私を守るもの
「なんかあったよな?」
帰り道⋯⋯
海と並んで歩きながら
海は私にそう言った。
⋯⋯
海はするどい。
小さい頃から一緒にいるもんね⋯⋯
隠し事はなんだかんだ言ってすぐバレちゃう。
「ん?きょ、今日、桜井君風邪でお休み心配だよね?」
そう、桜井君は朝から高熱でお休み。
風邪が流行ってきたのかな⋯⋯
「ん?あぁ、桜井か、様子見に行こうとしたら、熱がひどすぎて、伝染るから今日はやめてーって言ってたぞ」
そうなんだ⋯⋯
「そんなに熱があると大変だよ⋯⋯」
早く良くなるといいよね。
「明日また休みなら様子を見に行くつもりなんだ。」
海は心配そうに言った。
「そうだね!行ってあげて!!」
桜井君は海が行くと喜ぶと思う!
2人は仲良いしね!
「まなみ?話をそらすなよ。」
海が私を見つめる。
「本当になにもないよ?」
私がそう言うと
「そうか⋯⋯ならいい。でも顔色悪いから早く休め。あと、何かあったら相談しろよ?」
「うん⋯⋯」
海とは私の家の前で別れる。
⋯⋯堂本さんとの夢の話は言えなかった⋯⋯
1人で考えたい⋯⋯
そう思って玄関を⋯⋯
開けた
その時⋯⋯
光に包まれて⋯⋯
あ⋯⋯
「お帰りなさいませ。まなみ様」
そこは、夢の洋館だった。
「よしろうさん⋯⋯」
あたりを見回す。
あれ?今日は私1人?
私がキョロキョロと辺りを見回すと
よしろうさんはフッと微笑み
「まなみ様がおひとりを、望まれていれば、そのようになります。今日はおひとりをお望みのようで。まずは、少し座って一息おつきくださいませ」
よしろうさんは私をソファに促す。
テーブルの上にはマカロンとティーセット
準備がいい〜⋯⋯
私は紅茶を飲んで一息つく。
「よしろうさん⋯⋯」
「はい」
私のつぶやきによしろうさんは優しく答えた。
「ケンケンのお兄さんに夢でね⋯⋯会ったの」
「はい。存じております」
そうか⋯⋯ここは私の心の中だもんね⋯⋯
お見通しか。
「じゃあ⋯⋯」
私が呟くと
「はい。まなみ様が、堂本新一様に悪い人ではないのではと思われているのは感じております」
⋯⋯
「そして、またお会いしたいと思われているのも⋯⋯」
そうか⋯⋯
そう⋯⋯私はまた会いたいんだ。
「うん。もう少し話したいって思った。私⋯⋯どうしても悪い人には見えなくなっちゃって⋯⋯」
小さくつぶやくと
「ええ。それでいいのではないでしょうか?」
よしろうさんは優しく微笑んだ。
『ピー!遅くナッタ〜!ピー!』
私の肩にピーちゃんが止まる
え?!ピーちゃん!?
「ピーちゃん?どうしてここに?!」
ピーちゃんは海といたよね?
「ピーちゃんは、まなみ様の従属ですから。」
「じゅうぞく⋯⋯? ピーちゃんって、海の鳥じゃないの?」
私が目を丸くすると、よしろうさんはティーポットに紅茶を注ぎながら静かに頷いた。
「いいえ?まなみ様の持つ特別な強いお力と精神の深い部分で結びついている従属です。海様のおそばにいたのは⋯⋯」
よしろうさんが話終える前にピーちゃんが口を挟んだ
『ピー!オレは!まなみの家臣ダゾ!海のヤローとイタノハ、あいつに、まなみを守るタメノ、力を与エルタメ。ピー』
え?そうなの?!
