合わさる力
無言の時間がしばらく流れた。全員が重い空気に押し潰されそうになっていた時、口を開いたのは桜井君だった。
「でもさ、能力喰いをした人は崩れ去ったという話なんだよね?でも、洋平くん元気そうだったじゃない?だから⋯⋯違うんじゃないかなぁ?」
「うん。確かに⋯⋯元気そうに卵サンド食べてた。」
私がポソっと呟く。
「だよね!違うならそれでいいよね。うん。いくら洋くんでもそんなえげつない事しないよ⋯⋯多分⋯⋯。うん⋯⋯多分。」
お菊ちゃんもうんうんと頷きつつも、顔色が悪い。
誰もがみんなまさかと思いながらも、もしかして⋯⋯という気持ちを持っている。そんな雰囲気だった。
「で。これからどうすんだ?まずそこからだろ。」
海がそう言って皆を見る。
皆はその問いかけに頷いた。
「うん。まなちゃんを手に入れるためにこのあとあの人何してくるか分かんないよね⋯⋯。」
お菊ちゃんはそう言って私を見る。
私はよーちゃんに捕まるわけにはいかない。何をされるかわかんないよ。この世の中を裏で思いのまま操るなんて、させたらいけない。
「西家の次期当主のことはもう一度調べてみる。今はまなみを洋平君から守るのが先決だね。ここにいればそう簡単に入り込めないし。うちと大きくもめるものも向こうも避けるはずだから⋯⋯。」
ケンケンはそう言って私達を見回した。
「なら、ここでひとまず今後の作戦会議だね。学校はまなみちゃんはしばらく休んだ方がいいね。」
桜井君がそう言ったときだった。
コンコンコン
扉のノックの音。
ケンケンが扉を開けるとそこにはケンケンの家の人がいて。
「まなみ様にお客様なのですが⋯⋯。」
私を見てそう言った。
え?!私にお客様?
「誰だい?」
ケンケンが尋ねると。
「⋯⋯西園寺様と言う方です。お迎えに来たとおっしゃっておりますが。」
その瞬間ここにいた全員が息を飲んだ。
西園寺ってよーちゃんの苗字だよ!!
「え?!洋くんがってこと?!」
お菊ちゃんが目を見開く。
「落ち着いて、僕が対応するから。皆はここに。」
ケンケンはそう言って部屋を出ていった。
ど、どういうこと?!迎えに来たって何?!
「まなみちゃん落ち着こう。ね?」
いつも驚いてしまうたっつんがそう言って私の腕を優しく掴む。
「たっつん。ありがとう⋯⋯。」
海も私の隣に立って、
「大丈夫だ。みんないるから。でも、洋平のやつ、何しに来たんだよ。」
そうつぶやいた。
『ピー迎えニッテ!あのヤロードウイウツモリダ!ピー!まなみは!オレが守ル!!安心シロ!ピー!』
ピーちゃんは私の肩に止まってそう言った。
「ありがとうピーちゃん。」
「とにかくさ、憶測で考えてたら心配になるだけだよ!だから立ってないで座って!お茶でも飲もう。」
桜井君がそう言って皆に座るように促す。
そうだよね、余計なことを考えないでいよう。
しばらくたつとケンケンが戻ってきた。
「ケンケン!なんだったの?!」
お菊ちゃんがケンケンに駆け寄った。
「⋯⋯。」
ケンケンは黙って私達の前に立つと。
「東家の当主が、まなみが見つかったことを受けて、引き取りたいと西家へ連絡をよこしたそうだ。そして、西家の次期当主との婚約を承諾したと言っていた。」
え?!ど⋯⋯どういうこと?!
私は血の気が引いた。
何を言っているの?意味が分からない!
「ちょっと待ってよ!まなちゃんが?!そもそもさ、まなちゃんがその東家の人だってなんで向こうはわかるのよ!どうやって証明するのよ!」
お菊ちゃんが私を庇うようにそばに来てケンケンに言った。
「それが⋯⋯まなみの育ての親が東家に証言したんだそうだ⋯⋯。」
え?!ママが?!
「ママがなんで?!」
ママは私を守ってくれていたのに⋯⋯なんで?
ママ⋯⋯何かあったの?!
「もしかして!まなみちゃんのママも、洋平君はスキルで操っちゃっているってことなんじゃないの?!」
桜井君がハッとしたようにそう言った。
まさか⋯⋯そうなの?
