報告③
「もーびっくり!部屋でのんびり雑誌見て、やけ食いしてたんだよ〜僕。だからこんなラフな家着だしぃ〜」
そう言ったお菊ちゃんは、ラフなジャージ姿!
そんなラフな格好初めてで
逆に可愛い〜。
「俺はパン食ってた!」
海は両手に持ったパンをモグモグしながら答える。
「僕なんかさぁトイレのドアあけたらここだよぉ〜よしろうさん!トイレかしてねー!」
桜井くんは慌ててトイレへ向かう。
「で?まなちゃんどうしたの?」
お菊ちゃんはソファに座ると、テーブルに並ぶお菓子をいくつかとって、パクパクっと口に入れる。
「ちょっちょっと。お菊ちゃん!まず、やけ食いって何かあったの?」
まずはそこよ!
一体お菊ちゃんに何が!
なんでやけ食いなんか?!
心配!!
「え?だって、まなちゃんだって!ケンケンと何話してたの?!」
えええ?!
いきなりそっち?!
私がびっくりしてお菊ちゃんを見ると、
お菊ちゃんは私の前に立つと、私の肩をぎゅっと掴む。
強い力⋯⋯
「おお?お菊ちゃん?!落ち着いて?ど、どうしたの?!」
「だって! まなちゃんが『ケンケンに先に話したいことがある』なんて言うから! 僕、てっきり⋯⋯てっきり告白でもするのかと思って⋯⋯!僕にもチャンスをちょうだいよ!!!」
私の肩をゆさゆさ⋯⋯
えええ?
えー!
「こ、告白ー!?」
お菊ちゃんの口から飛び出した衝撃の単語に、私は思わず素頓狂な声を上げてしまった。
「そうだよ! ふたりきりで中庭に行ってさぁ! だから僕、悔しくて悲しくて⋯⋯お部屋で雑誌見ながらお菓子やけ食いするしかなかったんだからね!」
お菊ちゃんはジャージの袖をぎゅっと握りしめて、今にも泣きそうな顔で訴えてくる。
えええっ!?
勘違い勘違い!!
「ち、違うよお菊ちゃん! 告白なんてそんなんじゃないから!ケンケンに告白なんかするわけないじゃん!」
と⋯⋯
後でケンケンがドサッとソファに座った音がした⋯⋯
ん?大丈夫?
「えっ!? 違うの⋯⋯?」
お菊ちゃんは私をじっと見つめる。
「全然違うよ! 勘違いさせちゃってごめんね⋯⋯?」
私が慌てて両手をぶんぶん振ると、お菊ちゃんはパッと表情を明るくして、ホッとしたように大きなため息をついた。
「⋯⋯よかったぁ〜! もう、びっくりさせないでよ〜!なんだあ〜よかったぁ。
じゃあ、一体なんのお話だったの?」
お菊ちゃんが安心したようにソファの背もたれに深々と体を預けたタイミングで、トイレからスッキリした顔の桜井君が戻ってきた。
「ふぅ、助かったぁ〜。よしろうさん、ありがとう!⋯⋯で、みんな集まってどうしたの?」
モグモグとパンを食べ終えた海も、真剣な表情で私とケンケンを見つめる。
「⋯⋯実はね、すごく大事な話があるの」
私の言葉に、みんなの場の空気が一瞬でピンと張り詰めた。
さっきまでのドタバタが嘘みたいに静まり返る洋館の部屋で、私はケンケンと目配せを交わしてから、よしろうさんから聞いた『堂本新一』の名前と、それがケンケンの生き別れたお兄さんかもしれないということを、ゆっくりと話し始めた——。
「ケンケンのお兄さん⋯⋯」
お菊ちゃんが呟いた。
「ごめん。みんな⋯⋯僕は、みんなと一緒に行動すべきじゃないね⋯⋯」
ケンケンはそう言って下を向く。
ケンケン⋯⋯
私はケンケンを見つめケンケンのそばに寄る。
「何言ってるんだよ、ケンケン!」
静寂を破ったのは、海の大きな声だった。
「一緒に行動すべきじゃないとか、1人で抱え込もうとすんなよ! 兄貴の件なんかケンケンには、全く関係のないことだ」
「そうだよ、ケンケン⋯⋯」
お菊ちゃんも、まっすぐケンケンを見つめる。
桜井君も静かにケンケンの隣へ歩み寄り、その肩にそっと手を置いた。
「ケンケンくん!1人の力じゃ限界があることも、みんなでなら乗り越えられると思うよ?僕たちを頼ってほしいな」
下を向いたまま拳を握りしめるケンケン。
その肩が、かすかに震えている。
私はケンケンの前に歩み出て、目線を合わせるように屈み込んだ。
「ケンケン、私ね⋯⋯1人でクヨクヨ悩むのはやめたの。1人で抱え込んでも、何も変わらないって気づいたから」
ケンケンがゆっくりと顔を上げる。
「だから、ケンケンも1人で背負わないで。私たちがいるじゃない!海が言ったように、ケンケンはケンケンだよ?お兄さんとまったく関係はないんだから」
私の言葉に、海が
「当たり前だ!」
とニッと笑い、お菊ちゃんと桜井君も強く頷く。
『ピー!ケンケン!メソメソするナ!オレ様ガ ツイテイルぞ!!ピー!』
ピーちゃんが、ケンケンの頭の上にちょこんと乗っかった。
みんなのあたたかい熱気に包まれて、ケンケンの瞳にじんわりと光が戻ってくる。
「⋯⋯みんな⋯⋯ありがとう。ごめん、僕⋯⋯少し弱気になってたみたいだ」




