3
バスに乗るのも大変だった。
一人用だと通路にはみ出るし、連結シートだと二人分占拠してしまう。逆に通路だとモーゼのように人の行き来が割れる。
結果俺たちは後部座席に乗り込んだ。デブは二人分ぐらいのスペースを占めてる。やれやれだ。
途中で白髪のばあさんが乗ってきて「ちょっと奥につめてくれんかの」と言ってきたがつめようがない。
どのみち降りるバス停は迫ってる。俺はデブをうながして運転席のそばに向かう。デブの頭に吊り広告がばさばさとあたり、バスの前半分に巨大な肉のモニュメントがそびえる。肉の壁だ。
遠慮のないガキどもがデブを指さしてクスクスと笑っていた。
「静かにしろ」
と怒鳴りつけるとますます大声で笑いだし、俺は苦々しい思いでバスを降りた。
街近くの市民公園は周りがお濠になって、市井の人の憩いの場でもある。そぞろ歩きする老人、手をつないだ高校生カップル、ジョギングする男女。散歩中の犬がデブを見て吠えかけてくる。ああうっとうしい。
ジョギングの人が多いのでどうしても目に入る。そういえば前にテレビに出てたダイエットのインストラクターという女が、走って痩せるのが一番です、と笑顔で語っていた。
やりたいとは思いつつも億劫で一日伸ばし、その分俺の腹に・あごに・ふとももに肉は蓄積されていった。サボってる罪悪感に駆られて、なるべく見ないようにしていたが、ついつい横目で追ってしまう。
ランナーが脇を通り過ぎるとデブが俺の袖をひっぱる。
「走らなくていいんですか」
「大きなお世話だ」
俺は足早に公園を抜けてショッピングモールに向かった。