ママが自分からそんなことをするはずがない。きっとよーちゃんが⋯⋯
あ⋯⋯そういえば。あの時よーちゃんが言った言葉を思い出した。
「よーちゃん!ママを見張ってるっていってた⋯⋯。だから、ママに何かしたんだよ!!ママを助けなきゃっ!!」
ママは無事なの?!
大丈夫なの?!
オロオロする私を見て、ケンケンは優しく言った。
「まなみ。落ち着いて。まなみを渡すわけにはいかないから。今はここにいないと答えて一度お引き取り願ったよ。」
ケンケンはそう言ってみんなを見回した。そしてまた口を開く。
「東家はまなみが持つ能力の者がいない時は、力を全く持てない一族だ。だけど、いつか出てくるであろう、まなみが持つ能力が生まれるのを誰もが知っていて狙っていると言っていい。それを監視しているのが西家だった。力の強い西家には逆らえなかったんだと思う。だから、まなみが見つかったことで。多分東家に圧力をかけてそう言わせたんだろう。まなみのママも利用して。西家はとても強い力のある一族だ。うちもどこまで匿えるか⋯⋯。」
ケンケンは苦しそうにそう言った。
「私⋯⋯どうしたら⋯⋯。」
『まなみ!大丈夫ダ!オレガイル!ピー』
ピーちゃんは肩の上でそう慰めてくれるけど。
このままここにいたらケンケンの家に迷惑をかけちゃうってことだよね。
ケンケンの家は中立って言ってた。巻き込んだら大変なことになるんじゃないかな⋯⋯。
だから、ここにいたら駄目なんじゃないだろうか⋯⋯。迷惑をかけちゃうよね。やっぱり私は、結局よーちゃんの所へ行かないといけないのかな⋯⋯。
『駄目だ!まなみが犠牲ニナル必要ハナイ!ピー』
まるで私の心を読んだみたいにピーちゃんが言った。
ピーちゃん⋯⋯。
「ありがとう。ピーちゃん。でもね⋯⋯。」
よーちゃんの所へまず行くしかないよね。そのあとどうするかを自分で考えないと。
私は誰にも迷惑をかけない方法を考える。
と⋯⋯
「じゃーうちで匿うからっ!」
お菊ちゃんが大きな声を出す。
ケンケンは首を振ると
「菊さんの家だって、西家がどう圧力をかけてくるかわからないんだよ?危険だ。」
うなだれるようにそうつぶやいた。
お菊ちゃんはケンケンの目の前に立つと
「ケンケンはクソみたいな立場があるから困っちゃうよね?だから、悩んでる。違う?わたし⋯⋯僕は好きな女の1人や2人守れない男にはなりたくないから!」
お菊ちゃん?
「まなちゃん、うちに行こう。うちもそれなりに広いし。大丈夫。そこでいい案を考えよう。うちはさ、ケンケンや洋ちゃんみたいな特別なスキルはないけど。特別なスキルがなんなの?特別じゃないスキルが集まったら特別になるんじゃない?それを考えない?こんなところで考えるよりいい案出るよ!行こう!」
お菊ちゃんが私の手を引く。
「確かに!いいこと言うね!僕の力も何かの役に立つかな?」
桜井君がお菊ちゃんのそばに寄る。
『ピーオレも!オレもいる!!ピー』
ピーちゃんは私の肩に乗ってそう叫ぶ。
「力になれるかわかんないけど!一緒にいくからね!」
たっつんもそう言って私のとこに。
「まなみ!バカなこと考えなくていい。みんなで何とか考えよう。」
『ピー!海!テメーはもっとデキルはずダカラナ!ピー。』
みんな⋯⋯ありがとう。
皆を危険な目に合わせちゃうのに⋯⋯。
「じゃあ。すぐここを出てうちに行こう。迎えを呼ぶから!」
お菊ちゃんがそう言って私達を見る。
「⋯⋯参ったな。みんな、僕よりずっと腹が据わってる。」
ケンケンが静かに笑って、私達を見た。
「いいよ。表立って動けないなら、僕が『堂本』を捨てて個人で乗る。まなみ、君を絶対に洋平君の思い通りにはさせない。させたらいけないんだ!」
ケンケン⋯⋯。
「なんだよっ!結局そうなるわけね!まぁ。そうなると思ったけどね。」
お菊ちゃんが肩をすくめてつぶやいた。




