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違和感

「まなちゃん顔色悪いけど大丈夫?」

あれから、お菊ちゃんに連れられて大人気ハンバーガーショップに着いた私達。

私の顔色が悪いのが気になったのかお菊ちゃんが心配そうに私の顔を覗き込む。

「⋯⋯うん。大丈夫だよ!」

私は慌てて答える。

「あれー?まなみちゃん⋯⋯服変えた?」

桜井君がふっと私を見つめて尋ねた。

え?

あぁ、あの後、家宝はしまって、もう片方のオレンジ系のワンピースに着替えた。

「うん。あっちは家宝だから⋯⋯」

「ん?」

首をかしげる桜井君

「家宝の話は聞かないであげて⋯⋯」

お菊ちゃんが桜井君にそう言った⋯⋯

「ん?ま、いいや。ほら、冷めないうちに食べよう〜!ここ大人気のハンバーガーショップだよね?雑誌でみたことしかないよー!」

桜井君はハンバーガーを見ながらニコニコ笑う。


「うっま! ていうかさー、今日のSKYマジで凄かったよな! なんかこう⋯⋯全身の血が騒ぐっていうかさ!」

海は大きな口でハンバーガーを頬張りながら、興奮気味に声を張り上げる。

楽しそうに語る海を見て、私の胸の奥がキュッと締め付けられた。

さっきまで、瞳から光を失って人形みたいに固まっていた海。

今の海はいつもの元気な海そのもの⋯⋯

でも、あの不気味な姿が、頭から離れてくれない。


「ねぇ⋯⋯海? どこがどう凄かったの⋯⋯?」

私が意を決して尋ねると、海はフライドポテトを口に咥えたまま、ぴたっと動きを止めた。

「え? どこがって⋯⋯とにかく凄かったんだよ! 俺、SKY好きになった!最高だよな!」

海はそう言って、満面の笑みを浮かべる。

でも——その笑顔の奥の瞳が、一瞬だけ、ガラス玉みたいに光を失っているように見えた。

「ものすごく盛り上がったよね! 僕もますます好きになったよ!最高だよ!」

お菊ちゃんも、同じように興奮気味に答える。

「僕の書いた歌詞の曲だよ。ほら、サビでみんなで手を挙げて! 本当、凄かった!!ほんと!最高だよねー!!」

桜井君もまったく同じトーンで、ニコニコと笑いながら答えた。

⋯⋯変だ。

どこが凄かったのか、何が良かったのか、誰も具体的なことを何ひとつ言えない。

3人の心に残されているのは、自分の思考じゃなく植え付けられたような「凄かった」「好きになった」「最高!」という言葉だけ。

まるで、あらかじめ決められた言葉を喋らされているみたい⋯⋯

ぞわっと、背中に冷たい汗が流れる。

これは何?

「SKYが好き」「ダイが好き」という感情そのものを、強烈に上書きされている感覚⋯⋯

向かいに座るケンケンと、静かに目が合った。

ケンケンの瞳にも戸惑いがあった。

一体これは⋯⋯なんなの?

あ⋯⋯

もしかして、これがあの人の能力?

⋯⋯感情を植え付ける能力?

それとも⋯⋯

私はさっきの収録を思い出す。

一瞬にしてその場にいた全員が、心を奪われていた⋯⋯

「まなみ?大丈夫か?」

海が心配そうに私の顔を覗き込む。

こうやっているといつもの海なのに⋯⋯

SKYの話をするときは、何かおかしい⋯⋯

「ちょっとトイレ行ってくるね!」

気分を少し変えようとお手洗いに向かう。

店の中は沢山の人。

賑やかにハンバーガーを食べている。

お手洗いの手前に⋯⋯

!!

「あ、あなたは⋯⋯」

「こんばんは。えっと、アスカの同級生さんだよね?名前聞いてなかったな?」

ダイさんだ⋯⋯

優しい微笑み⋯⋯

ダイさんはゆっくり私の元へ近づいてきた。

「な、なんでこんなところに?大人気アイドルがこんなとこにいたら大騒ぎされますよ?」

「心配してくれてありがとう。大丈夫だよ」

ダイさんはそう言って微笑む。

不思議だった。

周りには沢山の人、皆の目につく所にいるはずなのに⋯⋯

誰も⋯⋯気が付かない?

「あ、あの⋯⋯」

警告音が頭の中で鳴る。

この人には近づいてはいけない!

「⋯⋯君はさ、なんで、オレのスキルがきかないのかなあ?良かったら話を聞かせて欲しい」

その瞬間手をぐっとつかまれる。

強い力⋯⋯

「や、やめてください!」

思ったより大きな声が出てしまった。

慌てて手を振りほどく!

「まなみ!」

後ろから肩をつかまれる。

「け!ケンケン!」

慌てたケンケンが後ろにいた。

「まなみ!大丈夫?君は⋯⋯SKYの⋯⋯」

ケンケンが私を後ろに隠し、ダイさんを見た。

ダイさんは目を細めてケンケンを見る。

「あぁ堂本の⋯⋯」

「ケンケンを知っているの?」

私がつぶやくと

「知らない人なんかいないでしょ?上位の一族を」

ダイさんがにこやかに微笑んだ。

「まなみに何か用ですか?」

ケンケンがダイさんに尋ねる。

「あのさ、これ、チケットなんだ。明日の土曜日のコンサート。関係者席のいい席を用意したから2人でおいで?とってもいい席だよ?

あ⋯⋯来なかったら、お友達⋯⋯心配だね⋯⋯」

ダイさんはにこやかに微笑む。

え?どういう⋯⋯こと?

ダイさんはケンケンにチケットを渡すと、軽く手を挙げて立ち去ってしまった。

⋯⋯

私は呆然と立ち尽くす。

「ケンケン!今、お友達が心配って?!」

「うん⋯⋯」

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