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悪代官サマ と ユカイな仲マたち  作者: 中田 春
【 迷いのマの森 】 編
34/82

level.33 よめ(?) は たまらず とびだした!!


「〈水行衆(すいこうしゅう)〉――《犬女(うーわん)》、只今馳せ参じました。すぐに《暗雲(あうん)》召還の儀へと移ります」



 ちらと視線だけを動かし、おりんちゃんは『詠唱たいむ』に戻ります。

 使いに走らせた《野孤(のこ)》の指令を受け、いち早く駆け付けたのは

 決して無駄吠えせず、突然噛みついたりなんかしない、しつけが隅々まで

 行き届いた《犬女》の大集団にございます。



「さあ、仕事にかかれ」

 やはり《犬女》の大集団は、てきぱきと迅速な行動を心掛けますな。

 いい子です。



 中央に鎮座する、おりんちゃんを囲む三頭の《空孤(くこ)》。

 その周囲にまんべんなく散らばった《犬女(うーわん)》の大集団。

 なにかに憑りつかれたように歌い続ける〈まのもの〉たちは偶然か必然か――

 すべて女型にございました。



 《犬女》の遠吠えが深い森にこだまし、おりんちゃんと《空孤》の呪文が

 重なり合って、次第に音楽の体を成していきます。

 それはまるで、理解の及ばぬ“偉大な存在”に捧げる神聖な祈りのような、

 そんな畏れすら抱かせる――それは神々しく、美しい音色にございました。




 やがて暁の空が、どんより黒く染まります。

 召還の儀は成功した模様。


「《気孤(きこ)》、“ヤツ”は見つかったか?」

「はっ」


 おりんちゃん、すっと立ち上がり、いつの間にか近くに控えておりました

 《気孤》に向かって尋ねます。

 

 では改めましてもう一度、『狐一族』の階級の確認――下から順番に

 《野孤(のこ)

 《気孤(きこ)

 そして《空孤(くこ)》にござい。その頂点に、おりんちゃん。


「案内しろ、直々に私が手を下す」

「どうぞこちらへ」

「《空孤》、あとはお前たちに任せる。《暗雲》が消えないように、しばらく続けろ。片付いたら使いをすぐに走らせる。皆のモノ、もう少しだけ頑張ってくれ」



 あっ。待って、おりんちゃん。




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