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悪代官サマ と ユカイな仲マたち  作者: 中田 春
【 迷いのマの森 】 編
35/82

level.34 よめ(?) は おどろき とまどった!!

『 悪代官サマ と ユカイな仲マたち 』

   こうしん は しゅうまつ!!

       みてね♪♪



「逃走経路を前もって特定しておりましたので、発見は容易でした」

「やはり同じところを通るのだな。“ヤツ”の習性もまた、鼠によく似ている――秘書殿、不自由ないか?」



 ぐえええええ。

 い、息がぁ……。

 でき……ない。



「ほお。さすがは大殿が信頼を寄せるお方だ。通常のモノであれば、我らの速度には決して付いていけないのだが」

「では、もう少しだけ先を急ぎましょうか」

「うむ――聞いておるか《野孤(のこ)》たち。速度をさらに上げるが、秘書殿をこれまで通り丁重にお連れしろ。“絶対に”落としたりするな」

「了解でありますぅ。落としたりは“絶対”しませぇん」



 む……むりぃ……《野孤》たち、やめてくれぇ……。

 これ以上むりぃ……それより、なんだか『ふり』っぽく聞こえたのは

 気のせいでしょうか? すごく不安。



「あれれぇ」

「ひぃ!」



 とその時、

 『ばらんす』を崩して真っ逆さまに地面に放り出されそうになる私。

 そのお約束は今、洒落になりまへん。



「ごめんさぁい。大丈夫ですよぉ。しっかり僕らに捕まってくださいねぇ」



 画は確かに“捕まって”おりますな。

 たくさんの小さな《野孤》によって担がれる私。

 そもそも自分で“掴まる”余裕なんてありません。

 音速を軽く突破しておりますからな。




 永遠にも思える果てしない苦痛が、やがて終わる歓喜の瞬間がまいります。

 どうやら目的地へ到着した様子。



「そこまでだ」



 大きな風呂敷包みを肩に担ぐ、窃盗常習犯との対峙。

 『しりあす』な一幕になるはずが

 酸欠状態でそれどころじゃない、ふらふらの私。

 たくさんの《野孤》たちによって担がれる間抜けな画は

 現場の雰囲気を完全無視・ぶち壊しております。



「お前の悪運は尽きた。抵抗すれば、その場でねじる」



 ねじる……とっても痛そう。



「抵抗しなかったら許してもらえるのかい、オジョーチャン?」

「許しはしない。少しだけ、その生命を伸ばしてやってもいい。協力するならな」

「じゃあ俺からも提案がある」

「提案? 私がしているのは“取引”などではない、“命令”だ」

「ケンカ腰になることはないだろ。互いにメリットがあるんじゃないか?」



 ひい、ひい、ふぅー……

 ようやく呼吸が落ち着いてまいりました。

 とりあえず、大地に足を着けますか。

 担がれるこの画は、さすがに間抜け過ぎますので。



「あんたが欲しいのは情報だろ? 万能資源『 POW 』を持ち出す、不逞なヤロウどもの情報だ。あんたが執拗に俺を追ってきたのも、そのためじゃないのか? こっちの要求を呑んでくれるなら、望む情報を提供してもいい。そして、あんたが“俺を満足させてくれる”んなら、それ以上の見返りを必ずあんたにも――」

「黙れ」



 まるで針で刺されるように、現場の空気が緊張します。



「勘違いしているようだ。私はお前の顔など見たくもない。息を吐くな、汚らわしい」



「へ……へっ、へへっ。おっかないねえ。だがその顔も、たまらなく“ソソる”ぜェ……やっぱり、あんたは最高だ。へっへっへっ、だから俺の“素敵な提案”を聞いてくれよお……」



 な、なんて下品。

 さ、さいてー!



「――ギャアアアッ。目が、目がァァァ」

「お前の視線はとても不快だ。片側もすぐに潰してやろう。〈マのモノ〉はムダをなにより嫌う。このくだらない時間は、間違いなくムダな時間だが、あえてすることもある」

 



「お前に安らぎなど与えない。楽にイケると思うなよ」


 


 窃盗常習犯が恐れをなして、顔を真っ青にして逃げていきます。

 しかし片目を失って、方向感覚に狂いが生じるようで

 大きな風呂敷包みを肩に担ぎ上げたまま

 おぼつかない足取りで男は悪あがきを続けます。



「クッ、油断しちまったッ。この俺が、まさか目を潰されちまうとは!」



 手配書と共に、

 私にも支給された『だんじょん・まっぷ(GPS機能付き)』によると、

 あの窃盗常習犯が向かう先は入り口(出口)方向を示しております。




 しかし、絶対に逃げられません。

 なぜならば。


「私の貴重な時間を、お前ごときゴミに割いてやる。いつもはしないが特別だ」



 もくもくもく。

 真っ黒い分厚い壁が逃げる男を阻みます。

 これぞ【迷いのまの森】支店を、完全な閉鎖空間へと変える生物防壁――

 《暗雲(あうん)》にございます。

 いつもはおりませんが、本日は特別に出現中。



「へへっ」

「気が狂うほど恐ろしいか。それでは先が思いやられる。今日はムダなことをすると決めた日なんだ。すぐに終わっては、つまらんぞ」

「あんたに責められるのは悪くないが、逆のシチュエーションの方が好みだな」

「……まだ、元気はあるようだ。その口を先に潰してやろう。醜い〈ニンゲン〉の声は聞くに耐えん。元気いっぱいの悲鳴は、迷惑極まりないからな」

「ハッ! じゃあな、また会おうやオジョーチャン、楽しかったぜェ。この万能資源『 POW 』はありがたく頂戴する!」

「血迷ったか。この状況で逃げられるはずが――」



「オラア!! ジャマだァ、どけェェェ!!!!」



 なっ! 

 土煙が大量に舞い上がります。

 やや遅れて轟く派手な爆発音。

 ぐらぐらと一帯の木々が、左右に大きく揺れました。



「なんだ、この“異常な力”……これは一体……?」



「へっへっ。今度来る時は、“仲間”も一緒に連れてくるぜェ! コソコソしないで正面から堂々と、今度はパーティを組んで攻略に来るッ。そして次は、あんたを次は必ずゥ――」



 土煙が晴れていきます。



 決して見えるはずのない外の光が【迷いのまの森】に差し込み

 大量の万能資源『 POW 』を肩に担いだ男を照らしておりました。



「ゲッチューだ」



 そう言い残して、男は去っていきました。




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