楽しげに語る男に絶叫を上げて止めに入れば、
「かわいいな。」
とキラキラした顔でうっとりとこちらを眺めてくる、恥ずかしい事この上ない。
「と…とにかく、私たちがこんな風に、べたべたしていると他の者達が気が散って
仕事にならないだろ?その…もう少し自重しよう。」
とにかく言わねばいけない事を言い切れば、クスクスと笑いながら。
「ディアの侍女たちは気にしてないみたいだけど?むしろ楽しそうだし。」
と言って扉近くの壁際を見るのでそちらを見やれば、目を爛々と輝かせ、満面の
笑みでこちらを見守るマリヤ達を見てしまい、アルフディアはハアっと気の抜けた
ため息を漏らした
その子たちは例外だ…。
心の中だけでそう呟き、解ってて容認しているジルフォートを睨んだ。
男ばかりの学び舎に放り込まれたせいでおかしな嗜みを身に着けてしまった彼女達
が悪いわけではないが、これを家臣の基準の様に言うのはやめろと言いたい。
ただし言っても無駄なので言わないが。
言ってもジルフォートは全く気にしない、むしろ構い方が激しくなるだけだし、
マリヤ達はそれを見ておかしな事を叫びながら、瞬きもせずその様子を観察…ではな
く見守ってくるので、自分が不利になるだけなのだから言わない方がよいに決まって
いる。
ちなみにここ数日は、体調不良を理由に大広間での食事を辞退しているので、あの
100人の姫君達がどう思っているのかは知らない、…まあ、予想は出来ているが。
刺客が送られてこないだけでもありがたいが、娘を宮中に送り込みたい大臣達の
視線が痛くてかなわない、唯一妾妃を送り込んでいる公爵もことあるごとに睨み付け
て来てうっとうしい事この上ない。
何よりも思うように体の動かない、今の状況が一番つらい。
「レイ…本当に勘弁してくれ、こんな生活をしていては体が鈍ってしまう、もう荒
治療でもよいから、一気に魔力を循環させてくれ。」
7歳から今まで、畑仕事と剣の鍛錬を欠かさずしてきた身にはこの生活は苦痛なの
だと訴えれば、彼の王は実に不満そうな顔で人の髪を玩んでくる。
「つまらないな…、俺はもっとディアとべたべたしていたいのに。」
ディアが冷たいと拗ねてみせるが、自分より大柄の男を早々甘やかしてはやれない。
「ちゃんと体調を戻してくれたら夜に好きなだけべたべたさせてやる、だからさっさ
とどうにかしてくれ。」
基本彼に触れられるのも抱き合うのも嫌どころかうれしいので体調さえ戻してくれ
れば一切文句は無いのだ、そのことを言えばプルプルと打ち震えた、若者が襲いかか
ってきた、止める間もない上に気持ちいいので、されるがままにしていれば、さらに
興奮して。
「今日は職務を休む!」
とのたまうので、渾身の力を振り絞ってベットから蹴りだした。
「ディア!何するんだ、俺じゃなきゃ骨が折れてたぞ!」
「馬鹿なことを口走るからだ、俺の夫を名乗りたいのなら真面目に働いてこい、俺は
そんないい加減な人間を伴侶にする気は無い。」
抗議の声をバッサリと切り捨てれば、うっと声を詰まらせ目をさまよわせる。
魔力酔いで腕を上げるのさえも苦慮する中でも、まじめに書類仕事をこなし、後宮内
を取り仕切っているアルフディアにそう言われては返す言葉を出てこないジルフォート
に嫣然と笑いかけ。
「そのかわり、今日も真面目に職務を果たせば夜はうんとよくしてやるよ。」
そういうやゆっくりとした動作で、若き王の額に唇を落とした。
かくして若き王はおものすごい勢いで王妃の居室から出て行った、きっと今日は
大いに仕事がはかどるだろう。
苦笑して見送るアルフディアに、きらきらとした目のままマリヤ達が。
「お見事ですわ。」
と小さく手を叩いてる。
アルフディアは苦笑したまま、彼の王の単純さに感謝した、まあ夜はつらくなるだ
ろうが、家臣たちに迷惑をかけるよりはましだろう。
