水の中での内緒話
「コサキンって何よねぇ」
帰り道。思い出し笑いの私。
桜井くんってばほんと面白い。
あの後の古典の時間も大変なことになったもんね⋯⋯。
「いきなりだもんね。桜井くんの感性には驚くよね」
よーちゃんはそう言って笑った。
「えー。あいつ、何も考えなくても読むとそうなる能力なんだって。
でもさ、ネタ帳みたいのつけてて。ちょっとわかんねーよなぁ!」
海がゲラゲラ笑いながらそう言ったんだけど。
ネタ帳つけてるの?! すごいなぁ。
「まなみ。一度家に帰って支度したらまなみの家に行くね?」
「おー。すぐ行くわ〜」
私の家の前。
2人は私に手を振ると、自分の家に向かう。
2人はね、近所なの。
海はお隣。よーちゃんは少しだけ奥へ行くんだけどね。
よーちゃんちは大きなお屋敷なのよ。お金持ちでもあるんだよね。
頭も良くてイケメンでお金持ち。みんな揃ってる。
でもね、海のうちだって、この辺では大きなお家。海パパが建てたんだよね。
海パパは建築の能力。思い描いた通りに家をあっという間に建ててしまうの。だから、建築の会社を経営しているの。
うちのママも、海パパも優秀な能力を持っているんだよね。
よーちゃんちは……。
よーちゃんちはあまり詳しく話してはくれないけど、お父さんとお母さんとは一緒に住んでいなくて。執事さんと家政婦さんと住んでるんだよね。
色々事情があるみたいなんだ。
よーちゃんが話さなければ聞かないでおこうって思っていて。きっと海も、よーちゃんのお家のことは詳しく知らないと思う。
でも家とか家族は関係ないじゃない?
私はよーちゃんと友達で、海と友達なんだから!
「ママ! 水着どこだっけ〜?」
部屋で準備をしていて、水着が見当たらない。
「出してあるわよ。着替えてきなさい」
「はーい」
かわいいピンクのワンピースの水着。
着替えをしていると、
「まなみ〜? 海くんと洋平くんが来たわよ」
二人ともはやーい。
私は水着のまんまお出迎え。
「わ。水着かよぉ、お前」
海が呆れたように私を見るけど。だって今日はプールだもん★
「まなみ。それかわいいね。」
よーちゃんはやさしいなぁ。
えへへ。
「ありがとう!さぁどうぞ」
うちの2階は半分ベランダで。
と言っても、ベランダは外ではなくてガラス張り。
そこには小さめなプールがあるの。
これはママのこだわり。
水の能力だから、お水を溜めるところを作りたいってことみたい。お風呂より大きい方がいいんだって。
プールはそれなりに広いんだよ。3人で入ってものんびり泳げる。
浮き輪使ってプカプカしてても余裕。
夏はね、結構うちでプールに2人は来てるの。
ガラス張りなので、空調も完備だしね!
天気のいい日は気持ちいいの!
もちろんUVカットね!
私はお気に入りの浮き輪でプカプカ。
よーちゃんと、海は私の隣で浮き輪を揺らしたりしながらプールサイドのママを見る。
「ごめんね二人とも。今日は来てもらってしまって。水のあるところでないと。この話はできないから。」
ママの能力だよね。
水があると、結界っていうのかな?
お風呂の時と同じ。
外部からは完全に遮断して内緒話ができる。
でもこのプールのが水が多いから。もっと力が使えるって言ってたなぁ。
「今日来てもらったのは。まなみのこと。」
「あ〜。夢の中から持ってきちゃうあれ?またなんか持ってきちゃったのか?」
海がプールで私の浮き輪につかまりながら答えた。
あはは。覚えてるよねやっぱり。
「ええ。それもあるの。でも最近、予知夢も見るみたいで。いまはくだらないものだけど。」
ママの話を聞いて、よーちゃんが口を開く。
「新しい能力が目覚めたってことになりますか?」
「いえ。それはわからないわ。まなみは夢全般を使いこなせる能力なんだと思う。夢の物を持ってこれる。予知夢を見れる。こんなことが知られたら。」
ママが声のトーンを落としてそうつぶやいた。
「⋯⋯今回の誘拐事件だって。まなみに向かう可能性があってもおかしくないってことか。」
よーちゃんがつぶやいた言葉を聞いて私はびっくり。
ええええええっ?!
そ、そうなの?
「よーちゃん。ちょっとまって? 予知夢なんかほんの一瞬だよ? 数学の授業の一瞬とか。まぁこの前の期末の前もちょっと見ちゃって。思ったよりできちゃったけど⋯テヘ」
「あーお前!ズルっこじゃん!だから苦手な世界史できたんだな?!」
海が浮き輪をぐるぐる回す。
「ちょっとぉーやめて!でもね。これが予知夢ってわかんないで見るのよ?だからほんとそうなってから!あ!夢で見た!って思うんだからね?」
「かーい?!今はその話じゃないだろ?」
よーちゃんが海にそう言うと、海はバツの悪そうによーちゃんを見た。
ママが微笑みながら私たちを見ていたんだけど。
ふっと真面目な顔をして、
「まなみのいまのところの力は、まだ夢のコントロールができてないこと。」
そう言った。
「まなみママ。それって」
「洋平くんも海くんも覚えておいて? 能力は、進化する。今の能力がそのままでいるかは、本人の気持ちと、能力を愛する気持ち」
⋯⋯
そうなんだ。
⋯⋯!
⋯⋯私真面目な話していたのにふっと、桜井くんが浮かんじゃって。
もっと進化したらどうなっちゃうの?
演劇みたくスポットライトが出てきちゃって⋯⋯
ポエムを読み出すかも⋯⋯。
『おおおぉぉぉーコサキンかぁぁぁ〜』
とかって⋯⋯
「まなみ?今くだらないこと考えてるよね?」
わ!
よーちゃんー!
ごめんなさぁい。
大正解⋯⋯。




