【12 日帰り旅行】
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・【12 日帰り旅行】
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一緒に遠出することになった。とは言え、日帰り旅行だけども。
今まではライトノベルの話ばかりだったけども、最近はニュースの話もしているからだろうか、会話は多種多様に飛んでいき、いろんな会話ができている。
「幸次って、ライトノベル以外に好きなモノって何?」
「別に。何か、あんま良くないモノばっかかも」
と、すぐにAVと浮かんでしまったため、ついぶっきらぼうにそう言ってしまう俺。
すると来水は勘付いたのか、
「まあそうねぇ……女子と二人っきりで言うことじゃないよねぇ、他に趣味とかって話っ。どうせなら知っておきたいしぃ」
「無いかな」
と本当に無いから、それ以上の言葉が出てこない……じゃなくて、こういう時はこっちが聞くんだった。
一般文芸の小説とかでもそうだったので、そうしたほうがいいはず。
「逆に来水はどんな趣味があるのか?」
「そう言われるとアタシも無いからさ、一緒にいろいろ試してみようよ、というかこの日帰り旅行もそういうことだしっ。食にはあんまり興味無い感じ?」
「料理するようになって、ちょっと出てきたかな。だからちょっと太っちゃったかもしんない、運動くらいはしないとな」
「確かに、ってアタシも太ったかもね。幸せ太りってヤツだねっ」
ミラー越しに来水の面持ちを確認したところで、俺は別に直接見てもいいんだった、と思う。
でもあんまがっつり見て、気をきらしてしまうことは良くないし。
「あ、次の信号機で左。今のうちに左車線に入っておいたほうがいいかも」
来水の運転する自動車の助手席に座って、俺はスマホ片手にナビをして、本当に助手ができていて嬉しい。
「そだね、今、左車線に車いないもんね」
一応もう一回確認し、うんと聞こえる声で頷く。
こんな普通の会話を自分ができるようになるなんて、感慨深い……とか考えてきたら、段々芯に、いや真にそう思うようになってきて。
俺なんかがこんな幸せな会話を女子とできているなんて、何かの間違いじゃないか。
俺なんかだぞ、あんな忌み嫌われてイジメられていた俺なんかだぞ。
ヤバイ……何か嬉し涙が溢れてきた……俺なんかがこんな幸せでいいのか? 世の中にはもっと一生懸命働いて、でもブラック企業だから何も趣味ができない人間だって山ほどいるのに。
俺ごときが、俺ごときがさぁ、こんな幸せでいいはずないんだよなぁ……と思ったところで、来水が、
「なになに、どしたん? 急にっ」
もう涙がボロボロ流れていた。
「これは、何でもない」
と、詰まりながらもなんとか声を発したんだけども、来水は、
「ちょちょ、ちょっと待ってよ、めっちゃ気になるから言ってよ、気になって運転どころじゃないからさっ」
と焦りながら言われたので、これはさすがに言って、来水を安心させないといけないと思って、
「俺さ、まあ知っての通り、全然人生上手くいかなかったからさ、こんな幸せでいいのか、もっと大変な人がいるのに俺はこんな感じに幸せになっちゃって、嬉しいけども罪悪感もあってさ、だからもう感情がぐちゃぐちゃで」
来水は黙っているので、俺は続ける。
来水の反応が怖くて、来水のほうは見れていない。
「俺ごときがこんな幸せなんておかしいし、こんなまともに女子と会話しているだけで本当にありえないことだし、でもそれが今できていて、でも何か俺なんかがと思ってちゃって、こんな生活していて本当にいいのかなって、不安にもなって」
その時だった。
急ブレーキを踏んだと思ったら、来水が声を荒らげた。
「もう泣くなよ!」
俺はビックリして、来水のほうをやっと見ると、なんと来水も泣いていて、
「運転中のもらい泣きは危険なんだよ!」
と叫んだ。
二人で顔を見合わせると、何だか自然と笑みがこぼれてしまって、車内で笑い合ってしまった。
来水はゆっくり口を開き、
「アタシだってそうだよ、いや本当に幸次にしたことは許されることじゃないし、きっと幸次がそういう思考になってしまったのは高校時代のアタシたちのせいなんだけども、その天罰でアタシもいっぱい苦労した。少なくても自分なりには苦労したつもり。でも今は小説家として活動できるようになって、母親もやっと少しは楽させてあげられることになって……やっと、幸次と友達になれた」
「俺もやっと来水と友達になれた」
「一緒なんだよ、実際みんなそれぞれ苦労して生きているんだよ。苦労していないように見えて、実はみんなみんな苦労しているんだと思う。そりゃ勿論例外みたいな人もいるだろうけども、それはそれとしてねっ」
「来水の考え方、好きだな」
と俺がなんとなく思ったことをそのまま言っただけだったのに、来水は恥ずかしそうに、
「そんなこと言ってくれる幸次が好きだよ」
と言ってくれて、陳腐な表現だけども、天に昇るような気持ちだった。
それ以降は涙も拭いて、改めてドライブを再開して、道の駅に止まって休んだり、目的地の公園で花巡りをして、近くの飲食店でご飯を食べて帰ってきた。
夕方には家に戻り、道の駅で買ってきた安くなっていたお弁当を二人で分けて食べて、来水・俺と順番にお風呂に入ったところで、まだ居間にいた来水から、
「今日は添い寝してほしい」
と言われて、何か、そんなことありえなくて目を丸くしてしまう。
でも冗談ではない感じというか、ちょっと真剣そうに目元が潤んでいたので、
「ね、寝る時になったら!」
と答えて、俺と来水は居間でアニメ映画を一緒に見た。
午後十一時くらいになったところで、来水から、
「歯を磨いて寝よかっ」
と言われて、一緒に歯を磨いて、来水の部屋へ俺は足を踏み入れた。
最初に来水の部屋を見た時よりも、何だかクリアというか、ハッキリ見えるような気がする。
女子らしいピンク色のカーテンに、発色の良いライト、家具はシックな木目調の色合いで、本当に来水らしい部屋だ。もしかしたら来水への解像度が上がったからかもしれない。
部屋は無臭で、余計な香りは無い。ただ来水からは同じボディソープを使っているとは思えない甘くてふんわりした空気を感じる。
少しだけ頬を紅潮させた来水が先に入ったベッドに俺も入り込むと、来水が小声で、
「襲ってもいいよ」
と言ってきたんだけども、それは普通に、
「理性の無い獣みたいに言うなよ、襲うじゃなくて抱く、な」
と注意すると、来水は甘ったるい声で、
「じゃあ抱いてくれるの?」
と言ってきたので、俺は慌てながらも、
「そそそそ添い寝って話だろ! 最初の約束通り俺はするから! 真面目だから!」
来水は優しく目を瞑り、もうそれ以上喋ることは無かった。
俺は緊張で寝れないと思ったけども、何だかいつの間にか寝れていたみたいで、割とぐっすり寝れたらしいけども、朝起きたら来水の顔がすごく近くにあって、めっちゃビックリしてしまった。
俺は逃げるようにベッドから出て行き、急いで歯を磨いた。
あれから、不思議と憑き物がとれたようにシコる気があまり無くなり、一緒に穏やかな生活をしている。




