評判
「……申し訳ありません、ハンス。本当は私自身がハンスの魔力を証明すれば、皆さんが貴方のことを認めてくれるかもしれないのに……」
「いえ、お気になさらないでください。そもそも、これはユリアさんは僕のためになさってくれた処置――感謝こそすれど、不服に思うことなど何一つありません」
「……ハンス」
ややあって、謝罪を口にするユリアさん。何に対してかというと、僕の異質な能力について誰にも伝えないという方針についての謝罪で。
『……もちろん、学院にいる大半は真面目で誠実な方々だと思っています。なので、こんなことは私自身も本当は言いたくないのですが……それでも、ハンスの特殊な能力が周知となれば、ごく一部であれ能力を悪用しようと画策する輩が現れないとも限りませんから』
およそ二週間前、校外学習の日のこと――僕の能力について口外しない方針を定めたユリアさんが、その理由について説明してくださって。尤も、そのような悪い人はいないと思っているし、ユリアさん自身もそう願っていると思う。それでも、万が一のリスクを心配してくれているのだろう。僕のためにここまで気遣ってくれて申し訳なく……そして、本当にありがたい限りで。……ところで、それはそれとしまして――
「……ところで、ユリアさん。あれから、ずっとお尋ねしようとは思っていたのですが……僕らは、こうして一緒にいていいのでしょうか?」
そう、躊躇いつつ尋ねてみる。あれから、とは、あの校外学習以降のことだけれど……あれから、ユリアさんと一緒に過ごすことが多くなって。以前は基本的に放課後のレッスンの時だけで、その時もなるべくレッスンの様子を見られないようにとのことで、基本的に周りに人がいないところで行っていた。
だけど、現在はレッスンの時以外でも一緒にいることが多くなって。例えば、今こうして昼食を共にしていることも、あの校外学習の以前にはなかったことで。そして、このような光景が皆さんの怪訝や嫉妬などの理由になっているようで。……あっ、ちなみに舞踏会の時だけども――あの時は、無謀にも参加したものの、やはり一緒に踊ってくれるお相手が見つからず一人途方に暮れていた僕を、優しいユリアさんが見かねて助けてあげていた、といった認識を皆さんからされていたようで……まあ、そうなるよね。よもや、この落ちこぼれの僕があのユリアさんと一緒に来ているなんて誰も夢にも思わないだろうし。……ともあれ、ユリアさんのご返答は――
「……なにか、問題でもあるのでしょうか? 私達二人が、こうして一緒にいることに。それを禁止する規則など、生徒手帳のどこにも記載されていなかったように思いますが」
「……まあ、それはそうなのですが……ですが、ユリアさん。このままでは、僕はともかくユリアさんのご評判が……」
「評判? 貴方が何を仰っているのかよく分かりませんが、そもそも評判など気にしていませんし……仮に気にしていたとしても、貴方といることで損なうような評判なら自ら捨てていたことでしょう」
「……ユリアさん」
そう、柔らかな笑顔でお話しなさるユリアさん。そんな彼女に、思わず目が潤んでしまう。……もちろん、ユリアさんに迷惑はかけたくない。それでも、彼女自身がこのように言ってくださっているのに、僕から離れていくわけにはいかないし……何より、離れたくない。なので――
「――今後とも一生ついていきます、ユリアの姉御!」
「その言い方はなんか嫌です!!」




