プレゼント
「さて、次はハンスです。期待していますね?」
「……その、できればご期待はなさらないでいただけますと……」
それから、数分経て。
お店の外で待機していた僕に、からかうように微笑みそう口になさるユリアさん。ちなみに、袋の大きさなどから僕に中身を推測されないよう、買ったものは店員さんに預かっていただいているとのことで……うん、抜かりないね。流石はユリアさん。
ともあれ、次は僕の番――ユリアさんに変わって、緊張しつつお店の中へと。すると、店員さんが先ほど以上に楽しそうな笑顔をお見せに……うん、恥ずかしいね。
「……うーん、どれにしようかな」
ともあれ、お店の中を歩きながらしばし思案を巡らせる。……そう言えば、ユリアさんって何が好きなんだろう? 彼女について、魔法関連のことは少しずつ知ってきていると思うけれど、そう言えばそれ以外のことはほとんど知らなかったりするのかも。……うん、これから少しずつ知っていこう。
だけど、それはこれからのお話。言わずもがな、いま頼れるのはいま知っていることだけ。……なにか、ないかな? これまでの中で、ユリアさんの好みに繋がるなにかが――
「…………あ」
「……お待たせしました、ユリアさん」
「ふふっ、さほど待っていませんよ。ちゃんと制限時間までにお戻りになったわけですし」
それから、ほどなくして。
お店の外にて、少し可笑しそうに答えてくださるユリアさん。……うん、なんとか間に合ってよかった。
その後、再び二人で店内へ。そして、預かっていただいていた袋を店員さんから受け取る。ユリアさんは僕が買った方、僕はユリアさんが買った方の袋を。そして店員さんに謝罪、感謝の気持ちをお伝えしお店を後にする僕ら。……それにしても、何度も出たり入ったりしてたのに、嫌なお表情一つなさらず終始温かな笑顔で……その、ありがとうございます。
ややあって、比較的に人の少ない辺りで立ち止まる僕ら。そして向かい合い、それぞれ受け取った袋を目の前に。改めてだけど、互いに同じサイズであろう小さな袋だったことにちょっとホッとする。そして、ドキドキしつつ中を開けると――
「……うわぁ」
思わず、声がこぼれる。僕の右手には、透き通るほどに綺麗な青の羽根ペンが。
「……悩みましたが、やはり普段から使用できるものがいいかなと。……いかが、でしょうか?」
すると、控え目に尋ねるユリアさん。……そっか、ユリアさんも不安で……うん、こう言ってはダメかもしれないけど、それでもちょっとホッとして。ともあれ、返事をすべく口を開いて――
「……これは、我が家の家宝にします。埃一つ付かぬよう、丁重に保存し毎日拝み――」
「いや、使ってくださいね?」
……うん、それもそっか。でも、そのくらい本当に嬉しくて。そして実際、汚れないようなるべく触れずに保存したかったのだけども……でも、僕がこれを贈る立場だとしても、保存するよりやっぱり使ってほしいと思うよね。……うん、大切に使わせていただこう。
「ともあれ、お気に召したようで何よりです。では、私も開けさせていただきますね?」
「……はい、どうぞ」
ややあって、嬉しそうに微笑みお尋ねになるユリアさん。……うん、緊張する。この素敵な笑顔が、僕のせいで一瞬で曇ってしまったら本当に申し訳――
「……これは」
ややあって、目を見開き呟くユリアさん。そんな彼女の右手には、青いアネモネの花を象った小さなヘアピンが。そして、これを選んだ理由は――
「……これを見て、可愛いと仰っていましたので」
そう、おずおずと口にする。……やっぱり、安直だったかな? そもそも、ユリアさんが褒めていたのはそのヘアピンだけじゃなかったし。……それでも、それが一番気に入っていたようにも思えて――
「……それだけ、ですか?」
「……へっ?」
「あっ、いえ! もちろん、それだけでもとても嬉しいのですが……ひょっとすると、他にもなにか理由があったのかなと」
「……それは」
懸念の最中、控え目な様子でそう口になさるユリアさん。……うん、やっぱり鋭いね。彼女の言う通り、確かに他にも理由はある。あるのだけども……でも、口にするのはちょっと恥ずかしいかなぁ、なんて。
「……まあ、無理にはお聞きしませんが。ともあれ、ありがとうございます、ハンス。先ほども申し上げましたが、本当に嬉しく思っています」
「……お礼を申し上げるのは、僕の方です。本当にありがとうございます、ユリアさん」
だけど、ややあってパッと笑顔を見せてくださるユリアさん。花も恥じらうその可憐な笑顔を見るに、本当に喜んでくれているのがひしひしと伝わって……うん、よかった。




