惑わされない気持ち
『オレ!まなみんちオトマリする!マカロンつくろ!つくろ!ピー』
放課後帰り道。ピーちゃんが私の頭の上でピーピー騒ぐ。
「え?ピーちゃんうちにお泊まり?うん。いいよ?一緒にお菓子作って食べようか!」
『ヤッター!早くかーえろっ!ピー』
ピーちゃんは大満足の顔で私のカバンの外ポケットに入る。
「おい!ピーちゃん図々しいぞお前!」
海がピーちゃんにそう言うと。ピーちゃんは知らんぷり。
『ウルセー!いいだろー!ピー』
「ふふふ。海!大丈夫だよ。今日はうちにお泊まりで。ピーちゃん一緒にお菓子作って。一緒にお風呂入ろう〜!」
『ピッ!ピピピっ!オレ!照れちゃう〜グヒヒヒ。』
ピーちゃん⋯⋯。
変な笑い方だなぁ。もう。
「本当に焼き鳥にした方がいいんじゃない?」
よーちゃんがピーちゃんの顔を覗き込んでそう言った。
『ピッ!オレ!こいつキライ!!!ピー』
ピーちゃんは私のカバンの外ポケットのなかにもぐった。
いつもと同じ会話。でも、私はよーちゃんの顔をしっかり見れない。
「まなみ?どうしたの?今日は1日元気ないよ?」
よーちゃんが優しく私に言う。
「え?うーん。やっぱ疲れたのかなぁ?今日はピーちゃんとのんびり過ごすことにするね!心配してくれてありがとう!ごめんね。
じゃぁね!」
私は2人に手を振ると家に入った。
ホッと一息つく。
「あら。まなみ?顔色悪いわよ?」
ママが台所から顔を出す。
「ママ戻ってたんだ?今日早いんだね。」
「今日は半日だったの。まなみも朝から様子が変だったから。気になって。何かあったの?」
ママが心配そうに私のそばに来る。
『ピョーーーん!ピー!ピーちゃん!まなみママ!マカロン!マカロン!作ってぇ!!ピー
まなみママはほんといつもキレイ!!オレ!惚れちゃうー!』
いきなりピーちゃんがカバンから飛び出す。
わわわわ。びっくりした。
「あらあ?ピーちゃん!かわいいわねぇ。マカロン?じゃぁ作ろうかあ?今ねぇ!クッキー焼いていたのよ〜。」
『オレ!クッキーも好き〜ピー』
ママはピーちゃんを肩に乗せると台所へ行ってしまった。
⋯⋯ピーちゃんのマカロン愛に救われたかな?
その時。私のポケットの携帯電話が鳴る。
「あれ?桜井くんだ。」
電話に出ると。
『もしも〜しー?まなみちゃん?あのさ、学校では適当に合わせたけど。皆おかしくなかった?お菊ちゃんのこと忘れちゃってたよね?!どう思う?』
⋯⋯え?!さ、桜井くん?!これってどういうこと?!覚えているの?!
私は部屋に駆け上がる。
「桜井くん!!それ誰かに話した?!」
『ん?なんか話しづらい感じだったから。黙ってたよ。もしかしたらさぁ。ほかにもいたかも。そういう人。』
!?本当に?!
「さ、桜井くん。他に違和感感じた人わからないかな?」
『んー?聞いてみようかぁ?』
「でも。怪しまれないように聞ける?」
『うん!まかせてよー。』
桜井くんとの電話を切ると。私はベッドに腰掛ける。
⋯⋯皆忘れていたわけじゃなかった。でも一体何でこんなことになったの?
考えても分からない。
夢で、お菊ちゃんは、なんて言っていたっけ⋯⋯。
「まなみー?海くんきたわよー?」
不意にママの声。
え?海?
私は部屋を出て玄関に向かう。
「海。どうしたの?」
「ん?ピーちゃんの様子見に来た。おじゃまするな!」
海はそう言って私のそばにくる。
「あ。ピーちゃんはママとマカロン作ってるよ。」
「そうなんだ!アイツ図々しいなぁ。本当に。」
海と廊下で話していると。
台所の方から、パタパタ飛び回る音がして。
『ピー!来たな!海か!この!!大バカモノ!!!お前がそんなでドウスンダ!』
バチーン!
ピーちゃんは海の顔に向かって思いっきり可愛い足で蹴りを入れて、翼をバシバシぶつける。
わわわ。何やってるの。ピーちゃん!
「ピーちゃん!落ち着いて?海っ大丈夫?」
あわてる私の横で、海はピーちゃんを手で押さえると。目を見開く。
「⋯⋯わりぃ。オレ、さっきまでなんかおかしかった。」
海?!
「海!も、もしかして!思い出したの?お菊ちゃんのこと!」
「あぁ。今日は朝からなんか変だったんだよ。大事なことを忘れている気持ちが心の奥にはあったんだけど⋯⋯。」
『マッタクお前ハ!しっかりシロ!!バカタレ!』
ピーちゃんは海の頭の上でお説教。
「悪かったよ。ピーちゃん。」
『オマエがシッカリしなきゃダメだろっ!クソが!』
キュンとする海にピーちゃんはグチグチ怒ってる。
「ピーちゃん。ありがとう。海が。戻ってよかった⋯⋯。私どうしようかと思っちゃってたよ⋯⋯。」
『まなみ!ナクナ!オレガイル!ピー』
ピーちゃんは私の肩に止まってフワフワしている羽で私を撫でる。
「ピーちゃんありがとう。」
『ピー。まかせろ!』
「あらあ?どうしたの?海くんもまなみも。そんなところで。早くいらっしゃい?海くん今日は夕飯食べていけばー?
鶏肉にしようとしたけど⋯⋯ピーちゃんいるし、豚肉にしようかしらねぇ。」
奥からママが顔を出す。
「まなみママ⋯⋯ピーちゃん共食いは良くないすよねぇ。オレ、何肉でも好き!ご飯食べてきまーす!」
海はニッコリ笑って。いつもの海に戻った。




