アイラさん
「……ねえ、ユリアさん。ちょっと、お話があるんだけど」
それから、数日後の放課後のこと。
中庭へと向かうべく二人で廊下を歩いていると、ふと後方から躊躇いがちな声が。まあ、誰の声かは確認するまでもないんだけど……ともあれ、振り向くとそこにはアイラさんの姿が。そして、心做しかユリアさんへの視線が少し――
「……最近、ずっとハンスと一緒にいる気がするんだけど……なんで?」
「……なんで、と言われましても。そもそも、だとしたらなにか問題でも?」
鋭い視線で問いかけるアイラさんに、怪訝そうに尋ね返すユリアさん。……うーん、ずっと一緒に、というほどではないと思うんだけど……でも、今みたいに、こうして僕らが一緒にいるのを怪訝に思うのはごくごく自然なことで。……でも、僕に対してならともかく、どうしてユリアさんを睨んでいるのだろう?
「……なにか問題でもって……知ってるよね? ユリアさんと一緒にいるせいで、ハンスがみんなから色々と言われてること。こんなの、ハンスが可哀そうだよ」
「色々? いったい、私達に関して何を言われているのでしょう?」
「……知ってるくせに。何もできない無能のくせにユリアさんの隣にいるなんて許せない、とか、月とすっぽんで全然釣り合ってないとか。昨日だって、ハンスが一人の時に、アルベルトくんとティナさんに色々と嫌味を言われてたし」
「……無能、ですか。……まあ、そこに関してはひとまず措いておきましょう。彼のことを何も知らない人達にはそう映るのでしょうし。ですが、釣り合っていないというのはいただけませんね。美男美女同士、十分にお似合いだと思うのですが」
「釣り合ってないじゃない! ……確かに、美男美女だとは思うけど……でも、ハンスなんて顔が可愛いのと優しいところ以外、なんの取り柄もないじゃない!」
「……それって、容姿と性格は良い、ということですよね? それは、大方どなたにとっても高印象となる因子かと思うのですが……ともあれ、私達が一緒にいるかどうかは私達自身が決めること。言わずもがな、貴女には何ら関係のないことです。行きますよ、ハンス」
「……へっ? あっ、はい……」
アイラさんの視線に怯むことなく、毅然としたご様子で応対をするユリアさん。そして、悠然と身体を翻し再び歩みを進めていく。一方、僕は困惑しつつアイラさんへと会釈、そして困惑しつつユリアさんの後をついていく。……えっと、いいのかな? まあ、僕が口を出す雰囲気じゃないのは流石に分かるけども。




