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七畳一間の安アパート。キッチンと居間は一続き、部屋はガラクタばかりで足の踏み場もない。
こんな百貫デブ、座らせるだけでも一苦労だ。
俺は床に散らばってる雑誌やDVDだとかひとまとめにして片付ける。
デブは空いてるスペースに座ってふうと大きな息を吐いた。
目の前に座られると圧迫感がすごい。なんだか部屋の半分ぐらい占領されているようだ。
ぜえぜえ言いながら汗をかいてる。そばにいるだけで暑苦しい。
デブを見つめていて疑問が湧いてくる。
なんでよりによってうちなんだ?
そこで髭剃り用の鏡に映る自分に気付く。あごの肉がややたれている。腹にもぽっこりと筋肉ではないふくらみ。
ちくちくと心が痛む。料理するのが面倒くさいとハンバーガーや弁当、出来合いの総菜ばっかり。タイムセールの半額弁当目当てにスーパーに行けば、オムライス、ハンバーグ弁当、焼き肉弁当などこってりしたものばかり目が移る。
野菜もとらなくちゃ。それは分かってる。分かってる。でも少しは……ちょっとだけ……
自分へのごほうび。後でジョギングして落とせばいい……
思わずうつむく。最近じゃ風呂に入るたびに鏡から目をそむけてしまう自分がいた。
ついデブに目がいく。
そうか。俺とおまえは仲間というわけだな。デブ仲間と。
だからってなにも配達までしてこなくても……
運送屋のニヤついた顔。思わず立ち上がる。
「くそっ、あてつけか。嫌味か」
人が気にしてることをあげつらって怒らせようって魂胆か。なぜか小学校時分の性格の悪いクラスメートを思い出した。
煮えたぎるような怒りが噴きだしてくる。
「その手にはのらんぞ」
デブは何も言わず横でひゅーひゅーと音をさせながら息を吐いてる。みしりと音が聞こえそうなほど尻下のカーペットに皺が寄っている。
このままだと床が抜けるかもしれん。ボロアパートなのに。
よし、と俺は立ち上がった。
「おい、いくぞ」
きょとんとしてデブは俺を見る。
「えっ? どこに」
「決まってるだろ。外だ」
「動きたくないっす」
ふつふつと怒りがわいてくる。殴りたい。
「いいから、来い」
肩をひっぱる。
「えーっ」
「飯食わせてやるから」
飯、の言葉につられたのかようやくデブは起き上った。
歩き出すと積み重ねていた漫画と雑誌の山にぶつかって崩し、ふたたびかもいに頭をぶつけて顔をしかめる。しまいに傘置きをよけようとして玄関の半開きのドアと悪戦苦闘した。
ちょっと動くだけで大騒動だ。




