視線
「――うん、今日も素晴らしいねアイラさん。いつもながら、思わず見蕩れてしまうほどの魔法だね」
「ありがとうございます、ミシェル先生!」
それから、二週間ほど経て。
四限目――水魔法の授業にて、柔らかな微笑で褒め称える見目麗しき黒髪の男性、ミシェル先生。そして、そんな彼に嬉しそうな笑顔で答える女子生徒。あの舞踏会の時、嫌な表情一つせず僕と一緒に踊ってくれた山吹色の髪の美少女、アイラさんで。そして、彼女は水魔法が得意で、ミシェル先生の仰る通りいつも見蕩れるほど見事に水を操っていて……うん、いつもすごいなあ、アイラさん。……ところで、それはそれとして――
「それじゃあ、次はハンスだね」
「は、はい!」
ややあって、名前が呼ばれバッと立ち上がる。……いや、ここで順番が来るのは分かってたし、何も慌てることはないんだけども……こう、視線を感じるといいますか……。いや、僕の順番なので今は多少なりとも注目を受けるのは当然なのかもしれないけど、そういうことではなく……こう、ここ最近は視線の種類が変わっているといいますか……。具体的には、これまでの嘲笑のような視線ではなく、別の種の……こう、怪訝や嫉妬のような視線が多くなっている気がして。……そして、その理由はおおかた察してはして――
「……それにしても、どうしたものやら……」
「……ん、どうしました? ユリアさん」
「ハンスの今後についてです。貴方は他の人と魔力の扱い方が根本的に違うのですから、今の評価の基準ではどうあっても報われません。なにか、魔法以外の部分でも評価の基準ができればいいのですが……」
「……ユリアさん」
それから、数十分が経過して。
彩り豊かな中庭にて、木組みのベンチに並んで腰掛け食事を取る僕ら。……うん、ほんと優しいなあ、ユリアさん。だけど――
「……ありがとうございます、ユリアさん。ですが、それは仕方のないことです。表に現れない魔力なんて、先生方も評価の仕様がないですし。かと言って、僕一人のために新しい基準を設けていただくわけにもいきませんし、それに……僕は、ユリアさんが知ってくださっていれば、それだけで本当に幸せですから」
「……ハンス」
そう、微笑み告げる。もちろん、ユリアさんのお気持ちは本当に嬉しくありがたい。だけど、僕一人のために新たな評価基準を作っていただくわけにもいかない。それに、他の生徒達と不公平にならないようにするのも相当に難しいと思うし……何より、ユリアさんさえ知ってくれていれば、本当に僕は幸せだから。




