皆で息抜きを⋯⋯②
「まずはあの絶叫ジェットコースターからだろ! まなみ、俺の隣こいよ」
海が当然のように私を誘おうと手を出す。
お菊ちゃんがサッと間に割り込んできた。
「ダメ! まなちゃんと隣に乗るのは僕だよ!」
「あ? なんでお菊なんだよ」
ふたりがギャーギャーと私を取り合い始めると、横からケンケンが呆れたようにため息をつく。
「はいはい、喧嘩しない。まなみが困ってるだろ。僕とまなみが一緒に乗るから、君たちはふたりで乗りなさい」
「「ええーっ!?」」
と声を揃える海とお菊ちゃん。
その横で、桜井君が
「海くん。ボク隣いいかな〜?」
「お!桜井か! おう、乗ろうぜ!」
海は無邪気に桜井君の肩を組んだ。
「たのしみだな!」
「う、うん、よろしくね」
桜井君はニッコリ笑って海を見る。
VIPレーンのおかげで、あっという間に最前列へ。
「まなみ、行こう」
ケンケンに優しく手を取られて席に座る。
ガタガタとコースターが上昇し、一番高いところへ。
「わ、すごい高い!ちょっと怖いね⋯⋯」
思わず身をすくめると、ケンケンがそっと私の手を包み込んでくれた。
「大丈夫。僕がずっと手を握ってるから」
猛スピードで急降下する!
はやい!!
「きゃぁぁぁあ!!」
すごいー!!!
「おおぉー!頭もげそうだー!」
よくわかんないことを海が叫んでいるのが聞こえる⋯⋯
「すごーい!たのしぃー!」
お菊ちゃんは楽しそう。
すごいスピードで、びっくりしたけど。
楽しい〜
アトラクションを降りたあと、ピーちゃんの願いを叶えにフードエリアへ
「まなちゃん〜 チュロス! 一口どうぞ〜!」
お菊ちゃんが楽しそうにチュロスを私の口元に差し出してくる。
私はパクっと一口
んんんっ!!
「美味しい!!」
甘くてサクサク!!中からチョコが染み出てくる!
美味しいチュロス!!
「まなちゃん〜口元っ。ちょっと甘いのがついてる」
目の前のお菊ちゃんが不意に顔を近づけてきた。
指先で私の口元をそっと優しく拭うと、満足そうに微笑む。
「あ、ありがとう、お菊ちゃん⋯⋯」
時々ほんとにドキッとすることをさらっとやるお菊ちゃん⋯⋯
「まなちゃんかわいい」
お菊ちゃんはフッと笑って私を見た。
『ピー!呼バレ!飛び出て!ドーーーン!!ピーー!!』
!!!
いきなり目の前にピーちゃん
「ピ!ピーちゃんびっくり!」
『ピー!テメーお菊!時々抜け駆けヤメロ!ピー』
ピーちゃんはわけのわからないことを騒ぐと、私の前に座り
『ピー!おい!ケンケン!ピー!』
「はいはい⋯⋯」
ケンケンが横からチキンナゲットとポップコーンをテーブルに置いた。
⋯⋯ピーちゃん⋯⋯
ケンケンを使ったのね⋯⋯
ピーちゃんは美味しそうにチキンナゲットとポップコーンを食べ始める。
本当にチキン食べてる⋯⋯
「あれ?海は?」
キョロキョロ見回すと
『ピー!海と桜井ハ、クレープ並ンデル!ピー』
『ピー!オレ様モ クレープ 食イタい!!ピー!』
チキンナゲットを咥えたままピーちゃんが叫んでいる。
まだたべるの?!
体小さいのにどこにはいるのよぉ⋯⋯
海と桜井君が戻ってきた。
「おーい! まなみ! 野菜のクレープ買ってきたぞ!」
海が満面の笑みで走ってくる。
「ちょっと海くん、走ったら崩れちゃうよ」
後ろから苦笑いしながらついてくる桜井君。その手には、海とお揃いの限定クレープが握られていた。
「ほらまなみ! お前のな!」
海が楽しそうにクレープを差し出してくる。
わ!美味しそう!
海は私の大好きな野菜のクレープを手渡してくる。
「ありがとう!海!」
「おお!いつもそれだもんなっ!」
私はクレープは甘いのも好きだけど、野菜のが一番好き!
朝早かったから朝ごはんも食べてなかったことを思い出した。
すごーく美味しそうなクレープを一口食べる。
んんん!おいしい!
「相変わらず、うまそうに食うなぁ〜!」
目の前で海が笑った。
『ピー!おい海!オレノ クレープ ハ ドコダ!!ピー!』
騒ぎながらピーちゃんが海の肩に飛び乗って頭を突っつき始める。
「痛っ! 待てピーちゃん! お前まだ食うの?!」
『ピー当たり前ダァ!それよこせー!ピー!』
賑やかな笑い声が広がるフードエリア。
ダイさんたちの不穏な影なんて一瞬忘れてしまいそうな、キラキラした時間。
こんな時間がずっと続けばいいのに⋯⋯
「じゃークレープ買いに行こう!ピーちゃん!」
海はピーちゃんを連れてクレープを見に駆け出す。
「ケンケン!飲み物見てこようよ。皆の分一人じゃ持てないから、手伝って〜!」
お菊ちゃんがケンケンに声かけて飲み物を見に行ってしまった。
私と桜井君がその場に残る。
「⋯⋯海くん、楽しそうだねぇ」
クレープ売り場でピーちゃんに頭を突っつかれてるのが見える。
それを見つめながら、桜井君がぽつりとつぶやいた。
「うん、本当に賑やかだよね。仲良しだよね。」
私も海たちの方を見て答えた
「ふふっ。海くんがいるとさ、どこにいても⋯⋯賑やかになるよね⋯⋯」
桜井君は優しく笑うと、手元に残った自分のクレープの包み紙を、丁寧に小さく折りたたみ始めた。
海とお揃いの、限定クレープ。
桜井君は、綺麗に畳んだその包み紙の端を指先でそっと撫でると、ごく自然な動作でポケットにしまった。
「まなみちゃん、暑くない? 日陰入る?」
「あ、大丈夫だよ!」
「そっか。あ、海くんたち戻ってきたよ」
海が
「おーい! クレープ追加で買ってきたぞー!」
と走ってくるのを見て、桜井君はいつもの穏やかな笑顔で
「おかえり〜」
と手を振った。
『ピー!クレープうまい!ピー!』
ピーちゃんはよく食べるよねぇ。
本当、どこに入っていくんだろう⋯⋯?
何度見ても不思議⋯⋯
「食い過ぎだろお前! お腹壊しても知らねーぞ!はち切れるぞ」
海が呆れつつも、嬉しそうにピーちゃんの頭を撫でている。
「お待たせ! ジュースだよ〜」
ちょうどそこへ、飲み物を両手に抱えたお菊ちゃんとケンケンが戻ってきた。
「わあ、ありがとう! ふたりとも!」
冷たいジュースを一口飲むと、甘いクレープの後にシュワッと広がってすごく美味しい!
「よし! クレープも食ったし、次はどこ行く!? 観覧車か? それともお化け屋敷か!?」
海がワクワクした目でみんなを見回す。
楽しい時間はまだまだ続く⋯⋯




