温かな二人
「……ねえ、ハンス。どうかしたのかい?」
「……へっ?」
「……今日は、何だかいつもより元気がない気がするから。遠慮せず、何でも話してごらん。僕達がちゃんと聞いてあげるから」
「……グランダッド」
その日の宵の頃。
オークの香りが仄かに漂うダイニングにて、スープを掬っていたスプーンを止め、心配そうに僕へ問いかける少し皺のある白髪の男性。五年くらい前にパパとママが天国へ行っちゃった後、ずっと僕を大切に育ててくれている僕のグランダッドで。そして、彼の隣では少し皺のある白髪の女性――彼と同じくずっと僕を大切に育ててくれている僕のグラニーが、同じく心配そうに僕を見つめていて。僕としては、あまり表面に出さないようにしてたつもりだったんだけど……やっぱり、分かっちゃうんだね、二人には。……あっ、ちなみにグランダッドはおじいちゃん、グラニーはおばあちゃんのことで……うん、いったい誰に説明してるんだろうね。……まあ、それはともあれ――
「……その、やっぱり僕じゃ、魔法使いになんてなれないんじゃないかな、って思ってて」
そう、俯きつつ口にする。グランダッドの言う通り、僕が元気のない理由はというと……今日、ユリアさんに言われたことがずっと心に残っているからで。尤も、僕が無能なのはいつものことだし、それでクラスメイト達から嘲笑われるのもいつものことだけど……でも、こんな僕に対しても、ユリアさんはきっとただの一度も嘲笑うことはなかった。そして、もちろんそれは僕だけじゃなく誰に対してもで……まあ、そもそも僕以外に対しては嘲笑うところがないんだけども。
だけど……そんな優しい彼女だからこそ、今日のお言葉は紛れもなく本心からで、だからこそいっそう鋭く僕の胸に突き刺さっていて……うん、そうだよね。とっくに分かっていたことだけど、僕があの場所にいるなんて相応しいはずがな――
「……大丈夫だよ、ハンス」
「……グランダッド」
「ハンスは、とても優しくて頑張り屋の子だから。だから、いつか必ずなれるよ。パパとママのように、たくさんの人を助けてあげられる素敵な魔法使いに」
「そうよ、ハンス。だから、貴方は今のままで頑張ればいいの。私達は、いつだって貴方の味方だから、安心して」
「……グランダッド、グラニー……うん、ほんとにありがとう、二人とも」
一人沈んでいた僕に、木洩れ日のような笑顔で慰め励ましてくれるグランダッドとグラニー。そんな二人の優しさが、鬱々としていた心の中にじんわりと広がり満たしてくれる。……正直、自信はない。それでも……二人がそう言ってくれるのなら、もう少しだけでも頑張ってみようと思える自分もいて。




