きらびやかな世界②
「僕がまなみを守っているからかな?」
ケンケンが口を開いた。
「へぇ」
面白そうにケンケンを見るダイさん。
「好きな人を守るのは男として当たり前だからね?」
ケンケン?
私がケンケンを見ると
ケンケンは私に小さくウインクした。
⋯⋯うまくごまかそうとしてくれてる⋯⋯?
「上位スキルが下位のさらに下位スキルの子を?いや〜おっもしろい!悲劇だね!」
ダイさんはそう言って手を叩く。
「何かその子が隠してそうにもみえないんだよね。確かに見る感じ何か感じるわけじゃないしねぇ。堂本さんからは威圧感を感じるけどね⋯⋯」
ダイさんは堂本さんを目を細めて見つめ
私を見てた。
「⋯⋯」
私は黙ってうつむく。
「まぁ、いいや。時間だ。また、会おうね。今日はさ楽しんで?オレ達のコンサート!」
ダイさんはそう言って手を振る。
そして、扉を閉めて行ってしまった。
⋯⋯
「ケンケン⋯⋯私⋯⋯」
き、気が⋯⋯
気が抜けてしまって、その場にしゃがみ込む。
「わ!まなみ!大丈夫?」
『ピー!テメー!ケンケン!!格好ツケだが!ナイスだっタゾ!ピー!』
ピーちゃんがカバンから出てきてケンケンの肩に止まる。
「うん。すごかった」
フワッと
私達を優しい風が包む⋯⋯
あ⋯⋯ケンケンの風⋯⋯
私達を守る風⋯⋯
「データはまだごまかせてるね。僕の複数スキルも、まなみのスキルも⋯⋯」
ケンケンはそう言って私の手を引いて、立たせる。
そして、椅子に座らせてくれた。
「ケンケンありがとう」
「うん。何とかごまかせたかな?」
『ピー!ナイスだ!ピー!』
「でも⋯⋯私のこと⋯⋯すごくうまく隠してあった⋯⋯」
「うん?あぁ。ごめんね。あんなことがあったから⋯まなみのスキルや出生は隠されてる。⋯⋯ごめんね?こんな隠すようなこと⋯⋯まなみの力を隠すために⋯⋯」
ケンケンはそう言って私を見る。
「え?謝らないで?むしろ感謝しかないよ?」
「うん⋯⋯下位の下位スキルなんて言われてしまって⋯⋯」
ケンケンは申し訳なさそうに私を見る。
「そんな事気にしていたの?全然だよ!まったく気にしないよ?ていうか、眠りのスキルなんて!なんかいいね!うまくごまかせてる!ありがとう。」
ケンケンは私をじっと見つめる。
「ケンケンあのね?私⋯⋯自分の能力で、人を傷つけたり、苦しめたりしたくないんだ⋯⋯だから⋯⋯守ってもらってありがとう。ごめんなさい⋯⋯1人で立つことのできるくらい、力を使いこなせれば⋯⋯誰も傷つけないのに⋯⋯」
私は下を向く。
結構誰かに助けてもらわなければ今の私は自分の身を守れない⋯⋯
「まなみ?まなみを守れること⋯⋯嬉しいよ?これからも守らせて欲しい。僕がいつもそう思っていること忘れないで?」
ケンケンは私の顔を覗き込む。
いきなり近くに来た顔に私はドキドキしてしまった。
⋯⋯
『ピー!ハイ!そこまで!!ピー!』
ピーちゃんが私とケンケンの間に入るとパタパタ騒ぐ。
「わ!ピーちゃん!」
ケンケンはびっくりしてピーちゃんから離れた。
『ピーホラ、見ロ!!始マルぞ!!ピー!』
ピーちゃんが窓の外をみてパタパタする。
その言葉と同時に、会場全体を包んでいた眩しい照明が一瞬で落ち、視界が闇に包まれる。
次の瞬間、何千人ものファンが一斉に灯したペンライトの光が、VIPルームの防音ガラス越しに揺れ動いた。まるで星空をそのまま引きずり下ろしたような、圧倒的な光の海。
すごい!
地響きのような重低音が足元から伝わり、遅れてガラスをビリビリと震わせる大歓声が部屋の中にまで届いてくる。
ステージ中央に、スポットライトが集中する。
そこに立っていたのは⋯⋯ SKY――さっきまで私たちの目の前にいたダイさんだった。
その左右にアスカくんとケンゴくんが立つ。
マイクを握りしめた彼がゆっくりと手を掲げると、地鳴りのような歓声が一瞬で引き、静寂が訪れる。たった一つの仕草で何万人もの心を支配する、狂おしいほどのカリスマ性。
『みんな、会いたかったよ』
ダイさんの声がスピーカーを通して会場中に響き渡る。
歓声が爆発し、会場の熱気が最高潮に達する中で3人が歌い始めた。
美しく、どこか幻想的な歌声。
けれど、そのメロディがVIPルームの中にまで届いた瞬間、私の背筋にツンと冷たいものが走った。
「!!これ、ただの歌じゃないっ!」
私が呆然とつぶやくと
「⋯⋯これは⋯⋯」
ケンケンは会場を見下ろす。
ペンライトを振る観客たちの瞳が、どこか虚ろに輝いている。
ダイさんの歌声に乗せて、目に見えない広大な「力」が、会場全体をじわじわと侵食していくのが分かった。
『ピー!マナミ、気ヲツケロ!コイツ、歌ニ乗セテ ナニカ バラ撒イテヤガル!ピー!』
カバンの隙間から覗くピーちゃんが、羽を逆立てて小さく威嚇の声をあげる。
大歓声と光の渦の中で、ダイさんがふと、私たちのいるVIPルームの方向へ視線を向けた気がした。ガラス越しに、彼が不敵に微笑んだように見えて、私はケンケンの手を強く握り返した。
「これは⋯⋯すごい!気を抜くと持っていかれそうだ⋯⋯」
ケンケンは顔を歪めてステージを見下ろす。
「ケンケン?大丈夫?」
私がケンケンに尋ねると
「大丈夫⋯⋯まなみは何ともない?」
「うん。大丈夫。ただ、この歌はあまり聞いていたくないきがするよ⋯⋯」
「さすがだね。まなみ⋯⋯」
『ピー!大丈夫カ?ケンケン!音ダ!音ダナ。コイツの能力は音を使ッテル!この耳栓をシロ!少しはマシだ!ピー!』
ピーちゃんはケンケンに耳栓を投げつける。
ケンケンは
「ピーちゃんありがとう。」
耳栓をサッとつける。
『ピー!マナミは問題なナイナ!アンナ下位スキルのクソなんか!マナミには敵わないカラナ!ピー!』
「うん。まなみは⋯⋯最上位スキルだからね」
ケンケンはそう呟いた。




