報告②
「ケンケンちょっと話があるの」
放課後にケンケンに声かける。
まずは皆の前よりケンケン1人に話そう。
「まなちゃん?ちょっとまって、それって!どういうこと?!」
お菊ちゃんが一人で慌ててるんだけど
「お菊ちゃん?どうしたの?」
「僕には内緒の話?!」
えー食いつくなぁ⋯⋯
海も後でソワソワしてる。
「後で皆に話すけどケンケンに先に話したい話があるんだ」
私がそう言ってお菊ちゃんを見ると。
「そっか。わかった!海くん!桜井君!行くよ!」
そう言ってお菊ちゃんは行ってしまった。
「え⋯⋯なんか怒ってなかった〜?」
ケンケンを誘ったはいいけど、どう話そうか⋯⋯
いつもの中庭でぼんやり考える
心地よい風が撫でる。
ケンケンの風は気持ちがいい⋯⋯
「なにかあったの?」
ケンケンは私を見る
「うん⋯⋯さっき、世界史の時間にね⋯⋯」
「あぁ。ウトウト寝ていた時かな?いつも世界史はウトウトしてるよね?」
えー
見てた?
しかもいつもバレてた?
「えへへへ。眠くなるんだよねぇ。世界史って〜」
私は笑ってごまかす。
「確かにね」
「ケンケンも眠くなったりするの?!」
びっくり!
「そりゃなるよ。あの先生の話し方は眠気を誘う」
へー皆同じじゃん。
私は世界史の先生を思い出して笑ってしまった。
「で。話って何?」
ケンケンは私をじっと見る。
「うん⋯⋯その世界史の時に⋯⋯よしろうさんとちょっと会ってたんだ。アスカくんたちの組織の話が少し分かったって」
「え? 本当に?」
ケンケンはびっくりしたように私を見た。
⋯⋯ううん、びっくりしただけじゃない。どこか拍子抜けしたような、苦笑いみたいな顔をしている。
「⋯⋯そっか。アスカくんたちの組織の話か」
ケンケンは小さく息を吐いて、自分の前髪をかき上げた。
「『ふたりきりで話したい』なんて言うからさ⋯⋯勝手に、ちょっと別のこと期待しちゃったよ」
「え⋯⋯? 別のこと?」
首をかしげる私を見て、ケンケンはちょっと困ったように眉を下げ、ほんのり耳を赤くした。
「⋯⋯なんでもない。ごめん、忘れて」
?変なケンケン⋯⋯
「あのね⋯⋯ケンケン」
私はゴクリと唾を飲み込んで、ケンケンの目を見つめた。
少し照れていたケンケンの表情が、私の真剣さに気づいてスーッと真顔に戻っていく。
「本当に、ケンケンにとって、すごく大事な話なの」
「⋯⋯何?」
「よしろうさんが調べた、その組織のボスのことなんだけどね⋯⋯」
私はギュッと自分のスカートを握りしめた。
言うのが怖い。ケンケンを傷つけるかもしれない。でも、誤魔化しちゃいけない。
「ボスの名前は『堂本新一』っていうらしいの」
「え?」
ケンケンの時が止まった。
さっきまでの和やかな雰囲気が嘘みたいに、中庭の空気が凍りつく。
「⋯⋯もう一度言って?」
「うん⋯⋯。『堂本新一さん』」
ケンケンの瞳が大きく揺れていた。
いつも冷静で頼りになるケンケンが、見たこともないくらい狼狽えて、言葉を失っている。
「そんな⋯⋯僕の兄さんの名前と同じだよ⋯⋯」
青ざめていくケンケンの手元を見ると、指先がかすかに震えていた。
私は思わず手を伸ばして、その震えるケンケンの手を両手でギュッと包み込んだ。
「ケンケン!」
「まなみ⋯⋯」
「突然こんなこと言ってごめん⋯⋯」
やっぱり話さなきゃよかったのかな⋯⋯
でも知らないでいるのももっと辛い。
「僕の兄さんは⋯⋯僕が7歳の頃行方不明になったんだ。」
ケンケンは小さな声で話始めた。
「兄さんは、僕より9つ年上で。一族の次期当主として能力も人柄も完璧な人だったよ。僕も小さいながら兄さんを尊敬していた⋯⋯」
ケンケンは遠くをみる目をして話を続ける。
「僕が7歳の誕生日の日だよ⋯⋯突然兄さんが姿を消した。」
ケンケンはそこで一度言葉を切り、ぎゅっと唇をかみしめた。
私に包まれた自分の手を、愛おしそうに、でもすがるように握り返してくる。
「必死で探したけれど、手がかり一つ見つからなくて⋯⋯。急にいなくなった兄さんの穴を埋めるために、僕は幼い頃から必死で努力してきたんだ」
「ケンケン⋯⋯」
「どこかで元気に生きていてくれればそれだけでいい、そう思ってた。⋯⋯なのに、まさか敵の組織のボスだなんて⋯⋯」
ケンケンの声が震えている。
いつも落ち着いていて、私やみんなを守ってくれるケンケンが、こんなに弱々しい顔を見せるのは初めてだった。
「ごめんね⋯⋯私、ケンケンを傷つけたくなくて⋯⋯言うかすごく迷ったの。でも、ケンケンに隠しておくこともケンケンを傷つけちゃうから⋯⋯」
「ありがとう、まなみ」
ケンケンは深く息を吐き出すと、少しだけ瞳に強い光を取り戻して私を見た。
「話してくれて嬉しかったよ。もし僕が知らないままだったら、取り返しのつかないことになっていたかもしれない⋯⋯」
ケンケンの微笑みに、胸が温かくなると同時に少し切なくなる。
ケンケンは私の手を取ると立ち上がる。
「よしろうさんに、もっと詳しく話を聞きに行こう。本当にその『堂本新一』が僕の兄さんなのか⋯⋯もしそうなら、どうして兄さんがそんな組織にいるのか。僕の目で確かめなきゃいけない」
「うん! 一緒に行こう。皆も呼んで話をしてもいい?」
私はケンケンを見つめる。
ケンケンはフワッと微笑む。
「もちろんだよ」
私はよしろうさんのところへ!
そう願う。
すると⋯⋯
眩しい光に包まれて⋯⋯
目の前に扉⋯⋯
扉は私を待っているように簡単に開き⋯⋯
『まなみ様!おかえりなさいませ』
夢の洋館にいた。
と⋯⋯
「わ!!!ここどこ?!」
隣でお菊ちゃんの声
ラフな格好のお菊ちゃんがいた⋯⋯
「おおお?!」
海がパンを口にくわえてキョロキョロしている。
肩にはちゃんとピーちゃんが乗っている。
「えーぼくトイレ行くとこだったよお〜」
桜井くんがキョトンとして辺りを見回している。
あれ?
あーみんなを強制的に連れてきちゃったのかな?
えへへ




