疑問
「……その、申し訳ありません、アイラさん」
「あっ、ううん! その、気にしないで。その、あたしは嬉し……あっ、ううん何でもない!」
それから、少し経過して。
本日――いや、この数分だけでもう何度目かという謝罪を告げる僕。……うん、ほんとに申し訳ない。そもそも、僕なんかと組んでいただいたこと自体とても申し訳ないのに。
さて、ダンスの結果だけれども……まあ、予想の通りと言いますか、僕があまりにも下手でアイラさんの足を引っ張ってしまっている感じで。……ただ、それはそれとして――
「……あの、アイラさん。その、ダンスってこれほどの距離感でしたっけ……?」
「……うん、これくらいだと思う」
おずおずと尋ねてみると、目を逸らしつつお答えになるアイラさん。そして、その声音には控え目ながらもどこか断固とした意思を感じられて。……うん、それなら受け入れるしかない。この距離感が適切なのであれば、もちろん受け入れるしかないのだけども……こう、あまりに近いというか、もはや密着してるといいますか……うん、恥ずかしい。こちら側からお願いしておいて申し訳ないけど、どうかこの時間が早く――
「――ありがとうございます、アイラさん。それでは次に行きますよ、ハンス」
「……あっ、えっと……はい。その、ありがとうございます、アイラさん」
「……うん、こちらこそ」
ややあって、凜とした声が鼓膜を揺らす。鮮やかな銀髪の可憐な少女、ユリアさんからのお声で。実は、ダンスは一人につき10分までという制約を事前にユリアさんが設けていたのだけど、どうやらその10分に達したみたいで。……ふぅ、助かった。いや、助かったという言い方もおかしい……というか、アイラさんに大変失礼だけども。
「……ところで、アイラさん。なにか、感じませんでしたか? ハンスと踊ってみて」
「……へっ? あっ、その……別に、何にも」
「……そう、ですか。いえ、でしたらいいのです。改めてですが、ありがとうございました」
去り際、ふと問いをかけるユリアさん。すると、慌てたご様子で目を逸らしつつ答えるアイラさん。まあ、僕なんかと踊ってなにかも何もないよね。むしろ、不快だと言われなかったことが相当にありがたいくらいで。
その後も、ユリアさんのお願いにて男女問わず数人の生徒達とパートナーを組むことに。当然のこと、みんな怪訝な……そして、露骨に嫌な反応をなさる人も少なくなくて。……まあ、それはそうだよね。そもそも、結局のところ、どうして彼女はこんなことを――
「……ん?」
そんな疑問の最中、ふと僕の前に来て手を差し出す銀髪の美少女。そして、
「――それでは、最後は私です。しかとエスコートして差し上げますから、しかとついてきてくださいね? ハンス」
そう、悪戯っぽく微笑み告げる。そんな彼女に僕も微笑み、差し出された華奢な手を取る。結局、理由は分からなかったけど……でも、まあいっか。今は、彼女との――ユリアさんとの時間を心ゆくまで楽しみたいし。
――それから、数分後。
「……まあ、見ていて分かってはいましたが……思っていた以上に下手なのですね、ハンス」
「……その、申し訳ありません」