思えば若かりし頃、同じようなことを妻にも言われて嫌な職務も必死にやった記憶
がある、…男と言うのは総じて単純にできているらしい。
そうして、久しぶりにひとり静かに止めの王妃としての職務をこなしていれば、エル
ゼミアとマリアンヌが訪ねてきて、お茶会と言う名の休憩となった。
「すみません、わざわざ来ていただいても、こんな不調法な姿で…。」
困った様に言うアルフディアは未だ魔力酔いから解放されていないため、ソファに
深々ともたれ掛り未だに顔色も思わしくなかった。
「いいえこちらこそ申し訳ありませんわ、陛下がお一人で執務に出られたとお聞きし
たので、てっきりアルフディア様の魔力酔いも回復したものと思いこのように押しかけ
て来てしまって。」
「陛下もせめてもう少しアルフディア様のお体を整えてから行かれればよいのに。」
二人の妃が申し訳なさそうに、王に愚痴るように言うので、アルフディアが苦笑し
ながら。
「いえいえ、いい加減にしろと部屋を一人で出させたのは私ですのでお気になさらず。」
と言えば、にこやかに。
「「おめでとうございます。」」
と言われる、何のことかと困った様に首を傾げれば。
「よかったですわ、子供も産めない私と結婚してまで妻にと望まれるなんて、本当に
アルフディア様は陛下に愛されていらっしゃるんですね。」
とマリアンヌが爆弾発言をしてくるぎょっと目を見開き、次に思わず周囲を探るが
本人はのんきに。
「大丈夫ですわ、王宮内で私が止めの妃を娶る為に王妃の座を与えられただけの人間
だという事は知れ渡っていますもの、これでも先王の第二王女ですのよ?子を産めな
いという事も皆知ってますわ、だからこの年までのんびりと王宮内で王女でいられま
したのよ?じゃなかったらとっくにジルが適当な国の王子か公爵家にでも嫁がせてま
すわ。」
コロコロと笑う彼女はさらに、子を産めない半端者と、中途半端な王位継承者、
微妙な立場ゆえに、ジルフォートが生きるためにいろいろ画策しだした頃からの盟友
だと微笑んだ。
「尼僧院に行くより楽だろうと今の立場を用意してくれたので、ありがたく収まらせ
て頂きましたの。」
これで従弟が万が一、思い人に振られたらどうしようかと内心かなりハラハラして
いたと言われては、何も言えない。
しかしそう言う事情ならおめでとうと言われてもおかしくないだろうが、はてエル
ゼミア妃はどうしてだろうかと顔をむければ、困ったような顔で実は…と話し出す。
「私が此方に遊学中に祖国の兄が父を謀殺して王になってしまって…それだけならう
ちの国では時々あることで問題は無いのですが、問題は兄がひどい身内狂いだという
事ですわ…。」
エルゼミアの言葉に、アルフディアは思わず顔をしかめた、身内狂い、しかもそれ
が問題だと言うならばかなりの重度の身内狂いのはずだ。
「お察しの通りですわ、兄は自分の生母も含め兄弟姉妹全員を自分の後宮に入れてし
まいましたの、混乱する他国の隙をついて嫁や婿に行っている兄弟達までさらって
自分の後宮に入れてますわ、国外に出ている兄弟はもう私一人で…このままでは遠か
らず我が国は滅んでしまいます、だから今反乱を起こしている騎士団長達が勝利し
国が安定するまでと言う密約で、私も形ばかりこちらの国で王妃を名乗らせていただ
いてますの。」
ちなみに一番の想い人は実父である王だったが、強く拒絶され勢い余って殺して
しまったらしい、だから父の妻であった実母とその血を分けた兄弟たちに固執するの
だと言われ、正直ぞっとした。
ちなみに自分の実母以外の妃たちはすべて王宮から追放してしまったというから
おそらく筋金入りの血族狂いなのだろう、実際今一番寵愛されているのは実母と三人
の同母弟妹達だという、そして殺してしまった王を魔法で腐敗処理し毎晩同じ褥で
血族と睦合い眠っているらしい、と聞いてはもはや恐怖以外何も感じない。
