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きらびやかな世界①

コンサート会場へ向かう私とケンケン。

途中巨大なポスターに大きく映し出されたSKYを見かける。

コンサート会場に向かう人たちはみんなニコニコして、大きなうちわを持っていたり⋯⋯ 

みんなおしゃれでキラキラしてる。

大人気なんだ⋯⋯


私は手に持ったチケットを不安そうに見つめた。

なんで⋯⋯?

なんで私を、こんな大勢の人が集まる場所に呼び出すんだろう。

私のスキルを?

でもそんなのどうやって?

それとも、何か嫌がらせをしたいだけ⋯⋯?

理由が分からなくて、胸の奥がざわついて冷たい汗が背中を伝う。

「⋯⋯まなみ、大丈夫?」

隣に立つケンケンが、周りの歓声に消されないように少し身を寄せて声をかけてくれた。

「うん。でも、なんで私なんだろうって思ったら、すごく怖くなってきちゃって」

「何を企んでるにしても、僕たちが動揺したら思うツボだ。表で僕たちがしっかり気を引いておけば、裏で海くんたちが動ける⋯⋯それにさ、僕も名指しで呼ばれてるんだから。大丈夫。1人じゃないよ?」

ケンケンの落ち着いた声に、固くなっていた肩の力が少しだけ抜ける。

「うん。行こう」

本当の狙いも分からないまま、私たちは熱狂の渦巻く会場内へと向かった——。


「まだ始まってもいないのにそんなに硬くならないで!」

ケンケンが、私の肩をポンっと叩く。

「あ⋯⋯うん」

「まなみが元気出るように、うちの取引先の美味しいクッキーを持ってきたんだけど。1つどう?」

ケンケンはそう言って可愛い包み紙を私に手渡す。

「可愛い⋯⋯」

と⋯⋯

『ピー!ケッ!格好つけケンケン!ピー』

私のカバンの中から⋯⋯

「ええっ?!ピーちゃん?!」

ピーちゃんが顔を出す。

『ピー!』

「ピーちゃん!ついてきちゃったの?!」

そう言えば⋯⋯みんなで今日のことを話してる時ピーちゃんは大人しかった!!