家臣って言葉に少しおかしくなっちゃったけど⋯⋯
「ピーちゃんは、まなみ様を守る立場にあるものです。」
よしろうさんがそう言ってピーちゃんを見る。
「海様をお気に入りになったようで⋯⋯」
『ピ!アイツ、いいヤツダカラ!ピー!』
ピーちゃんはそう言ってあたしの目の前に飛んでくる
『ピー!でも、イツモまなみのソバニイタゾ!ピー!』
確かに⋯⋯
知らない間にいつもそばにいたかも。
「そうだね。いてくれたかも!」
私は目の前のピーちゃんを撫でる。
ピーちゃんは気持ちよさそうに目をつぶった。
「よしろうさん」
私は紅茶のカップをそっとテーブルに戻した。
「私⋯⋯もう一度堂本さんに会いたい。ちゃんと話したい。逃げないで、彼の本当の気持ちを聞いてみたいの」
ポケットの、金色の鍵を上からギュッと握りしめる。ひんやりしていたはずの金属が、今は私の体温でじんわりと温かくなっていた。
よしろうさんは静かに微笑み、深くお辞儀をした。
「ええ、まなみ様ならそうおっしゃると思っておりました。私どもはいつでも、ここでまなみ様をお守りしておりますよ」
『ピー!マナミ、負ケルナ!ピー!』
ピーちゃんがパタパタと翼を羽ばたかせて応援してくれる。
そして頭の上に乗ると
『ピー!まなみ?ケンケンの兄は悪いヤツジャナイと、オレも思ウ!まなみの気持チハ間違エテナイ!ピー!』
ピーちゃん⋯⋯
「まなみ様が思う通りに⋯⋯」
よしろうさんはそう言って深く頭を下げる。
「2人は私の絶対的な味方なんだね」
私が言うと
『ピー!当たり前ダ!でも、間違エテイル時と、危険ナ時ハ、遠慮セズ言うゾ!ピー!』
ピーちゃんはそう言って私の前で飛び上がってそう言った。
「まなみ様が間違えた方向に進まぬようサポートいたします」
よしろうさんが優しく微笑む。
私はずっといきたかったことを思い出す。
「よしろうさん、あの⋯⋯」
「はい」
「あの⋯⋯私の⋯⋯その私を産んでくれた母の話なんですが⋯⋯」
「はい⋯⋯」
よしろうさんは優しく微笑んだ
「よしろうさんは、⋯⋯お母さん?にも会ったことはあるんですか?」
あの日夢の中で会った、お母さんを思い出す。
よしろうさんは私を見つめて微笑むと答える
「お会いしたことはございません。しかしながら、よく存じております。まなみ様のお母様ですから」
?そうなの?
「会ったことはないんですか?」
「はい。私は、まなみ様のためにいる者。まなみ様が生まれる前から、準備し、まなみ様の必要なものすべてを把握しているだけです」
そうなんだ⋯⋯
『ピー!まなみヲ産んだママは、まなみミタイナ能力ハナイから!会ウコトハ出来ナイんだ!ピー』
そうなんだ⋯⋯
「我々はまなみ様の為にいる者ですので⋯⋯でも、まなみ様を愛おしみ大切にお腹のなかで守っていたお母様のことはよく存じております。まなみ様を産む方ですから⋯⋯」
『ピー!優シイ!でも⋯⋯強イ女だ!ピー!!』
よしろうさんと、ピーちゃんはそう言った。
私のお母さん⋯⋯
あの時一度話したきり⋯⋯
優しそうな人だった。
「まなみ様のお母様は、まなみ様のような能力はありませんでしたが、一族のなかでは強い力をもっていました。その当時も西家の者との婚姻は続いていて⋯⋯しかし、幼い時から共に育ったおふたりでしたのでとても、仲睦まじいおふたりでございました⋯⋯」
お母さんは⋯⋯西家の人と⋯⋯
じゃあ、私のお父さんは⋯⋯
「あとは、ケンケンのお父様、そして⋯⋯お菊様のお父様が幼馴染として、おふたりとともに⋯⋯」
え?!
お菊ちゃんの?!
私はびっくりしてよしろうさんを見る
『ピー!お菊ノパパも!本当はまなみを見守る一人ナンダゾ!ピー!』
そうだったんだ⋯⋯
「でも、お菊様はこの話はご存じないかと⋯⋯陰ながらお菊様のお父様がご協力しているという感じでございますね」
よしろうさんはそう言って私を見た。
「そうだったんだ⋯⋯」
私の生まれる前の話⋯⋯
なんだかとても不思議な感じだった。
お母さんを大切にしてくれた仲間の子どもたちに、ふたたび私はまた⋯⋯守られていたんだ⋯⋯
「昔話は昔話です。今まなみ様が幸せになるように。皆様が見守っている。それだけでございますよ」
よしろうさんはそう言ってフッと腕時計を見る。
「まなみ様?そろそろお時間のようですよ?」
え?
⋯⋯
フッと周りを見渡すと⋯⋯
私の周りが少し暗く⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯まなみちゃん⋯⋯
私を呼ぶ声がする⋯⋯
『ピー!一緒に行キタイケド!待ッテルな!行ッテコイ!ピー!』
ピーちゃんの声を遠くに聞きながら⋯⋯
私は目の前に現れた扉を開けた⋯⋯




