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ショッピングモールの騒々しい中央ホールを抜けると休憩コーナーやATMコーナーの近くにくる。その一角に「お気軽に 無料 ボランティア人生相談コーナー」の看板があり、仕切りの中に華奢な女が座っている。手を組んでいた女は俺と目が合うと微笑んだ。
「何かお悩みはありますか」
「ええ、あります」
「こちらにどうぞ」
女は折りたたみイスを出してテーブル前に置いた。にこやかに、福々しいまでに親切げに笑ってる。
「どんなお悩みですか。恋のこと、将来のこと、ご家族のこと。それともこころの悩みですか」
「どっちかというとからだの悩みが……」
「どういったことでしょう」
「こいつです。こいつが悩みです」
後ろを指すと女は口をあんぐりと開けて、視線が硬直した。
「……デブです。デブで困ってます」
こほんと咳ばらいをして女は表情をあらためた。多少こわばってるものの、元のようににこやかになってる。
「すると、ちょっとおからだの方が横に出てらっしゃると」
「横に出てる……とはすごい表現ですね。デブですよ、要は。」
女性はふるふるとはっきり首を振った。
「どんな人にも個性があります。人間だけでなく、自然界も空の星々も、みんな同じじゃありません。大きい花、小さい花、太い木ややせた木。色とりどりの花がそろって素晴らしい花束だってできるんです。そうじゃないですか」
ふふ、とふたたび笑う。
「はあ……」
「何かの思い込みにとらわれてませんか? 個性豊かで多様性に満ちた世界。いろんな人たちがいるから世界は輝くんです。そうお思いになりませんか?」
「だからってデブがうちに配達されて……」
「多少ふくよかな方でも気にする必要はありません。考えを切り替えることですわ。ファット・イズ・ビューティフル。大柄のお人だって魅力的なんです。むしろ大きいことを大切に思ったらいかがですか。それが幸せじゃありませんか」
まっすぐにこっちの目を見て力強い言葉。異様な説得力に何かに似てると思ったら、町中で無料の宗教本をすすめてくる人たちと同じだ。
俺は礼を言ってから席を立った。




