level.33 よめ(?) は たまらず とびだした!!
「〈水行衆〉――《犬女》、只今馳せ参じました。すぐに《暗雲》召還の儀へと移ります」
ちらと視線だけを動かし、おりんちゃんは『詠唱たいむ』に戻ります。
使いに走らせた《野孤》の指令を受け、いち早く駆け付けたのは
決して無駄吠えせず、突然噛みついたりなんかしない、しつけが隅々まで
行き届いた《犬女》の大集団にございます。
「さあ、仕事にかかれ」
やはり《犬女》の大集団は、てきぱきと迅速な行動を心掛けますな。
いい子です。
中央に鎮座する、おりんちゃんを囲む三頭の《空孤》。
その周囲にまんべんなく散らばった《犬女》の大集団。
なにかに憑りつかれたように歌い続ける〈まのもの〉たちは偶然か必然か――
すべて女型にございました。
《犬女》の遠吠えが深い森にこだまし、おりんちゃんと《空孤》の呪文が
重なり合って、次第に音楽の体を成していきます。
それはまるで、理解の及ばぬ“偉大な存在”に捧げる神聖な祈りのような、
そんな畏れすら抱かせる――それは神々しく、美しい音色にございました。
やがて暁の空が、どんより黒く染まります。
召還の儀は成功した模様。
「《気孤》、“ヤツ”は見つかったか?」
「はっ」
おりんちゃん、すっと立ち上がり、いつの間にか近くに控えておりました
《気孤》に向かって尋ねます。
では改めましてもう一度、『狐一族』の階級の確認――下から順番に
《野孤》
《気孤》
そして《空孤》にござい。その頂点に、おりんちゃん。
「案内しろ、直々に私が手を下す」
「どうぞこちらへ」
「《空孤》、あとはお前たちに任せる。《暗雲》が消えないように、しばらく続けろ。片付いたら使いをすぐに走らせる。皆のモノ、もう少しだけ頑張ってくれ」
あっ。待って、おりんちゃん。




