女の勘と髪の毛
今日の1限目は古典なんだけど。
今、
竹取物語をやっていて。
桜井くん!が音読にあたったの
「今となっては……
逃れられぬ甘美な密約。
儚い記憶の彼方へと去りゆく、あの熱い夜⋯
思い出すたび、
抑えきれない愛おしい衝動が、身体の底から込み上げてくる……。
そう……あの日、
密やかに芽吹く、小さくも愛おしい
深く青々と繁る……みずみずしき、緑の世界⋯⋯
『あぁ。こんなところに愛おしい⋯』
それを⋯」
!!!!!
なんかドラマチックになってる。
なんか恥ずかしくなってきた⋯⋯
さ、桜井くん。
今日も絶好調。
「み、緑の世界ってなによ。よーちゃん、緑の世界だって」
後ろの席のよーちゃんに振り返って、私はもう我慢できなくて。
「翁が竹を取り行くだけの場面なのに。『今は昔』だけでここまで広げるなんて、桜井くんは本当にすごいねぇ。」
よーちゃんは感心してる。
海なんか、机に伏せって肩震わせてるよ!
「桜井〜先生なんか変な小説読み聞かせられてる気分になっちゃったぞ⋯⋯」
「え〜先生そんな、褒めていただいちゃって⋯⋯」
桜井くん。褒めてない褒めてない!
でも、桜井くんのそういう肯定的な考えいいよね!!
「あれ?まなみ。ピアス変えた?」
桜井くんのドラマチック竹取物語なのに
それどころじゃない感じなのに、後ろの席のよーちゃんが私に言った。
「ん?あぁ。うん。そうなんだ!」
「へー光に当たって綺麗だね。」
よーちゃんはそう言って小さくつぶやく。
「ねぇ?誰にもらったの?もしかして⋯⋯」
えっと。
私は夢の中でおじさんにもらったって言おうとしたんだけど⋯
口に出したらダメかー。
「マ、ママにもらったの。でも一個しかなかったから。一個だけね。」
「ふーん。そうなんだね。しかし、桜井くんは相変わらず面白いこと言うよね。」
「ホントだよねぇ」
よーちゃんにはあとで説明しなきゃだよね⋯⋯。
休み時間
「やだぁっ!嫌な予感!!」
お菊ちゃんが大きな声を出した。
「!!でた!お菊の『女の勘!』」
クラスメートがザワザワっとなる。
お菊ちゃんは、サラサラの髪の毛、華奢な体。
見た目儚い女の子のように見えるんだけど。
男の子。
菊池っていうからお菊って呼ばれていて。
「お菊ちゃんどうしたの?」
「あぁ。まなっ!今日はお昼のA定食。品切れの予感しかしない。」
⋯⋯
お菊ちゃんの能力は、『女の勘』
誰が言ったか、太古の昔から⋯⋯女の勘はよく当たるという⋯⋯。
お菊ちゃんの女の勘はほんとによく当たる。
じゃぁ、今日はA定食は食べられないね。
「ええええ〜っ」
すると後ろから大きな声!!
はっ!!!
「だれか!ハサミ!ハサミ!たっつんの髪!」
ゆうちゃんが大きな声で叫ぶ。
私はハサミを持って、たっつんのもとへ。
立川くん⋯⋯たっつんは、驚くと髪の毛が伸びちゃうの。
驚きが大きいとものすごく伸びるのね。
私はハサミを持って、たっつんに駆け寄ると。
伸びた髪の毛をゆうちゃんと分担してジョキジョキ切る。でもどんどん伸びてくるからきりがないよ。
でもね!でもね!
不思議なの!切り落とすとその髪の毛は消えちゃうの。
なんかエコだわぁ。
すごい。どうなってるのって毎回思う。
でも切っても切っても伸びてくるから⋯⋯。
「たっつん!気にするな?!B定食もあるしさ!ほら、ナゲット食えよ!」
海が、高橋くんからナゲットをもらうと、たっつんの口に詰め込む
「美味しい〜チキンナゲット好き」
たっつんはやっと落ち着くと。
髪の毛は伸びるのを止めた。
「ふうっ。一苦労ね。たっつん、A定食が相当食べたかったのね。チキンナゲットに救われたわ。」
ゆうちゃんは髪の毛を最後綺麗に切り揃えてあげて、いつものながさに戻してあげてる。
そういうのは、ほんとゆうちゃん得意なの。
「A定食食べたかったの?」
私は慰めるようにたっつんに聞くと。
「うん。だって、サバだったから。それに、お菊ちゃんの勘はあたるし⋯⋯」
「そっかぁ。でも次は食べれるからね。」




