自分の気持ち
「――どうだったかな? ハンス。ユリアさんとのお出かけは」
その日の夜のこと。
柔らかなオレンジ色が灯る食卓にて、柔らかな微笑でそう問いかける白髪の男性。そんな彼の隣には、同じく柔らかな微笑を浮かべる白髪の女性が。僕のグランダッドとグラニーで。ちなみに、グランダッドはおじいちゃん、グラニーはおばあちゃんのことで……あれ、以前も言ったかな? これ。まあ、それはともあれ――
「……うん、すっごく楽しかったよ」
「そうかい、それは良かった」
「そうだね、ハビー。本当に楽しかったことが、ハンスの笑顔からも伝わってきて私達も嬉しいよ」
僕も微笑み答えると、とても嬉しそうに笑ってくれるくれるグランダッドとグラニー。ちなみに、ハビーとは奥さまが旦那さまを呼ぶ時の愛称の一つで、グラニーはいつもグランダッドのことをそう呼んでいて。一方、グランダッドもグラニーのことをワイフィーという愛称で呼んでいて。こういう呼び方一つ取っても、改めて二人の仲の良さが伝わり僕までほのぼのとしてしまう。
さて、お話を戻すと……うん、ほんとにすっごく楽しかった。図書館で一緒に勉強したり、一緒に雑貨屋さんも見て回って、なんとお互いにプレゼントを贈り合ったり。……まあ、あの一時だけ重い雰囲気になっちゃったけど、その後は和やかにカフェでお話ししたり――
「……ところで、ハンス。無粋なことを聞いて申し訳ないけれど……好きなのかい? ユリアさんのこと」
「ふぇ!? ……あっ、いや、その……」
一人感慨に浸っていると、グランダッドから思いも寄らない言葉が届く。……あっ、いや、その……その、なんと言いますか――
「……そもそも、僕なんかが好きになったって、ユリアさんの迷惑になっちゃうだけだし」
そう、たどたどしく答える。……うん、我ながら言ってて情けなくなるけど……でも、僕なんかが好きになったって――
「……それは、ユリアさんから言われたのかい?」
「……へっ? あっ、ううん、言われてないけど……」
「……だったら、自分で決めつけちゃいけないよ。もちろん、僕が知ったようなことは言えないけれど……それでも、ハンスがそんなふうに自分を卑下していると知ったら、ユリアさんは悲しむんじゃないかな?」
「……それは」
「……もちろん、戸惑うのはなにも不思議なことじゃないよ。だいたい誰でも、自分の気持ちが一番分からないものだからね。でも、よく考えてごらん。ハンスにとって、とても大切なことだと思うから」
「……グランダッド」
情けないことを言う僕に、いつも以上に優しく微笑み話してくれるグランダッド。そんな彼の隣では、果たしてグラニーも同じ微笑を浮かべてくれて……うん、ありがとう、二人とも。




