level.32 よめ(?) は いかり くるっている!!!!
「【迷いのマの森】支店の全社員に告ぐ――配布された“最新の手配書”を確認! 大量の『 POW 』を所持したまま、逃げ出したヤツが載っているはずだ! 必ずや探し出して、“窃盗常習犯”を私の前に連れてまいれッ」
その様子、荒ぶる女神。
神は憎っくい敵にございますが
それほど眩しく輝いている……
という意味で受け取ってください。
オーラの色がこれ以上ないほどに澄んでおります。
どちらかと言えば『ひかりもの』が発する波動に
似ている気がいたします。
「《気孤》」
おりんちゃんの前に、ずらりと勢ぞろいする『狐一族』の面々。
階級は下から二番目。
ほどほどに『狐一族』の中では下っ端の《気孤》は
鮮やかな黄色の『すかーふ』を皆が首に巻いておりました。
その頭数の多さは、
もっとも下の《野孤》に次いで、やはり二番目。
雑用係には、うってつけの役回りですな。
「お前たちは入り口の封鎖にかかれ。ヤツを森から出すな」
「おりん様、“あれ”をお使いになるのですか?」
「そうだ――《暗雲》を呼ぶ。渡した《召還の楔》はダンジョンとフィールドの境界に沿って等間隔に打て。《野孤》は〈水行衆〉を集結させろ。それまでは私と《空狐》で《暗雲》を呼ぶ。行け」
集った大勢の狐たちが、おりんちゃんの号令で四方八方へ散ります。
獣の姿に限りなく近い《気孤》・《野孤》と違い
その場に残ったわずか三頭の《空孤》は人の姿を成しております。
彼女らもまた、おりんちゃんと共に、すぐさま召還の支度に入ります。
「カガルゴエルカケバル、レデクレアデルゲ」
『詠唱たいむ』が始まりましたな。
邪魔しちゃいけませんので、ここから静かにご説明させていただきます。
この【迷いのまの森】の“支店長”は『狐一族』の頭領が代々任命される
『準・世襲しすてむ』になっております。
『準』と、ややこしい表現が加わっているのは血の繋がり以上に
実力が伴わないことには認められないからに他なりません。
そこは完全な実力社会。
すぱっと情とは切り離されております。
そして『狐一族』の頭領は……。
(ばばばーん・いよぉー!)もちろん我らが“おりんちゃん”。
うら若い、おりんちゃんは『狐一族』の頭領であり、
【迷いのまの森】支店で勤務する全社員を統括する
支店長なのでございます。
いやはや、羨ましいほどの、できる女。
すべてを持ってる彼女に憧れる男型・そして女型の〈まのもの〉は
数えきれず。私も熱狂的なそのひとり。
「ジャレルガッェソギゥエゲバヴァェワクャアカ」
荒ぶっております
おりんちゃんの呪文が、いつも以上に荒ぶっておりますぞっ!
凡人の私には発声不可能な領域に突入しました。
さすが頭領、なんてったって支店長。
発声可能領域に限界なんぞありゃしません。
もくもくもく。
鬱蒼と茂る木々の枝葉の隙間から、ほんの少しだけ垣間見える暁の空が
次第によどんでまいりました。
それは【迷いのまの森】周辺にだけ生じる“不自然な暗雲”……。




