ごめん
オレは、てっきりリョウは、茜と付き合っているのかと思っていた。
しかし、リョウの彼女は…全く知らない人だった。
オレたち三人は、同じ高校なのに、リョウの彼女は別の高校だ。
どうやら、バイト先で知り合ったのだとか。
茜は?
茜は…どうなったんだ?
リョウに聞いてみた。
すると、
「茜は、幼馴染だ」
って真顔で言ってきた。
幼馴染だけど…
茜って…リョウが好きなんじゃないの?
茜は、大丈夫なのだろうかと心配になり、茜のクラスをそっと覗きにいってみると、窓際で友達と楽しそうにきゃっきゃと笑っていた。
窓際だからだろうか。
笑顔がとてもキラキラしているように、オレにはうつる。
全然大丈夫そうじゃん。
その日の帰り道、偶然前に茜が歩いていた。
この前のこと、まだ怒ってるかな?
ちょっと様子見のために、話しかけてみた。
「おっす、元気か?」
と。
すると、茜はムスッとしてオレをジロリとみたあとに、
「あーあ。辛い、辛いなぁ」
って辛くもなさそうに言ってきた。
「なんだよそれ…辛いんだか辛くないんだか、わかんねーよ」
「辛いよ。だって…わたし…いまさらだから言っちゃうけど、ほんとは、好きだったんだからね。どう責任とるつもりよ」
…
じっとオレをみつめる茜。
…
仕方なくない?
それは、オレじゃなくてリョウにいうべきでは?
水族館三人で行ってたら告白成功したかもとでも?
「ごめんなさい。オレには、責任とれないです」
「ふーん、ひどいな…てかさ、聞かせてよ。ごめんなさいの理由を」
…
理由か…
オレには、関係ないから?
それとも…
理由は…
…
「やっぱり、そういうのって…なんだろうな。オレにもよくわかんねーよ。でも、茜は…よく頑張ったし、これからもいい出会いがあるはずだよ」
「うん、そっか。ありがとう」
珍しく茜は、しおらしかった。
それからしばらくした、夜の十時。
茜から電話がかかってきた。
「あの…寝れない」
そんな電話は、はじめてだった。
もしかしたら、いつもはリョウにこの電話をしていたのかもしれない。
でも、リョウは彼女がいるし…茜は、リョウにフラれてしまったのだから、なおさら電話なんかできないし、辛いのだろう。
「いいよ、電話するか」
「ありがとう…あのさ、ごめんね。」
「なにが?」
「だって…本当は、迷惑だよね…」
「そんなことは、ない…けど」
「優しいな…時也は…グズっ」
ん?
「茜?泣いてる?」
「うっ、ううん。そんなこと…ないよ?へへ…」
茜は、昔からそうだ。
強がる時は、必ずへへって笑うんだ。
「いいぞ」
「…へっ?」
「泣いていいよ。オレが今日だけ受け止めてやるよ」
「複雑ー……でも、ありがとうね。」
幼馴染同士だから複雑?
まぁ、いい。
泣きたきゃ泣けばいい。
ためたらためただけ、あとで心が取り返しつかないことになりかねないからな。
「恋愛ってさ、両思いならドキドキして、キュンとかあるけど、そんないっつもピンクとか赤い恋愛ばっかりじゃねーよな」
「うんっ…グズっ…」
「茜は、…次はさ、黄色よりの恋をしなよ」
「どんなよ…」
「黄色よりの赤って茜色なんだよ。知らない?」
「へえ、知らなかった。」
「まさか、時也からそんなアドバイスもらえるとか思わなかったな。てか、わたしってさ…しつこいよね…」
「そう?」
「うん…わたし、時也が幼馴染でよかった。幼馴染じゃなかったら、ヤバい人だった。てか、幼馴染だからって、甘え過ぎだよね。」
「そんなことないんじゃない?」
「ほんと?」
「うん。」
「優しい…やっぱり優しいよ…だからこそ、余計に辛い」
「なんでだよ…こういう時こそ、頼っていいだろ」
…
「うんっ…グズっ。あのね、もう電話しない。でも、今日だけ寝落ち電話がしたい」
…
「寝落ち電話か。……正直、そんなことしたことないけど…まぁ…やってみる?」
「うん。わたしさ、時也の声も好き。ずっと…ずっと聞いていたいくらい落ち着くの。」
「声もってなんだよ」
「だって、好きになるっていっぱいが重なってミルフィーユみたいにギュッてなって恋の濃い重なりになるんでしょ?」
「ほう…。」
…
ん?それは…ん?
なんか、オレのこと…好きみたいに聞こえんじゃん。
あれ?
今…リョウのこと言ってる?
ん?
どういうこと?
だれの声が好きで、なにがミルフィーユ?
…
「あれ?茜って…」
リョウに失恋したんだよね?って、聞けるわけない。
てか、オレ…のこと…
…
え?
でも、オレはフッてないし…なんなら告白するつもりは、これっぽっちもない。
好きだけど、茜とはつきあわない。
そう決めている。
だから…
だから、深掘りしないほうがいい。
このまま、目をつぶって…
そのまま…
なんか、茜とくだらない会話したりして…
恋の話からズレて、くだらない会話から…
…
⁉︎
気づいたら、オレ…寝てた⁉︎
「あっ…茜?」
シーン
通話は、繋がったままだったけど、茜も寝てるっぽい。
「おやすみ」
小声でおやすみを言って通話を終わりにした。
次の日、茜はちょっとだけ目が赤かった。
そして、学校の廊下ですれ違うときに
「昨日は、ありがとう。わたし、夢で時也におやすみっていわれて、すごく幸せだった。だからもうあんなことしないね。じゃあね、ありがと」
と微笑んだ。
オレは、やっぱり知らないうちに茜をフッたんじゃないかって思う。
あのときの、軽いノリの…
わたしなんかどう?ってやつがほんとうの告白だったとしたら…
そして、オレがないって軽く返したのが、茜を苦しめていたんだとしたら…
だったら、今すぐ茜の手をひいて、オレも好きだって言いたい気持ちは、少しある。
でも、それはいうべきじゃない。
だって、オレは…
オレは…
ムリなんだ。
ごめんな、茜。
続く。




