西家の当主
「妙?なんかあるの?」
お菊ちゃんが食後の紅茶を飲みながらケンケンに尋ねた。
ケンケンは考え込んだような顔をして、答える。
「うん⋯⋯次期当主は、現当主の息子と決まっていて、とうの昔にお披露目もされているんだよ。現当主は高齢で体調を崩しているために、そろそろ次期当主が継ぐとは言われていて。」
⋯⋯現当主の息子。
じゃぁよーちゃんは現当主の息子ってこと?
「洋平はそんな身分だったってことか?でも待てよ?お披露目してたら、みんなにわかるもんじゃねーの?今まで隠してたのがおかしくないか?バレるだろ。」
あれ?そうだよ。
そうだよねぇ。お披露目をしていたら、隠して近づくなんかできないよね。
「ケンケンのお家なら、誰が当主とか次期当主は誰かとかわかりそう。だから知らないなんてあるの?」
私が言うと。
ケンケンは頷いて。
「そう。その通りなんだよ。でもね、次期当主は洋平くんではないんだよ。」
え?どういうこと?
「もしかして、途中で変わったのかな?」
たっつんが、そう言うと、ケンケンは首を振る。
「そういう話は今まで出ていないはずなんだ。」
えー?ならおかしいじゃない。
「もしかして、あいつ!まなみに、ハッタリでそう言ったってことか?!」
海があきれたように言った。
え?!そうなの?
でもいい加減な感じにはしなかったけどなぁ。
うーんと考え込んで話を聞いていると。
ケンケンが口を開く。
「これは、まだ公表はされていないんだけど。西家の次期当主が、先日より行方が分からなくなっているっていう話があって。
西家の次期当主は、僕も一度会ったことがあるんだけど、現当主とは考え方がちがっていて。彼が西家を継いだら何か変わるんじゃないかとも言われてる人だったんだ。でも、最近行方が分からなくなっているっていう話があったんだ。」
!!え?
ちょっと話が変になってきた⋯⋯。
「なぁ、もしかして!洋平のやつ、その次期当主?を監禁して自分が当主になろうとしてるのか?」
え?
でもちょっと待って?そしたらおかしいんじゃないかな??
「よーちゃんが、西家は、能力の高い者に絶対服従っていってたよ?そしたら、よーちゃんは、次期当主さんには逆らえないでしょ?それなのに、監禁することなんかできるの?」
私がそう言うと。
ケンケンが頷く。
「だから、妙なんだよ⋯⋯。能力至上主義ならば、洋平君が次期当主に逆らえるわけがないんだ⋯⋯。⋯⋯あっ!まさか⋯⋯でもそんなこと⋯⋯。」
ケンケンが小さくつぶやくと。止まった。
『ピー!ケンケン!そのまさかダト思ウゾ!やべーぞマジで!ピー。』
ピーちゃんは飛び上がるとケンケンの頭の上に乗った。
まさかって何?
「ピーちゃんどういうこと?」
私がピーちゃんに尋ねると
『能力喰いダ!ピー!!ノウリョクグイ!!』
そう言った。
え?!何それ。
「能力喰い?なぁにそれ。なんか気持ち悪い⋯⋯」
お菊ちゃんは腕を抱えて気持ち悪そうに首を振る。
ケンケンは青ざめた顔をしながら、静かに口を開いた。
「⋯⋯西家の古くからの裏記録にあるんだ。『他人の能力そのものを奪い、己の物にする禁術』⋯⋯通称、能力喰い。それは⋯⋯単に力だけを吸い取るんじゃない。その能力を持った人間を、存在ごと丸呑みにして喰らい尽くす術なんだよ。喰われた者は肉体も魂も消滅し、二度と戻らない⋯⋯。」
「えっ⋯⋯人間ご⋯と⋯⋯??」
私の声が震える。お菊ちゃんも顔色を失って、自分の腕を強く抱きしめた。
海も桜井君もたっつんもみんな動きを止めてケンケンを見た。
「ああ。まさに悪魔の業だ⋯⋯。おとぎ話だと思われていたけれど⋯⋯。でも、禁忌な術だ。使った者もいずれ自らの身体が崩れ去ると言われている禁術で、それ以上の記録はないんだ。」
ケンケンはそう言って黙った。
「なぁ⋯⋯もし洋平がそれを実行して、次期当主を喰らって力を奪ったとしたら⋯⋯?」
海がつぶやく。
⋯⋯そんなことあっていいの?!
私達は言葉が出なくなっていた⋯⋯。




