収穫は?
コンサートは終盤に近づく⋯⋯
会場は大盛り上がりで、熱気に包まれている。
「ケンケン⋯⋯帰ろう。もうダイさんは私達に用はないと思う」
私はケンケンにそう伝える。
「分かった」
もう戻りたい。皆のとこへ。
ぐっとそう願い、扉を開けて部屋の外に出た⋯⋯
あれ?
⋯⋯
「まなみ様!おかえりなさいませ。大丈夫でしたか?」
そこは夢の洋館だった。
「え?なんで?」
私は目をパチクリしてしまった⋯⋯
「まなみ様の力も安定してきていますね。強く望めば戻れるようになってきていると思われます。この館はあなたの館ですから」
よしろうさんはそう言うと
ハリセンを手に持つ。
「はい!堂本様!悪霊たいさーん!」
バシ!!!
ひぇっ!!!
「念のためです。まなみ様は問題ないですね。⋯⋯まぁ、あの程度の下位スキルまなみ様からすれば大したものではありません!」
よしろうさんはニッコリ笑って私達を館へ招き入れた。
「まなちゃん!!!」
お菊ちゃんが飛びついてくる
「お菊ちゃん!!!大丈夫だった?!」
「うん!大丈夫!まなちゃん、無事でよかった……! ケンケンも!」
お菊ちゃんがぎゅっと抱きしめてくれたぬくもりに、心底ほっとする。
「お菊ちゃん、みんな⋯⋯ただいま。私、無意識にここに移動しちゃったみたいで⋯⋯」
「まなみ様は能力を使いこなせて来ているようです。」
よしろうさんがハリセンをポケットに仕舞いながら、私達を見る。
「海様たちも、先ほど戻られたばかりです。どうやら『収穫』があったようですよ」
と⋯⋯海たちが険しい表情で入ってきた。
「まなみ、ケンケン! 無事だったか!」
海くんは私たちの姿を見てほっと一息ついて、話し出した。
「あのライブ会場は会場全体の音響システムがとにかくすごかった。広範囲に音を流してるみたいだった。」
「やっぱり!」
ケンケンが耳栓を外しながら、低く呟く。
「VIPルームにもあの歌声が届いてた。観客たちの目が虚ろになっていて⋯⋯ピーちゃんが気づいて耳栓をくれなかったら、僕も危なかったかもしれない。音を使ったスキルだったんだ」
『ピー!オレ様ノ機転ガ なかったラ !ケンケンハ 今頃 人形ダ!ピー!』
カバンから胸を張って飛び出すピーちゃんを見て、海くんが少しだけ口元を緩めたが、すぐに真剣な顔に戻る。
「あと⋯⋯これ見ろ」
海がカードのようなものを出す。
「なぁに?これ⋯⋯」
私が聞くと、海が、話し出す。
「裏の搬入口と控室の奥に潜入した時に、盗み出してきたんだ。何のカードかは分からない⋯⋯。結構警備が厳しくて、これくらいしか持ち出せなかった⋯⋯」
お菊ちゃんが真剣な顔でカードを見て口を開く。
「何かのIDカードだと思うよ。ただ、スタッフの人がそれを持っている感じはなくて⋯⋯もしかしたら、その組織?の身分証みたいなもの?なのかもしれない。でも読めないんだよ」
すると、桜井君がカードを覗き込む。
「暗号みたいな変な字だね⋯⋯んーアスカ ヨシカワ 年齢16 スキル 風
組織ランクC
⋯⋯あ、個人情報が書いてあるね。」
わ!桜井君よめるの?さすが!さすが!暗号読む能力!!!
ってことは⋯⋯アスカくんのカードか⋯⋯
「そのカードには、どこにカードがあるのかを探知できる力がついているカードですね」
よしろうさんがカードを見てそういった。
え?!
「よしろうさん!そしたらここの場所がバレちゃうんじゃぁ?」
私が慌ててカードを見て尋ねると
「問題ございません。その力は祓いましたので。それはただのカードです。それにここは絶対に見つかりません」
「よしろうさん最強じゃんか⋯⋯」
海がつぶやいた⋯⋯
「このカードから、組織の詳細はわかったりしないのかな?」
私が聞くと
よしろうさんが
「調べてみます。少しお時間をいただけますか?まなみ様」
そう言ってカードを受け取った。
私はハッとした!
「でもまって!アスカくんのカードだよね?これ。なくなったらアスカくんが大変なことにならない?!大丈夫なの?」
私が慌ててみんなを見ると。
「カードをなくしたことで?ペナルティとかか?」
海が呟いた。
何かされるなら可哀想だよ。
アスカくんは悪い人には見えないもん。
「このカードは、他人に渡ると場所をキャッチしてしばらくすると消滅する仕掛けが施されていましたので。向こうは消滅したと思っているのでは?」
よしろうさんがそう言って微笑むと話を続けた。
「多分ですが⋯⋯海様が拾った瞬間、会場で誰に拾われたとは感知されたはずです。その後、私が祓ったので。問題ないでしょう。推測するにランクC⋯⋯ランクがついているということは、Cくらいでは下位に当たるのでは?ランクの低いものにはさほど強い何かは仕掛けてないのではと思いますよ?」
そうなんだ。
じゃーアスカくん側はカードを落として、誰かが拾ったために、消滅したってことになるわけね?
私は少しホッとした。
盗んできた訳だから⋯⋯
「まなちゃんはやさしいね。僕ならいい気味としか思わないよっ」
お菊ちゃんはツンっとしながら言った。
「では、お調べいたしますので、お時間を」
よしろうさんはそう言ってカードを受け取った。
「よろしくお願いします」
「まなみ様のお望みのままに⋯⋯」
よしろうさんはにこやかに微笑む。
「でも、まなちゃんのこの洋館は本当にすごくて⋯⋯コンサート会場の行き来ができるなんて。扉をでたらコンサート会場の前だったんだよ!帰りはよしろうさんが会場の外の待ち合わせ場所に迎えに来てくれたんだ⋯⋯」
お菊ちゃんは感心したように館を見回す。
そうなんだ。
「まなみ様のご要望でしたので。しかしながら⋯⋯まなみ様以外この館の行き来は本来できません。今回は私の力をつかいました。
まなみ様の身の危険を回避するためです。今後も何卒、まなみ様を危険から守っていただけますよう⋯⋯」
よしろうさんはそう言って、皆の顔を見回して、私に紅茶を差し出す。
「あ⋯⋯ありがとうございます」
一口含んだ温かい紅茶の香りが、張りつめていた胸をゆっくりと解きほぐしていく。
「それにしても、まなみ様の能力は本当に計り知れませんね」
よしろうさんがふふっと優しく微笑んだ。
「まなみ様の気持ちで館の扉が即座に現実と繋がり、ご自身で空間を跳躍されたのです。まさに自由自在⋯⋯この館は完全にまなみ様に応えています」
「え⋯⋯私が、自分で?」
驚いて自分の手を見つめる。
「すげーじゃん、まなみ!完全に館の主だな!」
海がにかっと笑い、私の肩をぽんと叩く。
「うん。でも、私ひとりの力じゃないよ。みんながいてくれたから。みんな、ありがとう!」
私がみんなを見渡すと、お菊ちゃんも嬉しそうに表情を緩めた。