口も出さないし⋯⋯

「始めから付いてくる気でいたんだね?」

ケンケンが呆れたようにピーちゃんを見る。

『ピー!当タリ前だ!!オレは!案外役に立ツゼ!!ピー!』

わぁ⋯⋯

鳥じゃなければ格好いいセリフ⋯⋯

もう⋯⋯案外役に立つって⋯⋯

「ふふふふふ。ピーちゃんやだもう⋯⋯ピーちゃんってば!ふふふふふ」

ふっと力が抜けて。

ポロポロ涙がこぼれる。

『ピー!あ~!ケンケン泣カシタナ!マナミ!大丈夫ダ!オレがイル!からな!あと、そのクッキーヨコセ!ピー!』

「んふふふ。はい!」

ピーちゃんにクッキーを渡す。

なんか、緊張がほぐれちゃった。


私は息を深く吸い込んで、手に握りしめたチケットに目を落とした。

紙の端が、私の手の汗で少し湿っている。


周りを見渡すと、ペンライトやうちわを持ったファンたちが、待ちきれない様子で声を弾ませていた。これから始まる夢のような時間に、誰もが目を輝かせている。

その輝くような熱気と、ざわめき。


「うん、大丈夫。ケンケンとピーちゃんが一緒にいてくれるから!」

私が笑うと、ケンケンは少しだけホッとしたように目元を緩め、それからギュッと唇を結んだ。

「⋯⋯よし。入場口、あっちだ。僕のそばから離れないで

」

ケンケンの声に促され、私たちは巨大な入場ゲートの列に並ぶ。

前へ進むたびに、建物から漏れ出てくる重低音の振動が、足裏を通してビリビリと伝わってきて胸を圧迫した。

いよいよ私たちの番が来る。

係員の人にチケットを差し出すと、カチッと音を立てて半券が切り離された。

「ご入場です。楽しんできてくださいね!」

スタッフの眩しい笑顔とは対照的に、私たちの心は重いままだった。

切り取られたチケットを受け取ると、ケンケンがそっと私の背中に手を添えてくれた。

「行こう、まなみ」

重厚な扉が開く。

薄暗い通路の向こう側——光と熱気に満ちた、未知の空間へ、私たちは足を踏み入れた。


「⋯⋯まなみ、手、繋いで? 迷子になりそう」

ケンケンが周りの熱狂に警戒しながら、少し照れくさそうに手を差し出してくれる。

カバンの隙間からは、ピーちゃんが

『スゴイ人ダナ⋯⋯』

と珍しく圧倒されたように小さく呟いていた。

「うん、ありがとう⋯⋯」

ケンケンの手をギュッと握り返したけれど、案内のスタッフが向かったのは一般客席へ下りる階段ではなかった。

私たちは大きなガラス張りのエレベーターに乗せられ、どんどん上の階へと運ばれていく。

「こちらになります」

案内されたのは、会場全体を一望できる特別な個室——関係者用のVIPルームだった。

部屋に入ると、さっきまでの鼓膜を突くような大歓声が、防音ガラス越しにどこか遠い出来事のように静まり返った。

足元に広がるのは、何千人ものファンが熱狂する光の海と、見下ろすような位置にある巨大なメインステージ。

ペンライトの光が、まるで夜空に揺れる星の海みたいできらきらと輝いている。


ここは⋯⋯まるで、巨大な鳥籠の中⋯⋯

『ピー!マナミ!!コノ部屋!ナンカ嫌ナ感じガ スル!ピー!』

カバンの中からひょっこり顔を出したピーちゃんが、羽を少し逆立てて小声で囁く。

ケンケンが私をかばうように前に立ち、部屋の隅々や防音ガラスの向こう側を険しい目つきで見回した。

ダイさんは、私たちが逃げられないこの場所から、会場全体の狂乱と一緒に私たちを「品定め」しようとしているの⋯⋯?


と⋯⋯扉がノックされる。

ケンケンは私を後ろに隠すと扉を見つめる。

扉がゆっくりあき⋯⋯

「来てくれたんだね?」

そこにはダイさん⋯⋯あ、アスカくん!

「アスカくん⋯⋯」

知った顔を見つけて私は声を上げる。

「まなみちゃん⋯⋯来てくれたんだね」

アスカくんは私を見つめ、辛そうな顔をする。

何か私に悪いことをしたようなそんな辛そうな顔⋯⋯

「アスカくん⋯⋯」


「アスカと仲良くしてくれてありがとう。まなちゃん?かな?」

ダイさんはそう言って微笑む。

私は黙ってダイさんを見つめる。

「アスカ?向こうへ行っててくれる?」

その声を聞いたアスカくんは

「はい⋯⋯」

そうつぶやいて部屋を出ていってしまった。


アスカくん⋯⋯


「さて。単刀直入に聞くね?堂本さんは分かるんだけど、君は何者?」

ダイさんはそう言って私をじっと見つめた⋯⋯

そして話続ける

「堂本家については調べるまでもないよね。堂本さん上位スキルの中でも高ランク。治癒のスキルだよね?しかもとても強い力を持っている。⋯⋯よく今日1人でこれたね?大丈夫?また襲われちゃうよ?」

ダイさんは笑う。

ケンケンのボディガードの事を言ってる?

「⋯⋯自分で身を守れるようになったからね。警護もほどほどにしている」

ケンケンはダイさんを見つめて答えた。

「ふぅーん。前のときは簡単に誘拐されそうになったみたいだけどね?」

⋯⋯ねぇ⋯⋯

もしかして⋯⋯

ケンケンの誘拐された時って⋯⋯まさか⋯⋯

私が目を見開いてダイさんを見ると。

「ふふふそれは秘密。そんな目で見ないで?」

私の心を見透かしたように微笑んだ。

「ケンケン⋯⋯」

私がつぶやくと

「大丈夫。惑わされないように」

ケンケンは落ち着いて答えた。

「で⋯⋯君だよ君。君は何者?⋯⋯小泉まなみさん?」

ダイさんは私をじっと見つめる。

私は黙ってダイさんを見る。

「母親は水の一般スキル。父親は産まれてすぐ死別。君のスキルは『眠り』くだらないスキルだよね?調べると、よく眠れるとか、そういうことみたいなんだけど?⋯⋯下位の無能スキルだ。」

⋯⋯え?

私はチラッとケンケンを見る

ケンケンは小さく頷いた。

あの後⋯⋯私は存在を隠された。

ケンケンの家の堂本家とお菊ちゃんの家の菊池家によって⋯⋯

私の能力も生まれも全て隠されたんだ⋯⋯

「で。その無能スキルの君がなんでオレの力が効かないのかなぁ?」

ダイさんはじっと私を見つめた。


一瞬時が止まったようなそんな時間だった⋯⋯

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