華やかな世界へ
「えっ!」
放課後にお菊ちゃんの車が迎えにきて⋯⋯
大きな車。
中に入ると広い⋯⋯
で、
お菊ちゃんがみんなの着替えあるから!って言うの!
「まなちゃんはこっち」
って、後ろの席のカーテンが付いている方に連れて行かれて、そこには2枚のワンピースが置いてあったの
「お菊ちゃんこれって?」
「今日行く着替え〜前に今度プレゼントさせて?って言ったでしょ〜それの!ピンク系とオレンジ系とあって、迷っちゃって両方プレゼント!!どっち今日着る?!」
ひぇ~お金持ちってほんとすごい!
「えーなんかすごく素敵なんだけどいいの?」
高そうだよ。
でもすごく素敵。
チェックのシャツワンピ。
でも、ウエストの所はキュッと締まってるから、すごくスタイル良く見えるワンピース。
ピンク系のチェックとオレンジ系のチェックの2種類。
「あ!そのサイズはまなちゃんサイズだから、いらないって言われちゃうと、もう着れる人いなくて、捨てるか、放置になるんだよねっ。だからもらってね?」
わぁ。そう言われちゃうと⋯⋯
嬉しい!
「お菊ちゃん!ありがとう〜!」
「どういたしまして〜そのポシェットもセットで使ってね♪じゃあ着替えて!」
お菊ちゃんはそう言ってカーテンを閉めていってしまった。
うーん両方ともかわいい!
赤系かなぁ〜
うーんと悩んでいると
「まなちゃーん早く着替えてね。カーテンの後ろでコソコソ音がするたびに海くんが反応しててうざいから〜」
え?!どういうことー?
『ピー!ヘンタイ!ヘンタイ!ピー!』
ピーちゃんが騒ぐ。
もう〜何わけわかんないこと言ってんのぉー?
わたしは慌てて着替えてみんなの元へいく。
「わ!かわいい〜やっぱ大正解♪似合う〜!赤系かわいい!!オレンジも捨てがたかったんだよね~!次はそれ着てね?!」
お菊ちゃんは大喜び。
「えへへ〜ありがとう!」
「すごく似合ってるよ」
ケンケンはニッコリ笑ってわたしを見る。
皆も素敵な格好してる!
でも
「お菊ちゃん、みんなの洋服用意したの?なんかみんなのもすごく高級そう⋯⋯」
「あはは!これ?これはね〜、うちのグループのブランドの今季の新作サンプル!試着モデルになってもらっただけだから気にしないで〜♪あとでさ、着心地の感想をレポートにしてね?」
お菊ちゃんはフフンと胸を張って、さらっと恐ろしいことを言いのけた。
サンプルって……それ、まだ世に出てない高級ブランドの服ってことなんじゃないの?!
「⋯⋯というか、サイズが全員ピッタリなのが一番怖ぇんだけど」
海が首元を気にするように少し引っ張りながら、ボソッと呟く。
「当たり前!みんなのサイズくらい、事前に完璧に調査済み〜!」
「いつの間に⋯⋯」
海は引きつった顔で後ずさりし、桜井君は
「えへへ、海くんもすごく似合ってるよ。僕の服もすごく動きやすくてかっこいいや!」
って素直に嬉しそうに鏡(車内についてる姿見!)を見ている。
「だって、こんなに身近にハイスペック男子がいるんだから⋯⋯利用しない手はないんだよねっ。モデルに頼むほうがお金かかるからさ!」
⋯⋯なるほど⋯⋯
お菊ちゃんもなかなか⋯⋯。
確かに、ケンケンはもちろんのこと、海も桜井君もみんな背は高いし、スタイルいいんだよねぇ。
ケンケンも着慣れた様子で上品に袖口を整えながら、「菊さんは、Kikuchiのブランドいくつか任されてるんだね?」
と柔らかく笑った。
「さ!これで全員、完璧な『VIPゲスト』の装い完了!」
「VIP?」
わたしが首を傾げると、お菊ちゃんは怪しげにニヤリと笑った。
「アスカくんは『観覧席のチケットあげるから観においで』って上から目線で誘ってきたんでしょ?⋯⋯ふふん、甘いわね。Kikuchiグループのコネを舐めてもらっちゃ困るんだよねぇ。」
車がすーっとスピードを落とし、大きなテレビ局の地下へと滑り込んでいく。
「さあみんな、降りて!今日は『観客』じゃなくて『スポンサーの特別ゲスト』として、楽屋裏まで堂々と行くよ♪」
車のリヤドアが静かに開き、目の前には一般の人が絶対に入れない関係者専用のVIPエントランスが広がっていた——!
へぇ〜地下って、そんな風になってるんだ!
「まずさ、楽屋のぞく?」
「楽屋!?」
思わず声が高くなっちゃった。
だって楽屋って、テレビで見るあの芸能人たちが本番前に過ごす、あの特別な部屋のことでしょ!?
「ええっ、いいの!? アスカくんたち、本番前で忙しいんじゃないの⋯⋯?」
「大丈夫、大丈夫〜! 今日の番組のメインスポンサーはうちのグループなんだから、挨拶回りっていう大義名分♪僕今、仕事色々やらせてもらってるんだ!」
お菊ちゃんはウインクしながら、車から軽やかに降り立った。
エントランスの奥からは、ビシッとスーツを着たテレビ局の幹部っぽいおじさんたちが何人も駆け寄ってきて、お菊ちゃんに深々と頭を下げている。
「菊池様、本日はご来訪ありがとうございます! 特別控え室へご案内いたします」
「ありがと〜。あ、その前に楽屋に挨拶に行きたいんだけど、案内してもらっていい?」
「かしこまりました! すぐに楽屋へご案内いたします!」
⋯⋯すごい。お菊ちゃんの一言で、テレビ局の大人が全員シャキシャキ動いてる。
「おい、まなみ⋯⋯なんか俺たち、ヤバいとこに来てねぇか?」
海が引きつった顔で耳元で囁いてくる。新作サンプルのジャケットをバッチリ着こなしてるから、見た目はめちゃくちゃかっこいいモデルさんみたいなのに、腰が引き引けててギャップがすごい。
「こんな重厚なドアの地下通路、初めて通るよ〜⋯⋯」
桜井君も目を丸くしながら、周りの警備員さんの数に圧倒されている。
そんな中、ケンケンだけは上品に背筋を伸ばして、
「テレビ局の裏側なんて滅多に見られないから、楽しもう!」
って余裕の笑みを浮かべていた。
ケンケンもさすが⋯




