〜Side SKY 〜あやしい動き〜
「ケンゴ!ケンゴ!」
後ろから駆け寄るアスカ
俺は黙って迎えに来た車に乗り込む。
車に乗り込んで、カーテンを閉める。
外からも運転席からも俺たちは見えない。
「アスカ⋯⋯あの女何者だ?」
俺が聞くとアスカは首を傾げて
「何者って、知らないよ⋯⋯」
「お前ずいぶん仲良さそうだったじゃねーか!」
イライラして放った俺の言葉にアスカは一瞬驚いたような目をする。
「あれは、朝の謝罪をしていたんだよ。俺が悪かったから⋯⋯」
「ふぅん」
コイツは昔からそういう素直な所は変わっていない⋯⋯
そう思いながらも嫌な言い方しか、浮かばない俺は最低だな⋯⋯
「あの女⋯⋯スキルは何だって言ってた?」
低い声でアスカに尋ねると、アスカは首を振る。
「聞けてないよ。でも、俺の『風』を珍しそうに見てたから⋯⋯下位スキルだと思うよ⋯⋯」
「はっ。お前の大したことのねぇクソみたいな一般スキルをか?」
「うん⋯⋯」
小さく頷いて黙るアスカ。
ここ⋯⋯特にこの国は、スキルの強さで優劣が決まる国。
上位スキルであれば生活は保障された国。
下位であればあるほど差別を受ける。
俺たちみたいな活動をしていればそれはそれで受け入れられるが⋯⋯
「わりぃ⋯⋯言い方悪かった」
俺が小さな声で呟くと⋯⋯
「うん⋯⋯気にしてないよ!」
アスカは頷いた。いつもの笑顔を俺に向ける。
「あの女⋯⋯」
「ねぇケンゴ、さっきまなみちゃんにスキル使ったの?」
アスカが俺を見て小さな声で尋ねる。
まなみ?あぁ⋯⋯さっきのあの女か⋯⋯
「あ?あぁ⋯⋯手応えが全くなかった⋯⋯」
俺は目を逸らして頷く
「!!え?!でも⋯⋯そんなこと⋯⋯」
アスカが目を見開いて俺を見る。
驚いた顔をした。
あの女に効かないはおかしい。
何かが邪魔をした?
いや⋯⋯かき消された感じがした⋯⋯
一体なにが?
「ケンゴさ、調子悪かったんじゃないの?あと、あの時すごく苛ついてたじゃん?」
いつもの調子を取り戻したアスカが、俺にそういった。
確かに⋯⋯
「でもまさか⋯⋯」
俺が呟くと
「ケンゴ⋯⋯今の段階でボスに報告はよしたほうがいい。ボスは⋯⋯曖昧な報告を嫌うよ?」
アスカは俺をじっと見つめる。その目は鋭く、いつもの穏やかなアスカの目ではなかった。
冷たい風のような目⋯⋯
「わかってるよ⋯⋯」
俺はそうつぶやいて車の窓のカーテンの隙間から外を見る。
「ダイちゃんにも⋯⋯まだ⋯⋯」
「あぁ、もう少し様子を見よう⋯⋯」
俺が言うとアスカはホッとしたように隣で話し出した。
「ねぇ、ケンゴ、話は変わるけど、まなみちゃん、ほんとに俺たちの事知らないんだって!」
「あ?」
んなことあんのかよ。
テレビつければどこかの局で俺たちは出てる。
知らないなんてあるのか?
あの女本当に何者なんだよ⋯⋯
「ダイちゃんにこの話したら、悲しむよねぇ〜」
いつもの調子で、アスカはケラケラ笑う。
⋯⋯
その顔を見て俺は、一息つく。
コイツのこういうとこに俺は救われてるんだよな。
その場の空気がなごむ⋯⋯
風のスキルをバカにしてるわけじゃない。
コイツのスキルは格別だ⋯⋯。
「アスカさっきは悪かった⋯⋯」
俺は背もたれを倒してそのまま目を閉じる。
「な~に。もういいよ。気にしてないからさ!」
アスカの弾けるような明るい声。
⋯⋯しかし⋯⋯
あの学園には⋯⋯ボスの欲しがる女がいるのか?
まずはあの女⋯⋯
「今日の収録はなんだっけ〜?」
アスカがあくびをしながら尋ねた。
「歌番組じゃなかったか?」
「あぁ〜さっさと済ませて、3人でハンバーガー食べ行こう♪」
アスカの声を聞きながら俺は目をつぶった。
少し体を休めて明日また考えればいい⋯⋯
⋯⋯ちっ。腹減ったな。
胸の奥の胸糞悪いイラつきを消し去るように、俺は深くシートに沈み込んだ。