そんな状況ではいつ教皇の名のもとに征伐隊が編成されてもおかしくないという状
況に危機感を覚えたエルゼミアの婚約者である騎士団長が周辺諸国に丁寧な親書を
送りどうか手を出さないでほしいと確約を取り付けてからの反乱で、さすがにどの国
も手出しこそしないが反乱軍を支持しているらしい。
「そういう事情ですので、今国には戻れませんし、婚約者のロベルトとも一切連絡が
出来なくて、だからお二人の事がちょっぴりうらやましくて、でもいつも厳しいお顔
ばかりしていた陛下が幸せそうで嬉しくて。」
だからおめでとうございますなんです。
とにこやかにいうエルゼミアをアルフディアはとても強い姫だと思った。
「できれば、貴方のような方が陛下の本当の妃ならばいろいろ安心なのですが…。」
そう、茶化すように言えば、彼女はクスリと笑い。
「あの方の妃は私では荷が重すぎますわ、謹んでアルフディア様にお譲りいたします。」
そう言って笑うエルゼミアはやはりとても強い意志を感じさせる娘だった。
そうして二人とも不快な話をしたと詫びてきたが、色々知っておいた方がよい話だ
ったので、よく話してくれたと礼を言えば、小さく微笑みを返された。
そうして、そこから仕切りなおされたお茶会は和やかに過ぎていった。
「俺だけ頑張らせて三人だけ楽しそうだな。」
時間を忘れてしゃべっていた…三つ子の魂百までとはよく言ったもので、幼い頃の
育ち方が育ち方なので乙女の会話に違和感なく溶け込んでいたアルフディアは、王が
来たことに今の今まで気が付いていなかった、三人がびくりとして振り向けば何故か
目の下に隈をこさえて壮絶な笑みを浮かべる、猛々しき蒼き王の姿…三人とも真っ青
になって、立ち上がり礼をすれば、虚ろな瞳がアルフディアを捉える。
「陛下…あの…。」
ひきつった笑みで、なんとか言葉を紡ごうとするがうまくいかない。
「ディア、行くよ。」
それだけ言うとジルフォートがずるずるとアルフディアを浴槽へと引きずり込む、
「レイ!?まてまだ、エルとマリーが!」
あわててそう叫んだが、それがまずかった。
ぴたりと足を止めこちらを振り向いたジルフォートの目が爛々と光っている。
「そう、愛称で呼ぶくらい仲良くなったの、俺以外の人間と。」
しまった…。
そう思った時には遅かった、家臣や使用人はぎりぎり許せても、同じ立場の異性は
絶対に許せなかったらしき王に引きずられ、アルフディアは浴室へと引きずり込まれ
た、後ろをちらりと見れば友二人が「「がんばってくださいませ!」」と小さく応援
してくれている。
ここでアルフディアは腹を決めた。
元々、今日はそれなりの覚悟はしていたのだ、ならとことん付き合って、甘えて
甘やかして、ジルフォートが満足できるまで付き合おう、明日起き上がれなくとも
知るものか、とりあえず機嫌を直して三人でお茶をする許可だけもぎ取ればそれで良
い、大体妻同士が仲良く茶を飲んでいるだけで不貞を疑われるなど業腹だ、亡き妻と
彼以外に捧げる操なんぞ持ち合わせていないのに、そこもきっちりわからせて絶対に
謝らせてやる、だから明日の事なんて考えず全身全霊で目の前の男を籠絡してやる。
決意を固めた銀の麗人、うっそりと微笑み蒼き王の身体に腕をまわした。
後日、納得いかない表情ながら、しぶしぶ王妃たちのお茶会の定期開催を許可した
若き王と、にこやかにほほ笑む狸な麗人の姿があった。
二人の王妃はそんな二人にお似合いだと笑いあった。
そんな二人の婚礼は実はまだ半年も先の事。
軽い身内狂い→重度のブラコン、シスコン、ファザコン、マザコン、ジジコン、ババコン、とりあえず身内が一番嫁にはやらん!
身内狂い→変態、手を出す気はない、でも変態、多分家庭内ストーカー。
重度の肉親狂い→近親相姦までいってる、というか身内しか愛せない、それ以外は全部敵!ぐらい本気でおもってる。